セクハラ行為を認定され辞職した前町長が、きのう町議選で当選しました。町議会議員として公職に復帰する目的は?前町長の選挙戦に密着しました。
「多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くおわび申し上げます。心を奮い立たせての立候補でございます」
のどかな町に響く「お詫び」の言葉。その選挙カーに乗っていたのは…
(岐南町 小島英雄前市長)
Q.小島さん、勝算はありそうですか?
「そんなこと恐ろしくて言わん…」
岐阜県岐南町の小島英雄前町長75歳。先週、任期満了に伴う岐南町議選に、立候補しました。

小島前町長といえば…
(小島前町長 去年)
「3月5日に辞めるわ」
(記者団)
「3月5日に辞めるんですか?」
「色んなところから電話もらって心が折れた」
在任中の去年、複数の女性職員へのセクハラ行為を第三者委員会が認定し、辞職に追い込まれました。その内容は…

「頑張れよという形で頭をポンポン触った」
(小島前町長 去年)
「こんなことでセクハラになるのかな、しかし。『土日出勤したところ通りかかったので、大変だね ご苦労さまと頭をポンポンと触った』。よくできた子、頑張っている子の頭をなでた。そういう感覚なんやわ」

セクハラは「頑張れよという形で頭をポンポン触った」「熱あるんか?と言っておでこを触った」などあわせて99件に及びました。
(小島前町長 去年)
「自分の兄貴から電話がかかってきて怒られました。『何をやっているんだおまえは』とすごく怒られました」

「町をよく知った人に出馬してほしい」と要請が…
涙ながらの辞職会見から約1年半。今回町議選への出馬に踏み切った理由は…
(小島前町長)
「出るつもりは全くなかった。心が折れて隠居生活をして家も変わり、心機一転していた。現状のことを考えると、町をよく知った人に出馬してもらいたいと(言われた)。
住民や後援会などからの要請を受けて出馬を決断。町が来年4月から導入する家庭用可燃ごみなどの有料化に「待ったをかけたい」と訴えます。

(柳瀬晴貴記者)
「定数10に対して16人が立候補した岐南町議選。前町長の出馬で一気に注目の選挙戦となりました」
岐南町は町議選は無投票が続いていたため、選挙戦になるのは16年ぶり。町民の関心は様々です。
(町民)
「初めて選挙が盛り上がっているのを見て驚いている」
「岐南町なんて誰が議員になっても一緒」
“かわいい坊や”が来ても「なでずにぐっとこらえた」
実は町議として7回の当選経験を持つ小島前町長。今回は街頭演説を避け、選挙カーで町をめぐり支持を訴えます。
(小島前町長)
「街頭演説して色んなことを言われると心が痛む。今回やめたのはそういうこと」
わずか5日間の短期決戦。町民との距離感にも細心の注意を払います。
(小島前町長)
「同じ轍は踏まない。肝に銘じているが、人の心は分からないので…」
Q.選挙中もセクハラは注意している?
「もちろん意識しました。“かわいい坊や”が来て、なでてあげたかったけれどぐっとこらえた。

現職候補は…「職員が辞めてしまう心配」
一方、前町長の出馬には厳しい声も。
(現職 加藤雅浩候補)
「1人の人間が笑われている分には全然構わないが、1人の身勝手な行動で岐南町が笑われるのは絶対許さない」
現職の加藤雅浩候補は「前町長の復帰は町政の現場に再び混乱をもたらす」と痛烈に批判。
(加藤雅浩候補)
「被害に遭われた職員が(小島氏の復帰で)安心して職務に専念できる環境ではなくなる。戻ってきたことによって職員が辞めてしまう心配はしています」

16人中2位で当選「民意だと思っている」
そして迎えた投開票日の7日。前町長の事務所前には多くの報道陣が。午後11時過ぎ。
(記者)
「事務所の中から拍手が聞こえてきました」
開票の結果小島さんは908票を獲得し、16人中2位で当選を決めました。908票は投票者の10.6%にあたります。

(小島前町長)
「これは本当に民意だと思っている。今まで一生懸命やっていたので、その努力を住民の方々が認めてくれた」
「温かい応援のおかげだった」と感謝を口にし、「厳しい声はひとつだけだった」と選挙戦を振り返りました。しかし…

(小島前町長)
Q.“被害者”と同じ場所で働く可能性があるが?
「その話はコメントなし。その話はいい。
取材は打ち切りに。
一夜明け、再び町役場に姿を見せた小島前町長。当選証書が手渡され、改めて意気込みを聞きましたが…
(小島前町長)
Q.セクハラ問題で辞職し2位の結果は?
「住民の信任を受けたということなので、その話はこれ以上しないでください」
Q.もうみそぎは終わった?
「はいはい」

今の町長や地元の人の受け止めは…
のどかな町を揺るがしたセクハラ問題から1年半。その当事者が公務に戻ることに今の町長や地元の人は。
(岐南町 後藤友紀町長)
「不安に思う町民や職員に寄り添いながら、しっかりハラスメント対策を続けていきたい」

(町民)
「人は完璧じゃないから間違いもある。頑張ろうと思った気持ちは大事にしてあげた方がいい」
「当選するなんておかしい。この岐南町は狂っとるんじゃないか」
908票の「民意」に議員としてどう応えるのか。町民の視線は厳しく注がれています。

