2月23日は、日本が世界に誇る名峰を称える「富士山の日」。「2(ふ)2(じ)3(さん)」の語呂合わせに由来する。
静岡県が2009年に、山梨県が2011年にそれぞれ条例で定めた。条例には、富士山について学び、その豊かな自然や文化を後世に引き継ぐという理念が込められている。
この日は、条例の趣旨に基づき、静岡県内の公立高校などが休校となる文化がある。一部の静岡県民にとっては特別な日だったが、2020年からは同日が天皇誕生日となり、現在は“全国的な祝日”として定着している。

記念日には各地でイベントも

記念日の制定は富士山がオフシーズンとなり、その余波で8割近く減少するという観光需要喚起の狙いもある。山梨県立富士山世界遺産センターや、河口湖ミューズ館など、富士山を抱く2つの県の関連施設では例年、入館料が無料になるなどのイベントが周辺各地で開催されている。
語呂合わせで2月23日が記念日となった富士山だが、2013年6月22日も富士山にとって歴史的な日。ユネスコ第37回世界遺産委員会において、「世界文化遺産」として正式に登録された日だからだ。
以降、その価値(信仰の対象と芸術の源泉)を守るため、増え続ける登山者・観光客の対策が急務となり、ルール厳格化のきっかけにもなった。特に2024年・2025年の夏シーズンからは、海外の国立公園などでも導入されている「入山予約・通行料徴収」など世界水準のルール整備が本格化。静岡県側では以下のルールが義務付けられた。
  • 入山管理金(入山料)4000円の支払い
  • 山ルールの事前学習
  • 夜間の弾丸登山抑制のための、山小屋予約がない場合の夜間入山規制
これらの規制や事前学習による意識向上の結果、直近2025年の夏山シーズン(静岡県側)では、3年ぶりに遭難死者がゼロとなった。

閉山中の登山は「違法」? 冬の富士登山の法的リスク

“日本一の山”にふさわしい世界水準の登山ルールも制定され、より崇高さを増す富士山。だが、どれだけ厳格化されてもルールを破る不届き者は後を絶たない。

1月18日に閉山中の富士山を単独で登山した中国籍の男性は、八合目付近で負傷。静岡県警の山岳遭難救助隊に救助された。
冬の富士山は足元が凍結し、天候によっては立っていられないほどの強風が吹き荒れる。バランスを崩せば、数キロ滑落しても何ら不思議はない危険な状況だ。それゆえに閉山されている。
もし閉山期間(9月11日~翌7月9日)に登山した場合、法的に問題はないのか。荒木謙人弁護士は次のように解説する。
「閉山期間中(9月11日~翌7月9日)において、五合目から山頂までの登山道は、道路法46条1項に基づき『通行止め』とされています。これを無視して登山をする行為は、厳密には同法違反として罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象となり得る行為です」

罰則や賠償額にも影響ある?

ルールを破っている時点で言語道断だが、冬の富士山で遭難した場合、その救助は過酷を極める。罰則や賠償額にもなんらかの影響は及ぶのか。
「過酷な冬期遭難では、警察・消防による救助のみならず、民間救助隊やヘリが出動する場合もあります。この場合、数百万円単位の救助費用実費が請求される可能性があります。

また、閉鎖中であることを知りながら登山を強行した事実は、山岳保険の支払いにおいて『重大な過失』とみなされ、保険金が支払われないリスクもあります」
自己責任といえばそれまでだが、万一の場合の悪影響は甚大。多くの人を巻き込み、多大な迷惑をかけることになる。
富士山憲章の本文には、「富士山は、その雄大さ、気高さにより、古くから人々に深い感銘を与え、『心のふるさと』として親しまれ、愛されてきた山」の文言がある。一歩足を踏み入れたその瞬間から、登山者は富士山を愛するすべての人の責任を背負う。
法令やルールを遵守することは、自らの命を守るだけでなく、日本のシンボルである世界遺産を守ることにも繋がる。「富士山の日」は、シーズンオフだからこそ改めて、その高い山頂に思いを馳せ、ルールに基づいた正しい楽しみ方を再確認する日にしてみてはどうだろう。


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