首相は、原資は自身が代表を務める衆院奈良県第2選挙区支部の政治資金であり、「当選したことへのねぎらい」「議員としての活動に役立ててもらうため」などと説明し、かつ、「党支部から議員個人への寄付として合法」としている。
実際のところ、高市首相の行為は合法といえるのか。どのような問題があるのか。国会議員秘書を10年間務めた経歴があり、政治資金規正法や公職選挙法など「議員法務」に詳しい三葛敦志(みかつら あつし)弁護士に話を聞いた。
違法とまではいえないが「不適切」
政治資金規正法21条の2は以下の通り「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」を定めている。「何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない」
三葛弁護士は、高市首相の「政党支部から議員側への寄付として送った」との説明が事実であれば上記規定に直ちには違反しないものの、不適切であると指摘する。
三葛弁護士:「政治資金規正法21条の2は主に個人からの寄付の禁止を意味します。したがって、政党支部からの寄付を一律に禁止する趣旨ではありません。このことからすれば、直ちには違法とは言いにくいです。
ただし、本件では熨斗(のし)紙に『高市早苗』と記載しており、受け取る側は高市首相個人からの寄附と考えるのが自然です。したがって、寄付の本来の主体である『奈良県第2選挙区支部』とズレていることになり、適切ではありません。
では『奈良県第2選挙区支部』と記載されていたらどうなのか。
いずれにしても、一般国民の目から見て適切ではないといわざるを得ません」
合法だが不適切、ということのようである。ただし、三葛弁護士は、むしろ事後の処理のほうが重要であると指摘する。
三葛弁護士:「一方、寄付を受ける受け手についても注意が必要です。政治資金規正法21条の2に反する寄付を受けることはできません(同法22条の2)。また、選挙運動の中での寄付を除き、政治家個人が受け取ることはできません。
そして、寄付を受けた場合には、その処理が、政治資金収支報告書にきちんと記載・計上されなければなりません。
本件の場合、カタログギフトで引き換えることのできる物やサービスで、政治活動に使えるものはかなり限られていると思われることから、『政治資金の透明化』という趣旨からすると、その点についての納得のいく説明ができるかが問題となり得ます。
政治資金収支報告書は例年、翌年の秋ごろに公開されます。したがって、その時にもし、今回のカタログギフトについての記載内容が不適切であれば、本件が再燃する可能性があるでしょう」
なお、政治家からの寄付の場合は、公職選挙法199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)も問題となり得るが、本件の場合は高市首相の選挙区内の寄付にはあたらないため(高市首相は近畿比例区への重複立候補をしていない)、該当しないと考えられる。
石破前首相のケースとの違い
政治資金規正法21条の2をめぐっては、石破茂前首相が2024年11月の衆院選で初当選した議員に1人あたり10万円の商品券を「お土産」として渡した件が話題になった。それと比べるとどのような違いがあるのか。
三葛弁護士:「高市首相は、石破前首相の件を当然に意識していると考えられます。
これは、一般人がお祝いとして支出する金額の範囲内と評価できることから、一つの基準として考えられます。財産上の利益の無償供与であっても、純粋に個人間の贈答であり社会的に許容される範囲内であれば、そもそも本件で問題とされる範囲には含まれないとも言えるでしょう。
そうすると、支出する側の収支報告書には計上される一方、受け取る側の収支報告書に計上されないということもあり得ます。ただし、同じカタログギフトを受け取っているにもかかわらず計上する議員と計上しない議員とがいた場合には、計上しない議員についてはなぜ計上しないのか、説明責任が課される可能性もあります」
「政党交付金から代金が支払われたか」をチェックする方法
なお、高市首相は原資に政党交付金を使っていないと説明しているが、政党交付金との関係はどうなのか。三葛弁護士は、「お金には色がついていないので、いったん口座に入ったら、その後の使い道を厳密に特定することは本来的には難しい」としつつ、以下の通り、事後的に確認する方法はあると述べる。
三葛弁護士:「政党交付金は使途が限定され報告義務の課される『ひも付き』のお金です。政党からそれぞれの支部に渡された場合、支部で何に使ったかを記載した『使途等報告書』を総務省に提出しなければなりません。
したがって、今回のカタログギフトの件も、事後的に使途等報告書を確認して、その購入代金が費目として記載されていなければ、政党交付金は原資になっていないということは言えます」
そもそもの問題は、政治家個人から議員個人への寄付ならばアウトだが、その政治家が代表者を務める政党支部から議員側政治団体への寄付であればセーフ、というそのルール自体のわかりにくさにある。
「政治とカネ」のルールを国会議員自身が法律として定めるしくみになっている以上、国会議員ら、とりわけ多数派の議員に自浄作用を求めるのは、簡単ではない。高市首相が率いる自民党会派が衆議院の議席の70%近くを独占している状況下ではなおさらである。
だからこそ、有権者である国民は、「政治とカネ」の問題をはじめ、政治家に対し厳しいチェックを働かせる必要がある。
三葛弁護士が指摘するように、仮に本件が違法とまではいえないとしても、一般国民の目からすれば、力のある政治家からその仲間に対する贈り物であることに批判が向けられてしまう。そして、政治資金収支報告書の内容次第で次の問題が発生する可能性があるという火種ができたことは否定できないだろう。

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