「民泊新法」施行7年で初の“違法”摘発 「ゴミ・騒音」問題に住民からの通報相次ぐ中…自治体側に“ルール厳格化”の動き
警視庁保安課は27日、東京都荒川区の条例で禁止されているにもかかわらず平日に民泊を営業したなどとして、新宿区の民泊運営会社の代表を務める中国籍の男ら2人と、法人としての同社を住宅宿泊事業法(民泊新法)違反などの疑いで書類送検した。2018年に施行された民泊新法に基づく摘発は、全国で初めて。

虚偽報告と改善命令無視

報道によれば、書類送検された運営会社は、都内で21室の民泊を運営。摘発対象となった荒川区西日暮里の施設では同区の条例で営業が土日祝日に限定されているにもかかわらず、平日を含めた49日間にわたって客を宿泊させていた疑いが持たれているという。
同社は区に対し、「土日の8日間しか宿泊させていない」とする虚偽の報告を行い、行政からの業務改善命令にも従わなかったとされる。
当該施設では騒音やゴミに関する通報が相次いでおり、立ち入り調査を免れるために「保健所職員を装った詐欺に注意」といった張り紙をドアに掲示するなどの工作も行われていたという。

増加する民泊と関連トラブル


増加を続ける民泊(出典:minpaku)

民泊に関連したトラブルが各地で顕在化する中、全国の民泊の届け出住宅件数は増加を続けている。国土交通省によると、1月30日時点で約3万8000件。宿泊需要も拡大を続け、全国における宿泊者数の合計は62万9,671人で前年比148.6%となっている。

訪日外国人がけん引する民泊の拡大トレンド

民泊の拡大トレンドをけん引しているのは訪日外国人だ。
国籍別では日本の37.9%に対し、外国籍の宿泊者は62.1%を占める。その内訳は1位が米国で、以下韓国、中国、台湾、豪州と続く。地域別では東アジアが最多で、全体の34.9%となっている。
関東近郊で1月から民泊を始めたというA氏は、賃貸の古い2階建ての美容室を数百万円かけてフルリフォーム。外国人観光客の宿泊を当て込み、昭和テイストの内装をさらに強め、和風で落ち着いた雰囲気のスペースに刷新してインバウンド客に備えた。
料金は一軒丸ごとの貸し出しで5泊約15万円。
最大7人まで宿泊できるため、多人数で借りれば周辺のホテルより割安になる。
戸建てタイプの民泊はこうしたスタイルが主流で、それゆえに仲間同士で複数人で宿泊することが多く、夜遅くまで騒ぐケースもあるという。もともとは閑静な場所だけに、A氏もそうしたトラブルには注意書きをするなど細心の注意を払っている。

背景には急増する訪日客と「ヤミ民泊」対策

今回の容疑で適用された民泊新法(住宅宿泊事業法)は訪日外国人観光客の急増を背景に、深刻な宿泊施設不足解消などを目的に制定。旅館など旧来からの宿泊施設数が減少傾向にある中で、その受け皿として注目された。
同法整備以前は旅館業法の許可を得ない「ヤミ民泊」が横行し、騒音やゴミ出しを巡る住民トラブルが社会問題化。こうした周辺の秩序を乱す無許可営業の是正も、同法の狙いだった。

民泊運営の3つの手続き

現状、民泊を行うには以下の3つ手続きがある。
(1)旅館業法の簡易宿所営業
(2)特区民泊としての営業
(3)住宅宿泊事業法による営業
上記のうち、(1)(2)は営業日数に制限がない。一方、(3)は1年間の営業日数の上限が180日と制限されている。
今回の摘発事案は(3)に該当するとみられ、上限(※荒川区は条例で約120日)があるにもかかわらず、より多くの収益を得るために虚偽の報告で営業日数を増やすなどしていたとされ、その悪質性からも警察が動いたとみられる。

違法民泊発覚の手段トップは住民などからの「通報」

22年に観光庁が行った「住宅宿泊事業の実態調査」によると、自治体が違法民泊を把握する手段として最も多いのは「住民・宿泊者等からの通報」。今回、施行から7年を経て初の民泊新法の違反事案となったが、今後は“違法民泊”に対する取り締まりはさらに厳しくなりそうだ。
今回の荒川区はもともと条例で営業日を週末のみに厳しく制限。
その他、豊島区は民泊利用は長期休暇期間のみに限定、新規開設区域の制限など、より規制を強めた改正条例を12月から施行するなど、各自治体もコミュニティの秩序乱れに対する対策を強化している。
大田区は4月から特区民泊の認定基準自体を厳格化する。近隣住民への説明会を2回以上義務付け、ゴミの回収頻度を週1回から週3回に増やす。また、緊急時の駆けつけ時間を「30分以内」から「徒歩10分以内」へ短縮し、24時間365日の苦情窓口設置を義務化する。
特区民泊への苦情が3年で4倍以上に達した大阪市は、5月末で新規の認定申請受け付け停止を決定した。
こうした自治体の厳しい姿勢は、それぞれの地域で民泊の運営及び宿泊マナーがひどく、しかも継続していることへの裏返しといえる。
上述の観光庁調査では、アンケートに回答した58の自治体のうち、77.6%が「民泊の実情に応じ、必要な場合には条例の見直しを検討すべき」と回答。ルール違反に対しては厳格に対処する姿勢を明確にしている。
たとえばマンションの一室を民泊に転用すれば、隣の部屋は一般の住民となる。その意味では、ホテル以上にルールを守ることが求められるといっていい。逆にいえば、最低限のルールも守れないようなら、“排除”されるのはやむを得ないと考えるべきかもしれない。


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