
鳥貴族ホールディングス(HD)<3193>が9月10日に発表した2023年7月期決算は、連結売上は334億4900万円で前期比64.9%増、営業利益が同38.5億円増の14億1700万円となり、コロナ禍で受けたダメージから大きく回復したことを鮮明にした。今期は2023年1月に完全子会社化したダイキチシステムがフルで連結対象に加わり、さらなる業績回復への期待も膨らむ内容だが、その影響はいかに。
コロナ禍まで破竹の勢いでビジネス拡大
鳥貴族は1985年、現在の鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長の手により、東大阪に焼鳥屋「鳥貴族俊徳店」を創業したのが始まり。それから6年後の1991年に加盟店1号店をオープン。1998年に10店舗まで増え、2005年に東京都に進出し50店舗を突破した。以後も関東、東海、関西の三大商圏を中心に出店し、2007年に100店舗、2012年には300店舗と店舗数を急増させてきた。2014年には東証JASDAQ上場(現グロース市場)、2016年に東証一部(現プライム市場)に鞍替えし、2019年7月末時点で659店体制となり、連結売上も358億4700万円まで伸ばした。
破竹の勢いでビジネスを拡大してきたが、コロナ禍の影響をもろに受け、2021年7月期に売上は155億5900万円まで減少、店舗数も615店まで減少した。それでも、2023年7月期末に626店舗まで戻し、回復基調にあることを鮮明にしている。
年 主な沿革 1985 焼鳥屋 「鳥貴族俊徳店」を東大阪に創業 1991 加盟店1号店オープン 1998 10店舗突破 2005 東京都に初進出、50店舗突破 2007 100店舗突破 2012 300店舗突破 2014 東証JASDAQ上場 2015 東証市場第二部に鞍替え 2016 東証市場第一部に鞍替え、500店舗突破 2020 パートナーズ事業検証店舗「鳥貴族 大倉家」出店 2021 チキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」出店 2023 ダイキチシステム子会社化、米国子会社設立子会社化で業績への影響は?
前期で特筆すべきは、サントリーホールディングスからダイキチシステムの株式を取得して完全子会社化したことだ。「やきとり大吉」の503店舗を加え、グループで1134店舗体制となった。
このM&Aで業績変動が生じるが、全体から見るとさほど大きくはなさそうだ。ダイキチシステムの2021年12月期は売上5億4200万円、純利益6000万円、2020年12月期が売上5億8800万円、純利益7000万円だった。対して、2024年7月期の鳥貴族HDの業績見込みは、連結売上が399億6400万円、純利益が10億3700万円であり、過年度の実績から推測するに業績寄与は限定的だとみられる。

買収の目的は?
では買収の目的はどうか。それは利用層や出店エリアが被らず共存共栄が可能なことが一つの理由だ。
さらに、鳥貴族HDは社員独立支援のためのフランチャイズノウハウの吸収なども買収メリットに挙げている。鳥貴族業態では費用負担が大きいという独立希望の社員に対し、負担の少ない支援策を設計。2020年6月に小規模業態の店舗をテスト出店しており、買収で得たノウハウをそこに活用してビジネスを拡大しようという考えだ。
この社員独立支援は出店戦略とも深く関わり非常に重要だ。同社ではフランチャイズオーナーになれる対象を社員・元社員に限定している。そうしたのは企業理念に深く共有した相手「カムレード(Comrade=同志)」(6年以上の勤務、うち店長職5年以上などの条件あり)と手を組むことで、味、品質、サービスの向上につながると考えているからだ。このカムレードは他のフランチャイズとは一線を画す取り組みで、やきとりの大吉にどう作用するかも注目されるところだ。
今後の外食チェーンのM&Aの可能性は?
中期経営計画での目標は、コロナ禍のような不測の事態にも対応できる耐性のある着実な成長であると記されている。
そこをベースにして、鳥貴族店舗については、関西、東海、関東以外の地域での出店にも力を入れ、日本全国各地で店舗を展開する。並行して、2021年にオープンした新業態のチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」の直営・フランチャイズ展開を進め、鳥貴族に並ぶ事業の柱に育てていく。
海外進出にあたり、鳥貴族のDNA(チキン、均一価格、国産)を持った業態で、"グローバルチキンフードカンパニー"を目指すと宣言。足掛かりとして、2023年4月に米国法人を設立しており、2024年5月に海外進出を意識した商号変更を行い「エターナルホスピタリティグループ」と社名を変える方針だ。
肝心の「M&A」は中期経営計画でも触れられておらず、食材はチキンに限定、理念を共有するカムレードとのビジネスを重視した姿を組み合わせると、異なる企業文化を取り入れる外食チェーンのM&Aを積極果敢に仕掛けていくことは想像しづらい。ただ、海外進出を積極的に進める中で、時には大胆にM&Aを活用すべき局面もありそうだ。果たして、今後どう向き合っていくことになるだろうか。