
時計やバッグなどのブランド品をはじめ衣料品やアクセサリーなどの中古品を再使用するリユース市場で、M&Aに踏み切る動きが目立ってきた。
節約志向や環境意識の高まりなどからリユース市場の拡大が見込まれており、事業成長のための一つの方策としてM&Aを活用しているもので、各社の計画を見ると今後もこの傾向は続くと見てよさそうだ。
中古品購入に対する抵抗感の薄れが背景に
リユース品は時計、バッグ、衣料品、アクセサリーをはじめ、宝飾品、家電、カメラ、スポーツ用品、楽器、ゲームソフト、書籍、アニメ、パソコン、アウトドア用品、電動工具、骨董品、家具など幅広く、このほかにも流通が可能であればほとんどのモノが対象となる。
リユース事業は買い取りと販売がメインとなるが、その形態はさまざまで、実際の店舗を構えて商品の買い取りや販売を行う店舗型のほかに、自宅を訪問して買い取りを行う訪問買い取りや出張買い取り型、商品の販売はせずに買い取りだけを行う買い取り専門型、インターネット上で取引を行うオンライン型、業者を対象にしたオークションを行うオークション型など多くのタイプがある。
店舗型事業を展開する業界大手のコメ兵ホールディングス<2780>の推計によると、2020年に2兆4000億円だった日本のリユース市場は2030年には5兆円に拡大し、海外でも2020年に20兆円だった米国のリユース市場は2030年には46兆円に、中国では同18兆円だったのが同95兆円に達する見通しだ。
日本では近年の物価高に伴い、新品ではなく中古品を選ぶことで支出を抑える節約志向や、不用品を再利用することで、環境負荷の軽減につながるという環境意識の高まりなどから、リユースへの関心が高まり、市場の拡大につながっている。
フリーマーケットアプリの普及などによる個人間取引による中古品購入に対する抵抗感が薄れていることも市場拡大の背景にある。
さらにリユース市場では円安で日本のリユース品が割安に見えることや、リユース品の信頼性が高いことなどから、インバウンド(訪日観光客)需要も大きい。
ブランド品などを取り扱う「2nd STREET」などの店舗を展開する業界大手のゲオホールディングス<2681>は2025年3月期決算の中でリユースの国内市場について「訪日観光客によるインバウンド需要の回復も追い風になり市場が拡大した」と分析。
コメ兵は2025年3月期第2四半期決算で、免税の売上高が前年同期比87.5%増加し、総売上高に占める免税の比率が17.1%となったほか、業界中堅のバリューエンスホールディングス<9270>でも、2025年8月期第1四半期に、インバウンド需要が好調に推移し、海外売上高(インバウンド含む)比率は前年同期比2.6ポイントアップの24.2%に達した。
国内外で市場が拡大する状況の中で、どのように事業を成長させるのか。その一つのカギを握るのがM&Aとなっているのだ。
ゲオ、リユース品の修理や交換に備え少額短期保険を取得
ゲオホールディングスは2025年6月2日に、決済端末修理費用補償保険などの保険商品の開発や販売を手がける、あおぞら少額短期保険(東京都港区)を子会社化したと発表した。
少額短期保険に関するノウハウを獲得し、リユース品の商品破損や故障時の修理や交換の需要増加に対応するのが狙いだ。
ゲオがM&Aを適時開示したのは2019年の高級時計・ブランドバッグのリユース卸売り事業を手がける、おお蔵(福岡市)の子会社化以来、6年ぶりとなる
コメ兵ホールディングスは2024年に、中古ブランド品買い取り・販売のEC(電子商取引)サイトを運営するRECLO(東京都品川区)、中古ブランド品の買い取り・販売のアールケイエンタープライズ(横浜市)、中古ブランド品買い取り・卸売りのRs-JAPAN(横浜市)の3社を買収した。
これ以前に適時開示したM&Aは2012年から2023年までの12年間に6件で、2年に1回のペースだったため、急速にM&Aを増やしていることが分かる。
BuySell、ロールアップ戦略を展開
出張買い取りを展開する業界中堅のBuySell Technologies<7685>も2024年に、中古品の買い取り・販売チャンネルの多様化・拡大などを狙いに、ブランド品や貴金属類の買い取りを手がける「むすび」(横浜市)と、リユース事業の「買取 福ちゃん」などを展開するレクストホールディングス(大阪市)の2社を買収した。
同社はリユース市場でロールアップ戦略(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指す手法)を推し進める方針を明らかにしており、今後一段とM&Aが増える可能性が高い。
バリュエンスホールディングスは、買い取り競争が激化しているため、買い取り店舗以外のリユース品の仕入れネットワークを強化する方針だ。
持続的な成長のためには仕入れ基盤の強化や仕入れネットワークの拡大が不可欠と判断しており、この目標実現のためにM&Aを活用する。
オークションを中心とする業界中堅のオークネット<3964>は、2026年、2027年に買収金額が30億円規模のM&Aを1件ずつ合計2件実施する計画を持つ。
事業の拡大を狙いに、ブランド品やデジタル機器、中古車などを手がける既存事業とのシナジーが見込める企業をターゲットにするとしている。
こうした各社の動向を踏まえれば、リユース業界でM&Aが活発化すると予想するのは、それほど的外れではなさそうだ。
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文:M&A Online記者 松本亮一
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