都庁前の食品配布に900人超、「1日1食」で耐える困窮者も…“物価高”深刻な状況続く中、年末年始「炊き出し」各地で実施
今回の年末年始も、暦通りに休める人にとっては9日間と長期にわたる。会社員たちにとっては、仕事から離れて心身を休めることができる貴重な機会となるだろう。

しかし、年末年始には多くの公的機関が閉庁(休業)する。生活保護やホームレス自立支援センター利用のための窓口となる福祉事務所なども閉庁するため、生活困窮者(こんきゅうしゃ)や路上生活者は公的な相談先を利用できない状況になる。
例年、年末年始には全国各地で民間団体が炊き出しや生活場所の提供などを行い、生活困窮者・路上生活者を支えている。そして、昨年からさらに激しくなった物価高騰は、困っている人々の生活やそれを支えるための活動にも影響を及ぼしているという。

都内では都庁前・池袋などで支援活動を実施

東京都内では認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」やNPO法人「TENOHASI」などの団体が、年末年始にも支援活動を行う。
「もやい」は、通常は週2回定期的に相談活動を実施している。火曜日(祝日のぞく)に新宿区内の事務所で11時から17時まで、土曜日には新宿都庁前で14時から14時45分まで相談を受け付けており、都庁前では食料品の配布も行っている(14時から配布、無くなり次第終了)。
また事務所に来ることが困難な人のために、火曜日の12時~18時、金曜日の11時~17時(祝日除く)には電話での相談を受け付け、金曜日の13時~16時にはチャットでの相談も受け付けている(祝日のぞく)。
年末年始も、土曜日である12月27日や1月3日には、通常通り都庁前で食料品の配布と相談会が開催される予定。
加えて、12月30日(火)には15時から20時まで相談を受け付ける。基本的には事務所で相談を受け付けるが、この日はチャットでも相談を受け付けるという。
「TENOHASI」は2003年の結成以来、月2回の炊き出し(第2・第4土曜日)、週1回の夜回り・おにぎり配りなどを通じ、路上生活者や生活困窮者への支援や生活・医療相談などを実施し続けてきた。
年末には豊島区立東池袋中央公園にて炊き出しと相談会を行う。
日付は12月27日(土)、12月29日(月)、12月31日(水)。17時から生活相談・医療相談を実施し、18時までに列に並んだ人に弁当を配布する。
また31日の21時30分から、池袋駅周辺の路上生活者を訪ね、相談、食品配布を行う「夜回り」も実施。
年始には1月3日(土)の10時30分から、東池袋中央公園で衣類や日用品、雑貨を配布し、相談も受け付ける予定だ。
都内では上記の2団体のほかにも「年末年始を生き抜くための炊き出し・相談会」(練馬区・石神井公園)などの取り組みが行われる。また、都外の全国各地でも、例年、年末年始にはNPO法人などによる炊き出しや支援活動が行われている。

炊き出しに並ぶ人の数はますます増加

米や小麦をはじめとする食料品、原油価格の高騰や円安の進行による物価の上昇基調は数年前から続いており、2025年に入ってもその流れは収まっていない。エネルギー価格や輸入食品の高止まりに加え、物流費や人件費の上昇が価格に反映され、食料品や光熱費など生活に直結する分野で家計を圧迫している。
とりわけ低所得層では、こうした価格上昇を吸収する余地が乏しく、食費や暖房費を削らざるを得ない状況が続いている。
「もやい」事務局長の加藤歩さんによると、食料配布に並ぶ人の数は2020年には100人ほどであったのが、2024年には多い日で800を超える人が並んでいる状況だった。そして2025年には、800人台が「ときどき」ではなく常態化したという。
都庁前の食品配布に900人超、「1日1食」で耐える困窮者も…...の画像はこちら >>

食糧支援のニーズは増加傾向(「もやい」提供)

「前回の土曜日(12月20日)には890人が並びました。一度、900人を超えたときもありましたが、それで高止まりになるかと思ったらさらに増えていきそうな状況です。

人数を見ても、(生活の困窮が)広がっていると思います。相談に来た人や他の団体から、低所得の方が食事を減らしたり暖房を使わないようにしている、という話を昨年よりもさらに耳にするようになりました」(加藤さん)
生活費を切り詰めても貯金が目減りしていき、家賃を滞納して住居から追い出されるケースも増えているという。
「TENOHASI」スタッフの大野力さんも「炊き出しや相談に見えた方の話をお聞きする限り、物価高騰、光熱費の値上がりによって食費を浮かせるべく炊き出しを利用される方が多くいらっしゃると考えます。昨年、今年と炊き出しの利用者が減らないことにそれが現れていると感じます」とコメント。
「年末年始、行政機関の閉庁前はもちろんの事、年間を通して生活困窮に陥ったと感じる前にまずは早めの相談をおすすめします」(大野さん)

「1日1食」で暮らすしかない困窮者に目を向けてほしい

物価高騰の影響は、困窮にまで至らない中・高所得者にも実感されている。テレビでもアナウンサーや芸能人が「刺身も高くて買うのをためらう」「ご褒美のおつまみやデザートが買えなくなった」とコメントするほどだ。
一方で、本当に困窮している低所得者にとっては、いままで1日2食を食べられていたところ1日1食にまで切り詰めなければならないほど、深刻な影響を与えている。
加藤さんは「食事を減らして栄養状態が悪くなっている人もたくさんいるが、それが(世間や政治家には)見えていない」という問題を指摘する。
「今日や明日、どうにかしてほしい人が、たくさんいます。
政府には、緊急給付金などの具体的な施策を早急に取っていただきたいです。悠長に待っていられない人がたくさんいるということを、政治家には知っていただきたいです。また、一般市民の方からも、声を上げていただきたいと思います」(加藤さん)
特に高市総理の就任後、政治に関する話題は、外交・防衛費などの国際問題、また国内にいる外国人をめぐるトピックで埋もれている。
しかし、政治家らには市井の人々が直面している実際の生活の状況を見てほしい、と加藤さんは訴えた。


編集部おすすめ