生活を圧迫する家賃高騰の政策的解決を政府・自治体に求め、市民団体「住まいの貧困ネットワーク」と「首都圏青年ユニオン」は3月14日、都内で「家賃高すぎ。なんとかしろ!デモ」を行った。
上限額を超える家賃の引き上げを禁止する「家賃ブレーキ制度」の導入などを求めたステートメント(声明)も同時に発表した。(ライター・榎園哲哉)

家賃高騰の抑制は「政治の責任」

超高層ビルが立ち並ぶ東京・JR新宿駅の駅前広場。主催者の呼び掛けに賛同した市民ら約150人が集まった。横断幕を掲げた3人を先頭に、新宿駅東口をスタートし、同駅を左回りに一周するように1時間ほどかけて行進した。
デモの途中、デモ主催者の一人で「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さんは、沿道の人たちへこう呼びかけた。
「手取り収入の約2割が家賃として妥当だと言われています。皆さんの手取りが20万円であれば4万円、15万円であれば3万円が妥当な家賃です。東京のどこに3万円、4万円で借りられるアパートがあるのでしょうか」
また、デモ支援者で音楽ライターの和田靜香さんも、こう続けた。
「家賃が高くても給料が上がれば払える、家賃が払えないのは自分のせいだと思っていませんか。それは違います。家賃が上がり過ぎないようにするのは政治の責任です」

家賃が可処分所得の3割を超える水準に

実際に家賃はどれほど高騰し、暮らしの負担になっているのか。
デモ実行委員長で高崎経済大学の佐藤和宏准教授(地域政策学部)が作成した資料によると、家計におけるアフォーダビリティ(住居費負担率)は、1989年の9.7%から2019年は13.1%へと、30年間右肩上がりで上昇している。
デモ実行委員会が作成・配布したステートメントによると、東京23区の単身者向け(ワンルーム等)の平均家賃額は、昨年初めて10万円を超え、10万4594円(2025年11月時点)となった。
カップル向けは17万337円、ファミリー向けは24万8032円(いずれも2025年9月時点)となり、これらの額はいずれも、可処分所得(社会保険料等を差し引いた自由に使える手取り収入)の3割を超える水準となっている。

住宅価格も高騰しており、新築マンションの東京23区の平均額は2023年に初めて1億円を超え、2025年は1億3613万円となった。これは平均年収のおよそ18倍となっている。
佐藤准教授は、住宅価格が高騰する原因として、①建築関連の材料費・労務費が上昇していることで住宅価格が高騰し、持ち家を希望する層が賃貸市場へ流入していること、②都市部への人口の集中的な流入があること、③都市圏等の新築マンションが投機の対象になっていることの3点を推測する。

「このまま住み続けられるのか不安感じる」

デモでは「住まいは人権」「家賃たかすぎぃぃぃ」と書かれたプラカードも掲げられた。
デモに参加した都内に住む30代女性のAさんは、「家賃と一緒に更新料も上がった。給料が上がらない中で固定費はどんどん上がっていく。住み続けられるのか不安もある」と語った。
同じく都内在住の30代男性Bさんは、「お付き合いしている人がいて引っ越しを考えているが、2人用の間取りの部屋だと家賃が十数万円ほどする。新しい生活が始められない」と戸惑いを話した。
佐藤准教授は、家賃の負担引き下げの方法として、公的家賃補助、公営住宅の新築・建て替えのほかに、ドイツで2015年に導入された「家賃ブレーキ制度」の導入を挙げ、「政府や自治体に住宅政策の拡充を要求するとともに、市民の皆さんにも活動の意義を呼びかけたい」と語った。
ドイツの「家賃ブレーキ制度」は、家賃高騰に抗議する市民デモが契機となって新規契約時の家賃を相場の1割超引き上げることを禁止。米・ニューヨークでは、今年1月に市長に就任したゾーラン・マムダニ氏が、家賃の値上げ凍結を公約に掲げている。

要望事項等の国交省、東京都への手交も

デモ実行委員会は日本でも政治主導により家賃高騰の問題を解決すべきとして、ステートメントで下記7項目を求めている。

  • 住宅扶助および住居確保給付金(※)の給付額引き上げによる家賃の実費保障
  • 特に家賃が急騰している東京都で独自の補助実施
  • 家賃ブレーキ制度(上限額を超える家賃引き上げの禁止)の導入
  • 住居確保給付金の給付要件の緩和
  • 公営住宅の新築・建て替えによる供給増
  • 属性を理由とした入居差別の禁止
  • 公的保証制度の創設
※ 離職や廃業、やむを得ない休業などにより経済的に困窮し、住居を失った、または失うおそれがある人に対し、家賃相当額を原則3か月間支給する給付金制度。
また佐藤准教授らは、今回のデモに併せて行ったオンライン署名で集めた約1万1000筆の署名と、オンラインアンケートの回答概要を近く、国交省住宅局、東京都住宅政策本部に手渡す予定だという。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


編集部おすすめ