ホームセンター大手の「コメリ」に近づくM&A 

「コメリハード&グリーン」などのホームセンター運営大手のコメリ<8218>にM&Aが近づいているようだ。

2025年4月に発表した中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)に、それまでの中期経営計画にはなかった「機動的に実行できるM&A投資の準備資金」を設けており、実現すれば、2004年に子会社化したホームセンター事業のミスタージョンとヤマキ以来となる。

資材、建材、園芸、農業資材も候補に

コメリは1952年に、新潟県で米穀商米利商店を創業したのが始まりで、1977年にホームセンター事業に進出。その後全国に展開し、現在は(2025年3月末時点)ハード&グリーンを中心に、パワー、PRO、アテーナなどのブランドで合計1228のホームセンターを運営している。

同社の沿革によると、1998年にインテリア事業のアテーナを子会社化(2009年に吸収合併)したあと、2002年にホームセンター事業のキッコリーを子会社化(2006年に吸収合併)。

さらに2004年に、ホームセンター事業のミスタージョンの子会社化(2006年に吸収合併)と、ホームセンター事業のヤマキの子会社化(2009年に吸収合併)を実施したあとは、公表されたM&Aはない。

中期経営計画のキャッシュアロケーション(現金配分)によると、新店、改装、物流センターなどに750億円を、DX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)、人材に150億円を投じる計画で、M&Aや株主還元はその他として具体的な金額は示していない。

ただ、それまでには見られなかった「機動的に実行できるM&A投資の準備資金」を計画に盛り込んでおり、M&Aに舵を切ったと見ることができる。

過去のM&Aを見るとほとんどが同業者の買収であり、今後のM&Aの候補にもホームセンターが入るのは十分に予想できる。

また同社は、建築資材や建材、園芸や農業資材などの分野の流通の近代化に取り組むともに、同分野をさらに深耕し、他社との差別化を進めるとの計画を公表しており、これら計画に関わる分野でもM&Aの可能性がありそうだ。

ホームセンター大手の「コメリ」に近づくM&A 
コメリの主なM&A

20年以上遠ざかっているM&Aに踏み切るのはいつ

日本DIY・ホームセンター協会によると、ホームセンター業界の売上高は2020年に4兆2680億円と過去最高を更新したあとは振るわず、2024年の売上高は4兆180億円に留まる。その一方で2024年の店舗数は5020店と初めて5000店を超えた。

帝国データバンクによると、ホームセンター業界には「M&Aを活用した業界再編や新規事業進出などの動きが目立つ」という。

ホームセンター業界の最近のM&Aとしては、2022年のカインズ(埼玉県本庄市)による東急ハンズの子会社化、2023年のDCMホールディングス<3050>によるケーヨーの子会社化、2025年9月のDCMホールディングスによるエンチョーの子会社化などがある。

また、ホームセンター大手のジョイフル本田<3191>は、業界再編や事業承継などにつながる案件を対象に複数のM&Aを実施する方針を打ち出している。

コメリは、1万人ほどの小さな商圏でも採算が取れるコメリハード&グリーンを展開しており、他社が難しい地域への出店が可能なのが強み。

2025年3月期は売上高3791億9200万円(前年度比2.3%増)、営業利益223億9600万円(同1.4%増)と増収営業増益を達成。

2026年3月期も3.1%の増収、4.9%の営業増益を着込んでおり、実現すれば増収営業増益は2期連続となる。

さらに2028年3月期は売上高4500億円(2025年3月期比18.6%増)、営業利益320億円(同42.8%増)と一層の拡大を見込むが、この計画にはM&Aによる影響は含まれていない。

20年以上遠ざかっているM&Aにいつ踏み切るのか。その時期や規模によっては、2028年3月期の計画が大きく変動することになる。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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