家庭用血圧計で世界トップシェアを持つ大手電機機器メーカー「オムロン」(本社・京都市)に勤務する60代の男性シニア社員(60~65歳の再雇用社員、単年度契約)が、会社からの「週5日勤務から週3日勤務への契約変更」の一方的な要請は収入が大幅に減り実質上の“リストラ通告”にあたるとして、要請の中止・撤回を求め会社に対して団体交渉を申し入れていることが分かった。
男性が加盟する電機・情報ユニオンは3月6日、都内で会見を開き、電機産業全体でシニア社員を中心とした人員削減が強行されていることへの危機感を語った。
(ライター・榎園哲哉)

シニア社員に「週3日勤務強要」組合が告発

オムロンはヘルスケアをはじめとする5つの事業を行い、世界130か国以上で商品・サービスを提供している。グループ全体の社員数は約2万7000人(国内約1万1000人、海外約1万6000人=2025年3月=時点)。2025年3月期決算の売上高は8017億5300万円。営業利益は540億3800万円で、営業利益率は6.7%を上げている。
その一方で、昨年、構造改革プログラムの一環として国内外で合わせて約2000人規模の人員削減を行う方針を発表。国内では勤続3年以上かつ40歳以上の正社員・シニア社員などを対象に、4~5月に希望退職を募集し、1206人が応募した。
会見に出席したオムロン名古屋事業所勤務のシニア社員・新田桂一郎氏(63)と、電機・情報ユニオン成木彦朗委員長らによれば、さらに「グループ内各社・国内事業所等でシニア社員に対し、2026年4月以降の『週5日勤務から週3日勤務への契約変更』が一方的に要請されている」という。

月収6割近くに減「生活できない」

新田氏は「週5日勤務から週3日勤務への契約変更」について、労使協議や事前説明もなく、所属部署の上司による個別面談で進められているとする。
面談を受けた社員の中には、月収が6割近くに減る週3日勤務では「生活ができない」として、退職を余儀なくされたケースもあるという。
新田氏の場合、今年2月17日、上司との個別面談で「努力したが週5日勤務は(会社の)了承を得られず、週3日になってしまった。ぜひ受け入れてほしい」と告げられた。受け入れれば月収が約26万円から約15万6000円へ大幅減の見通しで、回答を保留している状況だ。
契約変更の要請に関しては、会社からの発表や文書等はなく、対象者数や全体像は分からないという。

「利益優先で高齢者追放」指摘

オムロンに限らず、大手電機各社で50代の正社員、60代のシニア社員を中心とした人員削減が続く。昨年はパナソニックが約1万2000人、三菱電機が約4700人を削減した。

電機・情報ユニオンの成木委員長は、「大手電機各社は黒字経営で業績好調にもかかわらず、高齢者を追い出そうとしている。この流れを止めたい」と訴える。
新田氏は、「利益優先で、賃金を抑え、固定費削減を図っているのではないか」と黒字経営下の人員削減について批判した。
シニア社員を対象とした人員削減の動きは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」(2021年改正)の趣旨に反する懸念がある。同法1条は、「高年齢者等の職業安定と福祉増進」を目的に掲げる。
厚労省HP「高年齢者雇用安定法Q&A」では、「勤務日数や勤務時間を弾力的に設定することは差し支えない」としつつも、「労働時間、賃金、待遇に関して、事業主と労働組合・労働者の間で十分に話し合い、設定することが重要です」としている。

オムロン「回答を差し控える」

新田氏は、事前協議なく要請が行われていることに対する不信感を語るとともに、「ローンや教育費を抱える社員、今後のシニア社員にとって深刻な影響」と改めて懸念を示した。
成木委員長は、オムロンが2022年3月に制定した「人権方針」に触れ、「(シニア社員を)生活できないような低賃金に追い込むのは人権侵害」と非難した。同方針では、「差別等不当な取扱いを許容しない」とし、対象に国籍・信条・性別などに加え「年齢」も含めている。
シニア社員らの訴えを、オムロンはどのように受け止めるのか。筆者の問い合わせに対し、同社は「個別の回答は差し控えさせていただきます」と回答を寄せた。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。
私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


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