プリンター主力の「ブラザー工業」工作機械などを拡充し1兆円企業へ

プリンターやミシンなどを手がけるブラザー工業<6448>は、M&Aを活用して工作機械をはじめとする成長事業を拡充する。

同社は工作機械のほか、産業用プリンター、業務用ラベルプリンター、新規事業などを成長事業として位置付けており、これら事業領域でのM&Aに今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に2000億円を投じる。

売り上げの70%ほどを占める家庭用プリンターをはじめとする非産業用事業が、市場の成長や円安の影響などもあり増収基調にある一方で、産業用事業の成長の遅れが経営課題となっているため、外部の資源を取り込み非連続な成長を目指すことにした。

こうした取り組みで1兆円企業の仲間入り(2028年3月期に売上高1兆円、営業利益1000億円の計画、2025年3月期は売上高8750億円、営業利益760億円の見込み)を目指す計画だ。

売り上げを3年で2倍以上に

ブラザー工業は現在、工作機械事業では小型のマシニングセンター(削りや穴あけなどの切削加工を1台で行える工作機械)を中心に品ぞろえを行っている。

工作機械業界では、大型で複雑な形状の加工への対応や、自動化、省力化、高生産性、省エネ性などに顧客のニーズが広がっていることから、高付加価値機種の拡充や、周辺機器との組み合わせによる自動化、省力化、複雑な形状の加工などにつながる分野をM&Aの対象とする。

さらに、欧州や東南アジア、インドではシェア拡大の余地があると判断しており、中国とインドの既存工場の機能強化につながるM&Aについても検討する。

こうした取り組みで2025年3月期に471億円を見込む工作機械などの売上高を、2028年3月期には1000億円に引き上げる。

持続的成長のための基盤を強化

一方、産業用プリンター業界は、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトが進み、市場は成長しているものの、新興国メーカーの台頭により競争は激化している。

このため新製品の投入を加速しシェア拡大に取り組むのと並行して、M&Aを活用して世界的な開発や製造の体制を整え、競争力と持続的成長のための基盤を強化する。

これら取り組みで、2025年3月期に1362億円を見込む産業用プリンターなどの売上高を、2028年3月期には1550億円に高める。

業務用ラベルプリンター事業では、ネットワーク機器・ケーブルラベルや食材管理ラベルなど向けの用途開発に取り組み事業を拡大する計画で、この過程でM&Aなども検討する。

また、新規事業して、排気熱風のないスポットクーラーの品ぞろえを強化しており、M&Aを活用しながら次の事業の柱に育てるとともに、オープンイノベーション(社内外の技術やサービスを組み合わせて革新的な価値を創り出す取り組み)や産学連携を強化し、新規事業の創出にも取り組む。

M&A推進体制やPMIも強化

ブラザー工業が2010年以降に適時開示したM&Aは2012年の減速機や歯車を手がけるニッセイの子会社化や、2015年の英国の産業印刷機メーカーのドミノプリンティングサイエンスの子会社化など5件ある。

直近では2019年にドミノプリンティングサイエンスの日本総販売店であるコーンズテクノロジーからドミノ製印刷機の国内販売事業を取得しており、工作機械などの成長事業でのM&Aが成立すれば、6年以上ぶりとなる。

同社ではM&Aを積極化させるのに合わせて、M&Aを推進する組織や体制の大幅な強化に取り組むとともに、PMI(M&A後の統合作業)でも本社が積極的に関与し支援することで、投資効果を高めるとしている。

プリンター主力の「ブラザー工業」工作機械などを拡充し1兆円企業へ
ブラザー工業が2010年以降に適時開示したM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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