
VTuberを中心とするIP(知的財産)ビジネスを軸に、プラットフォーム(商品などの提供者と利用者をつなぐ基盤)事業やeスポーツ事業などを展開しているBrave group(東京都港区)は、M&Aに積極的だ。
2022年に「バーチャルエンターテイメント」と「MateReal」を経営統合したのを手始めに「MUGEN LIVE」の事業を譲り受けたほか「Geek Hive」「LaRa」「ディーワン」「Smarprise」を次々に経営統合。
さらに2024年にはグループ会社の米Brave group US(カルフォルニア州)が、初の海外案件となる米国のVTuberグループ「idol」から事業を譲り受けたのに続き、2025年1月にグループ会社のENILIS(東京都港区)が「brossom」を経営統合し、この2年半のM&A件数は9件に達する。
日本だけでなく、英国や米国、タイ、中国に合わせて13拠点を展開しており、海外イベントやライブに積極的に参加し、世界的なIPの創出に取り組んでいる。
そこで同社代表取締役CEOの野口圭登氏にM&A戦略やPMI(M&A後の統合作業)、さらにはIPビジネスの将来展望などについて聞いた。
VTuber企業の連合軍を作る
―この2年半の間に9件のM&Aを実施しています。これほど活発にM&Aを実施されるのにはどのような思いや狙いがあるのでしょうか。
Brave groupのメイン事業であるVTuberの業界では、すでにトップ2社(ANYCOLOR<5032>、カバー<5253>)が上場されていて、いずれも高い株価が付いています。
トップに追いつくためにはどうすれば良いか。また、どうせ事業をやるなら、最終的に1万人規模の会社で、売上高1兆円ぐらいを目指したい。そういった思いから「VTuber企業の連合軍を作る」という方針が固まりました。
業界に仲の良い社長が多かったという背景もあり、これまで9件の経営統合は仲介会社を一切挟むことなく実行してきました。
―M&Aでは買収後の統合作業であるPMIが重要になってきます。短期間に多くの企業と経営統合したわけですが、PMIはどのような状況でしょうか。
これまで同業社を中心に経営統合を行っていますが、それらの企業では社長兼プロデューサーの方々が多く、事業に集中したいという思いの方が少なくありません。
―野口社長ご自身もプロデューサーとしての活動をしているのですか。
いいえ、私は経営に特化しています。私が事業以外のところの支援を中心に行い、統合した企業の社長さんが事業に集中するという、役割分担を行っています。

M&Aを本気でやる意思表明
―2024年9月に、M&Aを推進する投資プロジェクト「Brave global capital」を立ち上げました。設置の狙いや、今後の目標を教えてください。
改めて、我々がM&Aを本気でやっていくぞという意思表明としてプロジェクトを立ち上げました。今は経営権を握るマジョリティ投資を中心に行っていますが、ゆくゆくはファンドにして、CVC(企業が自己資金でファンドを組成し、スタートアップなどに出資する取り組み)のような経営権を握らないマイノリティ出資も行っていく予定です。マイノリティ出資は業務提携を狙ったもので、これまで実績は1社だけですが、将来はこうした出資が増えていきます。
もちろんロールアップ型のマジョリティ出資にも力は入れます。この2年半ほどで9社のM&Aを実施していますので、今後も年に2、3社ぐらいはM&Aをやっていく計画です。最低でもこのくらいのペースを維持し、できればもう少しペースを上げていきたいと思っています。
―具体的な対象領域はありますか。
VTuber事業が中心ですが、これに限らず、エンタメ領域全般が我々の投資先の候補になると思っています。ゲームやアニメの制作会社、出版やグッズの会社、スタジオやライブハウスなど、いいコンテンツに関わる周辺領域を幅広く考えています。
アジアや米国でのM&Aも検討
―今後のIPビジネスについてはどのように見ておられますか。
日本のIP、コンテンツ、エンタメは注目されており、海外で勝てる領域の一つだと思っています。日本で培ったノウハウを海外に展開していけるような事業だと思っていますので、この領域でがんばっていきたいですね。
―こうした業界の中で、御社としてはどのような将来像を描いているのでしょうか。
10年後には時価総額1兆円、売上高1500億円を目指しています。また今、海外を強化しており、もうすぐ10パーセントぐらいに達する海外比率を10年後には70%くらいにしたいと思っています。今後はアジアやUS(米国)でのM&Aも検討していきます。ヨーロッパは、ニーズはあるのですが、まだプレーヤーが育っていませんので、アジアやUSの後になるでしょう。
文:M&A Online記者 松本亮一
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