
綿紡績大手のクラボウ<3106>は、半導体製造関連分野とライフサイエンス・テクノロジー分野で、M&Aに積極的に投資する。
両分野で業容を拡大し、企業の成長を加速するのが狙いで、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に、企業や事業の買収に100億円を投じる。
同社では「好機を逃さないよう積極的かつ臨機応変に対応する」としている。
新事業の創出に向けたM&Aを
クラボウは紡績業でスタートし、強みの樹脂加工技術や染色技術などを応用し、自動車や住宅、エレクトロニクスなど幅広い分野に進出。
現在は自動車内装材や半導体製造装置用高機能樹脂製品などからなる「化成品事業」、衣料素材などの「繊維事業」、排水・排ガス処理システムやバイオメディカルなどの「環境メカトロニクス事業」、フリーズドライ食品などの「食品・サービス事業」、不動産開発などの「不動産事業」を展開する。
半導体製造関連分野では、化成品事業部門で半導体製造装置や液晶製造装置の搭載部品をはじめポンプやバルブなどの機器構成部品など向けに、さまざまな樹脂を供給しており、切削、成形、溶接、溶着加工、表面処理、洗浄などにも対応する。
また、環境メカトロニクス事業部門でも、ウエハー洗浄装置や薬液供給装置、薬液濃度計などを供給している。
今後、半導体製造関連分野の供給能力の増強や技術開発、生産性の向上などを進めるとともに、高機能樹脂製品で次の柱となる新事業の創出に向けたM&Aを前向き検討し実施する。
こうした取り組みで2025年3月期に209億円だった半導体製造関連分野の売り上げを2028年3月期には313億円に引き上げる計画だ。
バイオテクノロジーの開発を推進
一方、ライフサイエンス・テクノロジー分野については、環境メカトロニクス事業部門で、核酸抽出装置、細胞・組織製品、遺伝子解析受託サービス、撹拌脱泡装置、試薬キットなどを製品化しており、再生医療や化粧品開発などの分野に製品を供給している。
今後、同分野ではバイオテクノロジーの開発を推進するとともに、研究や実験現場、製造現場での生産効率や精度の向上に取り組む方針で、この中で成果につながるM&Aを模索する。
こうした施策で2025年3月期に139億円だったライフサイエンス・テクノロジー分野の売上高を2028年3月期には171億円に拡大する。
これまでのM&Aについては、最近の適時開示情報を見ると、2024年1月に工作機械メーカーの倉敷機械をDMG森精機<6141>に譲渡した案件と、2025年3月に自動車向け軟質ウレタンモールド製品製造の中国子会社「広州倉敷化工製品」を現地社に譲渡した案件の2件がある。
半導体製造関連分野とライフサイエンス・テクノロジー分野で、M&Aを積極化する方針を打ち出したことで、今後は売りから買いに転じることなる。
子会社譲渡で減収に
クラボウは、化成品事業が総売上高の40%強を、次いで繊維事業が同30%強を占める。環境メカトロニクス事業は同15%ほどで、食品・サービス事業と不動産事業の売上高構成比は1ケタ台となっている。
2025年3月期の売上高は1506億6000万円(前年度比0.4%減)で、営業利益は103億1100万円(同12.3%増)と減収営業増益となった。
前年度に工作機械メーカーの倉敷機械を譲渡したのが減収の主な要因で、利益は前年度に赤字だった繊維事業が黒字転換したことから2ケタの伸びとなった。
2026年3月期は構造改善中の繊維事業と、半導体市場関連の市況の低迷を見込む化成品事業が振るわず、売上高は4.4%減少し、労務費などのコストアップなどから営業利益も22.4%減少する見込み。
その後は業績が回復し、2028年3月期はM&Aなどを活用して業容を拡大することで、売上高は1650億円(2025年3月期比9.5%増)、営業利益は130億円(同26.0%増)を見込む。
文:M&A Online記者 松本亮一
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