生活保護を受給すると車の保有ができないと説明された」――福祉事務所を訪れながら申請に至らなかったひとり親の48.9%が、そう回答した。
3月27日、NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会(赤石千衣子理事長)が都内で会見を開き、全国のひとり親世帯1967人へのアンケートと27人へのインタビューをもとにした調査結果を公表した。

調査は2025年9月から2026年2月にかけてwebアンケートとインタビュー形式で実施したもの。会見では赤石理事長と、神奈川県立保健福祉大学の吉中季子准教授が分析結果を報告した。

「車は贅沢品ではなく、生活基盤の必需品だ」

回答者の年齢は40代が52.1%と最多で、30代が28.5%、50代が16.9%と続く。
1967人のうち、現在生活保護を利用しているのは5.6%、過去に利用した経験があるのは5.9%にとどまり、「利用しておらず、利用を考えたことすらない」が72.9%を占めた。その他は「利用を検討したが行動に至らなかった」が11.0%、「福祉事務所に出向きながら申請に至らなかった」が4.7%だった。
自動車免許の保有率は93.1%で、保有者のうち96.1%がひとり親になる前に取得していた。自分が運転できる車を持つ人は79.2%、車の名義は自分名義が89.9%を占める。
運転頻度は毎日(週7日)が69.7%にのぼり、通勤、保育園や学校の送迎、子どもの通院、部活動の送り迎え、余暇活動と、用途は生活全般に及ぶ。
移動目的別の利用率を見ると、家族の送迎87.4%、子どもの中学・高校・部活動の送迎78.9%、子どもの通院73.1%、余暇活動・娯楽71.2%、子どもの保育所・小学校・学童の送迎69.2%、自分の通院68.5%と、いずれも7割から9割近い水準だ。吉中准教授は「車は子育て世代にとって贅沢品ではなく、生活基盤の必需品だ」と指摘した。
生活保護の利用状況別に車の保有率を見ると(N=1831)、未利用かつ利用を考えたことのない人が81.3%、窓口で申請を断念した人は85.2%、利用を検討したが行動に至らなかった人が82.2%、過去に利用した人は76.2%と、いずれも7~8割前後を保つ。
ところが、現在利用中の人になると31.2%に急落。現行の生活保護制度では、受給者が車を持てるのは通勤や通院など極めて限定的な場面に限られるためだ。

加えて、車の所持が認められる場合でも、厳しい条件が課せられる場合もある。
北海道に住むある親は、1日3本しかバスが運行しない地域で生活保護を利用しているものの、車の使用が通勤のみに限定されていることから、子どもの急な発熱で病院に行くのには車を使えないと回答。
ほかにも「今すぐではないが、ゆくゆくは処分するようにと言われた」「自動車の保有がダメだと言われたため、生活保護の利用ができなかった」といった体験談が集まった。

「子育て世帯の自動車保有容認」など要望

同協議会は調査結果を踏まえ、4項目の要望を取りまとめた。(1)生活保護を利用する子育て世帯には、自動車保有を使用目的に限らず認めること、(2)親族への扶養照会は生活保護申請の抑制となっており、扶養照会をしない対応とその周知を求めること、(3)生活保護の申請を断念させるような福祉事務所の対応が散見されたとして、利用者を萎縮させる対応をしないこと、(4)そのほかひとり親世帯の生活保護利用の障壁の解消――の4点だ。
今後の動きについて、赤石理事長は厚生労働省の担当部局に報告書を提出する予定であることを明かした。また、3月19日に超党派の「子どもの貧困議員連盟」にも働きかけを進めているといい、国会での議論につなげたい考えだ。
最終的な目標は国の方針として自動車保有を認める制度改正だが、「そこに至るまでにはかなりのプロセスがある。まずは運用面での緩和を段階的に進めたい」(赤石理事長)とも述べ、段階的に制度の壁を崩していく戦略を示した。
「具体的にどこの県、と明言することはできませんが、生活保護を受給していても、比較的緩い条件で車を所持できる県があります。
今回は自治体への調査を行っていないので、どのような理屈で判断しているのか分かりませんが、そうした自治体にまずは全体を合わせつつ、最終的には国の運用が変わっていくのが望ましいのではないでしょうか」(同前)


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