DJ(ディスクジョッキー)向け機器などの音響機器関連事業を展開するノーリツ鋼機<7744>のM&A戦略が計画段階から実行段階に移った。
同社傘下で音響機器関連事業を手がけるAlphaThetaが、オランダのDJ Monitor B.V.から楽曲トラッキング技術やIP(知的財産)、関連契約、事業資産を包括的に取得する。
2026年2月に建築構造部材やフロア部材を製造するセンクシアを子会社化したのに次ぐ案件で、2030年12月期を最終年とする6年間の中期経営計画で掲げた「既存事業のオーガニック成長」「周辺事業M&A」「新領域M&A」の三つの成長戦略に沿った取り組みとなる。
新領域となる建材分野と、音響機器関連事業の周辺強化となるM&Aが続き、同社の投資戦略は計画から実行へのフェーズ転換が鮮明になり、追加の企業買収も視野に入る。
KUVOの技術基盤を強化
ノーリツ鋼機は2025年2月に策定した同中期経営計画で、2024年12月期の売上高1065億円を、2030年12月期にオーガニック成長で1500億~1700億円に伸ばし、周辺事業M&Aと新領域M&Aを加えて1900億円以上を目指す計画を示した。
M&Aの投資予算は周辺事業が最大400億円、新領域が600億~1000億円で、原資は余剰資金、資産売却、追加借り入れなどを想定する。
この計画の第一弾となったのが、センクシアの子会社化だ。
同社は売上高の約80%を市場シェア1位の製品が占めるという独自性の高い技術力を保有している。
取得金額は690億円で、2026年12月期から連結対象となる。
第二弾が、今回のAlphaThetaによるDJ Monitor事業資産の取得となる。
AlphaThetaは2022年に資本業務提携し、DJ Monitor株式の25%を取得していた。
今回はAlphaThetaが手がけるKUVO(クラブやイベント会場でのDJプレイ情報を収集・蓄積し、音楽の再生履歴を可視化・活用するプラットフォーム)事業の基盤強化と機能拡張を目的に、DJ Monitorの事業資産を取得する。
DJ Monitorが有する高精度で信頼性の高い楽曲トラッキング技術とデータ処理基盤を統合することで、KUVOの技術的自立性を高める。
あわせてオランダにAlphaTheta KUVO Technology B.V.を設立し、トラッキング技術、音楽認識技術の高度化や、データ基盤の強化などを目指す。
第一弾のセンクシアは新領域の案件であり、第二弾のDJ MonitorはAlphaThetaの音響機器関連事業を、ソフトウェア、データ、サービス領域へ広げる周辺強化のM&Aと捉えられる。
祖業の写真処理機器事業を譲渡
ノーリツ鋼機は、1943年の報国写真館の創業が始まり。1956年に前身のノーリツ光機製作所を設立し、1961年にノーリツ鋼機へ改組した。
その後、写真関連事業の縮小を受けて事業転換を進め、2016年に祖業の写真処理機器事業を譲渡した。
同社は2010年代、医療支援、医療機関向けコンサルティング、シニア・ライフ、バイオ、保険などの分野で積極的なM&Aを展開した。
その後、2018年4月に遠隔読影サービス事業や医用システム導入保守事業などを手がけるドクターネット、2020年8月にシニア向け出版・通販事業のハルメクと通信販売事業の全国通販グループを譲渡。
さらに、同年9月に母体血による胎児DNA検査サービスなどを手がけるGeneTech、同年11月に賃貸住宅入居者向け保険を取り扱う日本共済を売却した。
2022年2月には医療統計データサービスを手がけるJMDCの一部株式をグループ外へ譲渡し、コア事業を「ものづくり」と再定義した。
2026年2月には建材という新領域のセンクシアを買収し、ものづくり(部品・材料)部門を強化した。
大きく変わる売上高構成比
ノーリツ鋼機の2025年12月期は、売上高1192億2300万円(前年度比11.9%増)、営業利益は208億1500万円(同4.2%増)だった。
DJ機器などを手がけるAlphaTheta(2020年に子会社化)と、JLabブランドでイヤホンやヘッドホンなどを手がける米国のPEAG, LLC(2021年に子会社化)で構成する、ものづくり(音響機器関連)が売上高の約90%を占める。
残りの10%を、ペン先部材やコスメ部材を生産するテイボー(2015年に子会社化)と、MIM(金属射出成形)事業を展開する浜松メタルワークス(2025年4月テイボーのMIM事業を分社化)で構成する、ものづくり(部品・材料)が担う。
センクシアの2025年3月期の売上高354億1300万円は、ノーリツ鋼機の2025年12月期売上高の30%弱に相当する。
センクシアの子会社化は事業ポートフォリオを広げる案件であり、売上高構成は音響機器関連への集中から大きく変化する。
一方、DJ Monitor事業資産取得は、音響機器関連のデータサービス化を進める案件であり、事業の領域拡大に寄与する。
中期経営計画で掲げる売上高1900億円以上に向け、これらM&Aの果たす役割は大きい。
有価証券報告書には「今後も積極的に企業買収を実施する予定」とあり、M&Aは中期経営計画を進めるうえで引き続き重要な手段となる。
文:M&A Online記者 松本亮一
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