日本の都市部で暮らす人なら、「そんなバカな!」と絶句するに違いない。しかし今、駅の無人化が進むなかで、備品の撤去はおろか、トイレそのものが設置されないケースが増えているという。
駅のトイレが消えていく?
JR東日本によれば、2026年2月時点で全1626駅のうち、無人駅は786駅。およそ48%にのぼる。これは同社に限った話ではない。少し古い資料になるが、2022年度の全国の無人駅の数は4776駅。総駅数(9390)に占める無人駅の割合は50.9%と半数以上にのぼる。JR東日本は、トイレの設置率について「駅ごとの状況が異なるため、統一的な比率は公表していない」としつつも、無人駅のトイレ設置については「安全性や維持管理の観点から、利用状況に応じて個別に判断している」と回答している。
先日、SNSで、ある無人駅のトイレに「トイレットペーパーがなかった」という投稿が話題になった。「ありえない」といった批判も散見されたが、私たちは「駅には必ずトイレがあり、備品がそろっていて清潔、かつ温水洗浄便座まである」状態を、いつの間にか「タダで受けられる当然の権利」と思い込んではいないだろうか。
世界を見渡せば「当たり前」ではない日本のトイレ
視点を世界に広げてみると、日本の状況はむしろ特殊だ。フランスのメトロ(地下鉄)にはトイレがない駅も多い。あったとしても、紙があるか、清潔かどうかは「運」次第。もちろん温水洗浄便座などはない。また、シャワーで洗浄する文化圏のトイレには、そもそも紙が置かれていない。
日本国内でも、筆者が先日訪れた大阪城近くの公園は「トイレットペーパーはありません」と、トイレ外に表示があった。
昨今の駅トイレ、特に新幹線や都心の主要駅の快適さは目を見張るものがある。しかし、その裏には相応の維持コストがかかっているはずだ。
駅の無人化は、利用客の減少に伴う合理化の結果ともいえる。全無人駅にトイレを維持し続けるとなれば、その経費は膨大なものになる。「経費削減のためならトイレをなくしてもよい」と言うのは乱暴だが、すべてを維持することが合理的と言い切れないのもまた、現実なのだ。
さらに、コスト以外に防犯上の問題もある。トイレは密室ゆえに犯罪の温床になりやすく、地域によってはクマなどの野生動物が雨風をしのぐために侵入するリスクさえある。
一方、利用者からすれば排泄は生理現象だ。「理屈ではなく、なくては困る」のもまた、トイレなのである。では、利用客の少ない駅のトイレをどう守っていけばいいのだろうか。
設置・維持コストを誰が負担するのか?
無人駅のトイレをめぐり、JR外房線の永田駅(千葉県大網白里市)でひと悶着(もんちゃく)あった。読売新聞オンラインなどの報道によると、2022年、JR側が利用者減少を理由にトイレの無料譲渡を市に提案、一方で、維持管理費の負担を市に求めた。ところが市側は「鉄道利用者のための施設を税金で賄うのは筋が違う」と拒否。その結果、2023年からトイレが閉鎖される事態となった。
最終的には市民から新しいトイレが寄贈され、東日本が所有していた駅前の有料駐車場の土地に設置された。土地はJR東日本が市に無償で譲渡。2024年10月から市が管理する形で再開されたが、こうした「個人の善意」に頼る解決策はあまりにも心もとない。
地域ごとに事情は異なるため、「鉄道会社がすべて負担せよ」「行政がすべて担え」と一律に決めるのは非現実的だ。無人駅の活用法について、「町おこし」の拠点にするなどの工夫も各地で行われてはいるが、高齢化や過疎化が進む地域では必ずしも解決策にはならないだろう。
最も避けるべきは、「知らないうちに話が進み、気づいたらトイレが消えていた」という事態ではないだろうか。
人口減少が加速していけば、鉄道利用者の増加は見込めない。今後は、初期段階から住民を交え、「誰が、トイレをどうやって維持していくのか」を議論する場が不可欠になる。
その際、私たちは「トイレはタダで綺麗」という常識をいちど脇に置き、たとえば、以下のような選択肢からその地域に合った形を選ぶ必要があるのではないか。
- 鉄道と行政による共同維持管理
- 住民ボランティアによる維持管理
- トイレの有料化(チップ制やキャッシュレス決済の導入)
- 駅そのものではなく、周辺の公共施設やコンビニとの連携検討
季節によって観光客が増えるような地域では、積極的にトイレの有料化を導入してもよいのではないだろうか。
もちろん、こうした自衛は必要だが、一方で障害者や高齢者にとっては限界もある。2022年、国土交通省は「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」を策定し公表している。
障害者等が無人駅を安全・円滑に利用するためにすべきことが示されているが、トイレに関しては特に明記されていない。だとしても、切り捨てるのではなく、提供側と当事者が歩み寄りつつ、安全にトイレ利用できるよう配慮願いたい。
■石川未紀
フリーライター&編集者、社会福祉士。2023年、「世界共通トイレをめざす会」を立ち上げる。著書に『私たちは動物とどう向き合えばいいのか:不都合で困難な課題を解決するために』(2025年、論創社)。

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