親族への情や信頼に縛られやすい高齢者や障害者、一時的な心の弱りなどで判断能力が減退している人が、餌食となりやすいのです。その結果、生活保護を受給せざるを得ない立場に追い込まれるケースが、現実に発生しています。
私も、行政書士の業務のなかで、そのような被害に遭い、生活保護を受給することを余儀なくされたケースを少なからず見聞きし、自分でも直面したことがあります。(行政書士・三木ひとみ)
法定相続人には手厚い権利が保障されているが…
本来、民法には「私的自治の原則」という強固な大原則があり、個人が自分の財産をどう処分しようと自由です。それは相続の場面にも妥当します。「誰にいくら遺すか」は原則として相続される人(被相続人)の自由意思に委ねられます。しかし、この大原則にも例外があります。たとえば、相続人に一定割合の額の遺産を保障する「遺留分」の制度です。これは、残された家族の生活基盤を維持させるためのものです。
残された配偶者が終生、住み慣れた住居を無償で利用できる「配偶者居住権」の仕組みも、同じ考え方に基づくものです。
これらは個人の権利であると同時に、国家による保護に安易に依存することなく、尊厳を持って自立した生活を送るための制度設計なのです。
ところが、これらをすべて台無しにしてしまうのが、言葉巧みに誘導される「相続放棄」や「遺産分割協議における権利放棄」です。
「相続放棄」の危うさと居住の喪失
相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月という、きわめて短い期間内に行う必要があり、しかも一度家庭裁判所で申述が受理されてしまえば、原則として撤回は許されません。親族の死という深い悲しみや混乱の中にあり、精神的に最も脆弱になっているタイミングは、他者の死をも我が利のためにと考える悪意ある者にとっては、権利を不当に自己へ付け替える絶好の機会となり得るのです。
実務上散見されるのは、相続手続きの複雑さを奇貨として、「面倒な手続きはすべて代わりにやってあげる」「実印と印鑑証明書を預けてくれるだけでいい」などと申し向ける手口です。
当事者は、自身が財産を一切受け取らない内容の遺産分割協議書や相続放棄申述書の重大な法的効果に気づかないまま、あっさりと実印捺印してしまうのです。
さらには、「実家を分割すると手続きがややこしくなるから、長男である自分が一括して単独相続する。お前には後で相応の現金を払う(代償分割)」といった、もっともらしい「家を守るため」の美辞麗句が並べられることも多いです。
もっと露骨に「面倒な手続きはすべてこちらで引き受けるから、実家の相続は放棄して、これからは生活保護で暮らしてはどうか」と言われたという例もあります。
しかし、口約束だけで書面にサインさせられ、不動産の名義変更が終わった途端に手のひらを返され、約束された代償金も支払われず、ついには家からも追い出されるという卑劣な搾取です。
特に、軽度の知的障害や精神障害を持つ方、あるいは認知症の初期症状がある高齢者は標的になりやすく、「親に多額の借金があるから、今すぐ放棄しないと大変なことになる」という虚偽の事実を、証拠に残らない口頭で吹き込まれ、心理的に追い詰められて同意させられてしまいやすいのです。
私も、親から引き継いだ事業を兄弟で経営していたところ、うつ病を患う弟が、気の強い兄に押されて相続放棄をしてしまったがために、その後、弟の一家が、住み慣れた家からの立ち退きと引越しを余儀なくされるという、悲痛な現場に立ち会ったことがあります。
後日、だまされたと気づいても、事後対応による権利回復は極めて困難でハードルが高いのが現実です。警察や司法に救済を求めても、家庭裁判所で受理された相続放棄は原則として撤回できません(民法919条1項)。また、詐欺や脅迫による意思表示の取り消し(民法96条)を主張しようにも、親族間の密室でのやり取りを客観的な証拠をもって立証することは至難の業です。
相続トラブルにおける最も残酷な点は、お金の問題以上に、信じていた家族の絆が粉々に壊されて、人間不信に陥ってしまうことです。
不当な財産搾取が公的負担の増大を招く
言葉巧みに相続放棄をさせられた結果、当事者を待っているのは、経済的基盤と住居の喪失であり、最終的に生活保護の受給に至る道です。親が残してくれた預貯金や不動産は、障害を持つ方や弱い立場にある方が親亡き後を生き抜くための命綱に他なりません。特に、住み慣れた家を失うダメージは甚大です。
不動産の名義が親族に移ってしまえば、法的な所有者はその親族となり、「ここは私の家だから出ていけ」と言われれば、法的な知識のない弱者は対抗できず、路頭に迷うことになります。
もしだまされることなく、適正に実家の不動産(あるいはその持分や配偶者居住権)を相続していれば、住み慣れた生活環境を失うダメージを受けることもなく、生活保護に頼らずとも、自立した生活基盤を維持できた可能性が高い人も少なくないのです。
悪知恵の働く親族による不当な財産搾取は、個人の財産的権利を侵害するだけでなく、その人が本来自立して生活できたはずの費用を公的負担に転嫁して、社会的にも損失を生む悪質な行為です。「自己責任」で済ませてよい問題ではありません。
生活保護法2条は、「無差別平等の原理」を定めており、生活困窮に至った原因(過去の事象)を問うことはありません。たとえだまされて財産を失ったとしても、今、現に困窮しているのであれば、生活保護を受けることができるのです。
このことを逆手にとり、資産を放棄させたうえで生活保護の受給を事実上強要するという、制度の悪用が見られるのです。
本来であれば親の遺産を活用して自立した生活を送れたはずの人が、他の親族にだまされ搾取されたことによって生活保護に陥ることは、個人の悲劇であると同時に、公的負担を不当に増大させる社会全体の大きな損失です。
悲劇を未然に防ぐための予防法務
このような非道な搾取に対抗するには、「家族の情」や「口約束」といったものを信じる「性善説」に依存してはなりません。本人が元気なうちに法的な防衛網を構築しておく「予防法務」が不可欠です。第一に、最も基本的かつ強力な対策は、公証役場において「公正証書遺言」を作成することです。誰に何を相続させるかを明確に記載し、遺言の内容を確実に実行する「遺言執行者」を指定しておくことで、悪意ある親族が勝手に自分たちに都合の良い遺産分割協議を主張することを物理的に防げます。
第二に、判断能力に不安がある場合における「成年後見制度」の活用です。後見人が本人の代わりに財産管理を行えば、親族による財産の横領や不当な権利放棄を未然に避けることができます。
ただし、この制度の利用には注意も必要です。家庭裁判所によって弁護士等の専門職後見人が選任された場合、本人の資産の中から後見人報酬を支払わなければならず、結果的に本人の生活資金を圧迫するリスクがあるからです。
そこで、第三の選択肢として、近年注目されているのが「家族信託(民事信託)」です。あらかじめ信頼できる相手(受託者)に財産管理を託し、その財産から得られる利益を障害のある子(受益者)に給付し続ける仕組みを構築することで、柔軟かつ安全な財産保全と生活保障が可能になります。
ずる賢い者が私腹を肥やし、支援を必要とする正直者が搾取される理不尽を許さないためには、生前から法的な防衛策を幾重にも張り巡らせておくしかありません。正しい知識は、身を守る強固な盾となります。
この記事を一人でも多くの方が読み、安全な財産承継の重要性に気づかれることを願ってやみません。
■三木ひとみ
行政書士(行政書士法人ひとみ綜合法務事務所)、社会保険労務士(ひとみ社労士事務所)。

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