三菱UFJフィナンシャルグループがウェルスナビをM&A、証券強化だけじゃない買収理由

三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJFG)が昨年末、金融商品を提案するロボアドバイザーサービスを行うウェルスナビの買収を発表し、デジタル化に向けて大きな一手を打った。証券業の強化とともに資産運用、保険、住宅ローンなどをまとめた総合アドバイザリー・プラットフォーム(MAP: Money Advisory Platform)の実現を加速させる。

三菱UFJFGとウェルスナビは段階的に関係深化

三菱UFJFGとウェルスナビは、段階的に関係を深めてきた。2020年8月の三菱UFJ銀行との業務提携から始まり、その成果として同年11月に「WealthNavi for 三菱UFJ銀行」をリリース。三菱UFJ銀行の利用者に向けて資産運用サービスの提供を開始した。

6つの質問に答えると個人に合あった最適な積立プランが自動作成されるサービスで、投資初心者や時間的制約のある人をターゲットとしており、幅広い層に投資の機会を提供している。

2024年2月、さらに関係を深めて資本業務提携を締結、2つの施策を打ち出した。一つは、ロボアドバイザーサービスとNISA口座での自動運用を実現する「おまかせNISA」の普及促進。もうひとつが、MAPの開発・提供だ。

MAPは、従来別々のアプリで管理されていた資産運用、保険、住宅ローンなどの金融サービスを、一つのスマートフォンアプリに統合する取り組み。顧客一人ひとりの状況やニーズに応じて、最適な金融サービスを一体的に提案できる「一人別提案」の実現を目指す。

将来的にはグループ共通のポイントや特典を付与するロイヤリティプログラムの導入も計画されている。これは、楽天が展開するような、EC・モバイル・証券などの異なるサービス間でポイントを連携させ、顧客の囲い込みを図る戦略に類似している。この施策で金融サービス利用者を取り込む。

以後、三菱UFJFG は2024年11月にウェルスナビへのTOB(株式公開買い付け)を発表。

TOBは成立し、完全子会社化に向けた手続きが進んでいる。

完全子会社化のシナジーとして、MAPの顧客体験(UI/UX)の質の向上、資産運用機能の拡充とMUFGブランドの活用による認知拡大、三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)とのノウハウの相互提供によるネット証券事業の強化などがある。

MAP推進とネット証券の強化で金融サービス巻き返しへ

三菱UFJFGによるウェルスナビの買収は、メガバンクで加速する証券事業強化の流れの中に位置づけられる。

その代表例が、SMBCグループとSBI証券の提携。業界最大手で1300万もの口座を有するSBI証券は、2022年にSMBCグループと資本業務提携を実施した。三井住友銀行アプリでのSBI証券口座の確認機能や、クレジットカードを活用した積立サービス、独自のポイントプログラムなど、様々なサービスを展開している。

約1100万口座を持つ楽天証券も、2022年にみずほ証券と資本業務提携。2024年末にはみずほフィナンシャルグループが楽天カードと資本業務提携を結び、グループ間連携が進んでいる。

対して、三菱UFJFGは証券分野で出遅れをとっていた。三菱UFJ eスマート証券の口座数は177万にとどまり、業界8位。傘下に迎えるウェルスナビは、口座数40万と規模は小さいものの、ロボアドバイザー技術という独自の強みを生かす。この買収で、三菱UFJFGは成長が続くネット証券市場での競争力強化を図り、MAPの実現で、利用者拡大を図る考えだ。


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