
検査済証は、新築した建築物が建築基準法に基づく検査に適合していることを証明する書類であり、不動産投資においても重要な役割を担います。ただし、検査済証の再発行は認められておらず、古い建物ではそもそも発行されていない場合も珍しくありません。
本コラムでは、検査済証がいつ・どこでもらえるのか、ない場合のリスク、紛失した場合の対処法・最初からない場合の対処法について詳しく解説します。
■検査済証とは?
(画像:PIXTA)はじめに、検査済証の概要や目的、建築確認等に関する基本的な知識について解説します。
●検査済証の目的・サンプル
検査済証とは、建築物の新築工事が完了した際に、建築基準法などの法令に適合していることを証明するために発行される公式な書類であり、建物の建築完了後に行われる「完了検査」に合格した建物に対して交付されます。完了検査は、建築主事または指定確認検査機関が実施し、建築物が設計図通りに適切に施工され、法的な基準を満たしているかを確認するための重要な工程です。
検査済証は、その建物が法律に適合しているという公的な証明となるため、不動産の売買や融資の審査、賃貸契約などの場面で重要な役割を果たします。一般的に、検査済証には建物の所在地や建築主名、交付日、検査機関の名称などが記載されており、建物の法的な安全性や信頼性が第三者にも伝わる仕組みとなっています。
検査済証が発行されている建物は、建築後に増改築などがされていない限り、基本的には違反のない建物ということになります。不動産投資において中古物件を購入する際などには、この検査済証の有無が、融資の可否やリフォーム・増改築の際に影響を及ぼすことがあります。検査済証がない物件は違法建築のリスクがあるため、金融機関のローンが付きにくく、将来的な売却に影響を及ぼす可能性があることも考慮する必要があります。

●建築確認・中間検査・完了検査とは?
不動産を購入したり、投資対象として検討したりする際には、建物が法的にどのようなプロセスを経て建てられたのかを知っておくことが重要です。
検査手続きには「建築確認」「中間検査」「完了検査」の3種類があり、それぞれに対応する書類も異なります。

まず「建築確認」は、建築工事を着工する前に行われる手続きです。建築計画が建築基準法などの関係法令に適合しているかを確認するもので、これに合格すると「確認済証」が交付されます。
次に「中間検査」は、新築する建物が特定工程に該当する場合のみ実施されます。特定工程とは、(1)階数が3階以上である共同住宅の床および梁に鉄筋を配置する工事の工程のうち政令が定める工程、(2)上記以外で、特定行政庁がその地方の建築物の建築の動向または工事に関する状況そのほかの事情を勘案して、区域、期間または建築物の構造、用途もしくは規模を限って指定する工程のことを指します。中間検査が必要かはそれぞれの特定行政庁が決定するため、各自治体の役所で問い合わせる必要があります。
中間検査は建築工事の途中で行われる検査で、中間検査が必要と判断された場合には構造の主要部分などが設計図通りに施工されているかを確認します。この検査に合格すると「中間検査合格証」が発行されます。合格しない場合には、特定工程後の工事を続けることはできません。
そして最後に行われるのが「完了検査」です。これは、建物がすべて完成した後に実施される最終的な検査であり、建物全体が建築基準法に適合しているかどうかを確認します。この完了検査に合格した際に交付されるのが「検査済証」です。
これらの検査と証明書は、建物の安全性や信頼性を示すために非常に重要なものであり、不動産投資のリスク管理にもつながります。
■検査済証はいつから義務化された?ない理由は?
検査済証の発行や取得そのものが直接的に義務化されているわけではありません。
しかし、建築基準法によって完了検査を受けることは義務化されており、この完了検査に合格しなければ検査済証は交付されません。つまり、検査済証がないということは、適法に建物が建てられたという証明がないことになります。証明ができないと、建物の売買や賃貸の際に支障が出る可能性も高いため、現在では検査済証を取得することは事実上の義務となっています。
ただし、すべての建物に検査済証があるとは限りません。特に、建築基準法が改正された2000年以前は、完了検査の実施率が現在よりも低く、完了検査を受けずに建物が竣工してしまうケースが少なくありませんでした。そのため古い物件の中には、完了検査自体が行われておらず、結果として検査済証が存在しない物件も多くあります。

こうした背景から、中古物件を購入する際には検査済証の有無を必ず確認し、検査済証が無い場合にはその理由も確認したうえで投資判断をしましょう。
■検査済証はいつもらえる?

検査済証をはじめとするそれぞれの証明書は、以下のタイミングで交付されます。
書類検査実施時期確認済証一般的に、建築確認の申請受理から7日以内に検査実施中間検査合格証特定行政庁が指定した特定工程の工事完了日から4日以内に建築主が中間検査の申請を行い、その申し出から4日以内に建築主事が検査実施検査済証工事完了日から4日以内に申請し、申請受理から7日以内に建築主事が検査実施検査済証は、建物の工事が完了した後に、完了検査に合格することで交付されます。具体的なタイミングとしては、建築主が工事完了日から4日以内に完了検査を申請し、申請が受理されてから7日以内に建築主事や指定確認検査機関が検査を実施することになっています。
ただし、書類の不備や現場の状況によっては検査に通らず、再申請となるケースもあり、その場合は交付までの期間が延びることになります。
各検査への対応には専門的な知識が求められるため、施行会社や建築士事務所などに委任するケースが多いです。
■検査済証はどこでもらえる?
ここでは、検査済証をどこでもらえるのか、紛失時における再発行の可否、検査済証がない場合の対処法を解説します。
●建築主事または指定確認検査機関が発行する
検査済証は、建築主事または指定確認検査機関によって発行されます。建築主事とは、地方公共団体(都道府県や市町村など)に属する建築の専門家で、建築基準法に基づく審査や検査を行います。一方、指定確認検査機関は、国や都道府県から指定を受けた民間の検査機関であり、建築確認や完了検査などの業務を代行しています。
建物の工事が完了した際に、建物の所有者である建築主が申請手続きを行います。しかし、前述した通り、これらの申請手続きは専門的な知識やさまざまな書類が必要になるため、実際には建物の設計や施工を行った建築会社やハウスメーカーが建築主の代理として申請を行うのが一般的です。
不動産投資において建物を建てる場合には、この手続きを誰が担当するのか、事前に確認しておくようにしましょう。
●紛失した場合に再発行する方法
検査済証を紛失してしまった場合、検査済証は再発行することができません。これは、検査済証が発行された時点の建物の状況を証明するものであり、その後の増改築などによって状況が変化する可能性があるためです。
ただし、過去に検査済証が発行された事実を証明することは可能です。具体的には、「建築計画概要書」や「台帳記載事項証明書」といった書類を取得することで、該当の建物が完了検査を受けて検査済証を得ていたかどうかを確認することができます。
これらの書類には、その建物に対して建築確認や完了検査が行われ、検査済証が発行されたかどうかの記録が残されており、建物の所在地を管轄する役所の建築指導課などで取得できます。
不動産投資で中古物件の購入を検討する際、もし検査済証が見つからない場合は、これらの書類を取得して、過去に検査済証が発行された履歴があるかどうかを確認するようにしましょう。
●最初から検査済証がない場合の対処法
2000年以前に建てられた建物など古い建物には、はじめから検査済証を発行していない場合もあります。
このような場合に、建物の安全性や法令適合性を確認する手段として「法適合状況調査」という方法があります。この調査では、専門の検査機関が建物の図面調査や現地調査を行い、現在の建築基準法などの法令に適合しているかどうかが詳細に調査されます。調査の結果は「法適合状況調査報告書」としてまとめられ、建物が現在の法令に適合していることを示すひとつの証明となります。
ただし、この法適合状況調査報告書は検査済証の代替となるものではないという点に注意が必要です。そのため金融機関の融資や、将来的な売却・増改築の際に、検査済証が必須となる場面では、この報告書だけでは対応できない可能性もあります。
また、法適合状況調査の前段階として、まずは建築士による調査を行うことも有効な手段です。この調査により、建物の抱える潜在的な問題点を早期に把握し、その後の対応を検討するための情報を得ることが可能です。
■検査済証がない場合のリスクとは?

不動産投資において、検査済証の有無は非常に重要なポイントであり、検査済証がないことで思わぬリスクを負う可能性があります。ここでは、検査済証がない場合のリスクを3つ解説します。
●建物を使用できない
新築物件の場合、原則として、検査済証が交付されるまではその建物を使用することはできません。これは、建物が建築基準法に適合していることを公的に証明されていない状態では、安全性が保証されないためです。ただし、特定行政庁の許可があれば例外的に仮使用が認められるケースもありますが、あくまで一時的な措置であり、恒久的な使用には検査済証が必須です。
一方で中古物件の場合、検査済証がないまま長年使用されているケースも見受けられます。しかし、そのような建物は今後の使用や所有権の移転、売却時などに大きな影響が生じる可能性があります。例えば増築やリフォーム、用途変更の際に行政の許可が下りにくくなったり、資産価値が下がったりすることもあるため、検査済証の有無を必ず確認し、必要に応じて専門家に調査を依頼するなどの対策を講じることが重要です。
●住宅ローンや不動産投資ローンの融資を受けられないケースが多い
検査済証が交付されていない建物に対しては、住宅ローンや不動産投資ローンの融資を受けられないこともあります。これは、金融機関が融資対象物件の法的適合性を重視するためであり、検査済証がないということは、建物が建築基準法などの法令に適合していない、または適合していることを証明できないと判断するからです。
不動産投資では多くの場合、金融機関からの融資を利用して物件を購入するため、ローンが受けられないことは、事業計画そのものを頓挫させる原因になります。仮に現金で購入したとしても、将来売却を検討した際に次の買主がローンを利用して購入することができないため、検査済証のない物件は流動性が低く、資産価値の面でも不利になりやすいというリスクを伴います。
したがって、不動産投資において物件を検討する際は、必ず検査済証の有無を確認し、将来的な売却も視野に入れた上で購入検討するようにしましょう。
●増改築や売却ができない
検査済証がない建物に対しては、一定の増改築や用途変更が法的に認められない場合があります。例えば防火地域や準防火地域では、増築に対して厳しい制限がかかっており、検査済証がなければそもそも許可を得ることができません。
さらに、防火指定のない地域であっても、10㎡以上の増築や200㎡以上の用途変更を行う場合には、建築確認が必要になり、その際に検査済証の提示を求められることがあります。また、改築を希望しても行政側に適法性を証明できず、工事が認められないケースも少なくありません。
売却についても、検査済証がないからといって絶対に売却できないわけではないものの、買主から違法建築の疑いをもたれたり、資産価値が低く見積もられたりすることが多く、取引の難易度が高くなります。
このように、検査済証がないことは、将来の不動産の活用方法に制限を生じさせる重大なリスクであるといえるでしょう。そのため、まずは検査済証があるかどうかを確認し、もしない場合には、早急に対策を講じるようにしましょう。
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