北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!
ミュージカル『王様と私』製作発表会見より、左から)北村一輝、明日海りお(撮影:藤田亜弓)

『サウンド・オブ・ミュージック』など多くの傑作ミュージカルを世に送り出した、リチャード・ロジャース(音楽)&オスカー・ハマースタイン二世(脚本・歌詞)の名コンビによって、1951年にブロードウェイで初演。「Shall We Dance?」のナンバーと共に今も世界中で愛され続ける『王様と私』が、東宝制作のプロダクションとしては約24年ぶりに、新演出版として上演! トニー賞をはじめ、映画版でもアカデミー賞を受賞するなどミュージカルの金字塔として知られる本作に、北村一輝明日海りおがW主演で挑む。

演出を担う小林香の新訳・新演出でも注目される本作の制作発表が、1月26日(金)、都内で行われた。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

左から)北村一輝、明日海りお、翻訳・訳詞・演出を務める小林香

映像作品で強い存在感を放ちつつ、蜷川幸雄岩松了、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、英国人演出家のフィリップ・ブリーンなど、上質な舞台作品にも出演してきた北村。今回は初めてのミュージカル出演にして、主演の王様役だ。オファーを受けた時の気持ちを「“芝居”だけをやってきた自分には、“歌”に対する壁がありました」と率直な気持ちを口にした。



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「自分が観客になったとして、果たして僕(の歌)は観るに値するのだろうかなどと悩んだのですが、最終的にお受けしたのはプロデューサーさんの言葉。俳優を始めた頃に、殺陣や日舞、バレエ、声楽などいろいろ勉強していた中で、声楽の発表会があったのですが、プロデューサーさんがその時のことを覚えていてくださって。

『(歌も)絶対できますから』という、その言葉が大きかったですね。まだまだ不安はありますが、きっと頑張れるんじゃないかなと、前向きな気持ちでやろうと思っています」と話す。



一方、元宝塚歌劇団花組のトップスターで、現在はTVドラマでも活躍中の明日海。王の子どもたちの家庭教師としてシャム(現タイ)にやってくる、イギリス人将校の未亡人アンナを演じる。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

「ミュージカルファンなら誰もが知っているような作品で、『Shall We Dance?』という楽曲も有名。そういうクラシカルなミュージカルこそ、技術はもちろん、演じる人の持っている魅力が問われると思うんですね。

果たして私に務まるんだろうかという不安はあったのですが、今回は小林さんが新たな演出をしてくださるということ、さらに北村さんが王様役を演じてくださるということで、新しい『王様と私』が生まれるんじゃないかと思えました。今はとても楽しみな気持ちでいるんですよ」と明日海は微笑む。



シャムの専制君主である王様と、イギリスから来た家庭教師のアンナ。頑固で誇り高いふたりは、ことあるごとに対立するが、次第に互いの誠実さと知性とを認め合うように。そんな中、イギリスの特使がバンコクにやってくるという知らせが届く。隣国のように植民地にされてしまうのではと恐れる王様に、アンナは西洋式の晩さん会を提案するが……。

19世紀半ば、まったく異なる環境に育ったふたりが、互いの価値観を越えて次第に心を通わせていくストーリー。制作発表でも身に着けていた、衣裳の豪華さも魅力のひとつだ。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

「ミュージカルはよく観ていて、ダンスが大変なのは分かっているつもりでしたが、実際にレッスンをしてみると本当に大変ですね。さらに王様の衣装は、着て踊るとダンスのターンなどでは遠心力で重くなると聞いて、今からどうしようかと……」と言う北村。「(明日海を見ながら)宝塚ファンの方も観にいらっしゃると思いますし、皆さん綺麗な方を見慣れていると思うので、みっともない姿を見せてドン引きされたらいけないなと。老体にむち打ちながら、公演ギリギリまで身体づくりを頑張ります」という北村に、明日海が思わず吹き出すひと幕も。



その明日海も、「有村さん(衣裳担当で宝塚歌劇団所属の有村淳)が私の体型のウィークポイントをうまく隠して、素敵に見えるようにデザインしてくださったので、ドレスの着こなしはそれほど意識せずにいられるのですが……。そうですね、首筋や肩のラインはやっぱり綺麗に越したことはないので、昨日は角質オフっていうんですか、ツルッと見えるようになるボディソープがあるんですよ(笑)。それで磨いたりしていました。今も腹筋を使って座っております」と美しさの秘訣を話し、会場は一気に和やかムードに。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

ビジュアル撮影に立ち会ったという小林も、「おふたりは撮影で初めて会われたということでしたが、すぐにポンポンと掛け合いで話すようになっていて、夫婦漫才のようだなと(笑)。これは舞台上でもいいケミストリーになるだろうなっていうのは、間近で見て感じました」と、早くもコンビぶりに太鼓判を押した。



役づくりについては、「あの時代、息子ひとりを連れて異国に働きに行くアンナは、本当に勇気と行動力のある女性だなと思います。そして自分がこういう風に扱われるべきだっていう強い信念を持ち合わせていて、とても愛に溢れた人でもある。実際に稽古場で王様や他の方たちとセリフを交わしてみて、小林さんの演出プランもうかがいつつ、そこで生まれたものを紡いでいけたらいいなと思います」と意気込む明日海。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

北村も「ユル・ブリンナーをはじめ今まで王様役を演じられた方たちが、皆さん顔がハッキリされている方が多いので、周りからは『ピッタリだね』って言われることが多いのですが(笑)。やっぱり、上っ面だけで終らないようにというのはありますし、スタッフとも技術面や体力面などの心配もしつつ、とにかく終わったときに『やってよかったね』と言われるように頑張りましょうと言っているところ。公演が始まれば様々なご意見もいただくとは思うんですけども、その反応は自分自身の行動の答えですから、できる限りの努力をしたいなと思っています」と、表情を引き締める。



作品の根底に流れる大きくて美しいテーマ

今回は小林による翻訳と訳詞、そして新たな演出が施される予定だ。世界的に価値観の多様化が広まり、マスターピースと呼ばれる舞台や映画もその点をアップデートした上演やリブート作品が増えている近年。初演から73年が経った今、『王様と私』がどんな舞台になるのか注目が集まる。



「時代が変わり、価値観も変わってゆく中、この作品に古い価値観の名残りがあることは否めないかもしれないですね」と小林。「それでも」とすぐに言葉を継ぎながら、「原作を変えることは許されない中で、価値観の変化をどう表現するかは、やっぱり意識する点です。今回、私が翻訳と訳詞も担当しているのは、同じ原作でも訳し方や伝え方に新しい時代のフィルターを通したい、との思いから。翻訳に取り組む中で、この作品には『今も昔も、人は変わらない』という大きくて美しいテーマがあること、そして現在まで輝き続けている理由のひとつはそこなんだと、改めて感じることが出来ました。王様とアンナは宗教や人種、性別、身分、さらに言語も違うし、貧富という意味でも違うけれど、そんなふたりが出会って分かり合おうとすることで、愛が生まれます。世界中のあちこちで分断があり、格差が広がっている今だからこそ、この美しいテーマを伝えることができる本作の上演は、とても意義深いものではないかと思います」と話す。



北村一輝と明日海りおW主演!『王様と私』新演出版、始動!

明日海もうなずきながら、「アンナの持っている精神は決して古く感じられないんですよね。王様や周りの人たちも、新しいものをちゃんと受け入れてくれる心があるというところが、本当にこの作品が色あせない理由だなと。それに、王様とアンナは似ているところもいっぱいあるような気がしているんですよ。ふたりともすごく頑固だから、台本で何ページも言い合うシーンがあるのですが、それでも次第にお互いを理解し、受け入れてゆく。ふたりは愛された経験がある人で、だからこそ次に進めるんだなとも感じます。そこのところは舞台上で毎回、新鮮に表現できたらいいですね」と語る。



「時代はすごいスピードで変わってきていますし、僕らのとらえ方はもちろん、観てくださる方のとらえ方っていうのも、やっぱり昔とは違う部分がありますよね」と言うのは北村だ。「なんでも新しいものにするのが正しいとは言いませんが、欧米で上演された作品が別の国で上演されるとき、その国の価値観ではどういう風に受け取られるんだろう、ということですよね。原作を変えてはいけない中で、逆に変えられる部分での“変えてゆく勇気”というものは必要だなと思います。エンタテインメントの歴史の中でも、それはすごく大切なこと。そういう点を取り入れる演出や考え方っていうのは、僕はすごく賛成ですね」とまっすぐな言葉で語ってくれた。



さまざまな魅力がたっぷり詰まった、2024年版の『王様と私』。その全容が明らかになる初日が、今から楽しみだ。



取材・文:藤野さくら
撮影:藤田亜弓



ミュージカル『王様と私』特報



<公演情報>
ミュージカル『王様と私』



音楽:リチャード・ロジャース
脚本・歌詞:オスカー・ハマースタイン二世
演出:小林香
出演:北村一輝、明日海りお



朝月希和 竹内將人 木村花代 中河内雅貴 今拓哉 小西遼生



井口大地 伊藤かの子 風間無限 笠行眞綺 金子桃子 河野駿介 黒田陸 酒井航 島田彩 鈴木遼太 聖司朗 西尾真由子 福満美帆 松田未莉亜 丸山泰右 宮河愛一郎村上貴亮 村上すず子 矢野友実 吉田玲菜(スウィング)植木達也 油井杏奈



【東京公演】
2024年4月9日(火)~4月30日(火)
会場:日生劇場



【大阪公演】
2024年5月4日(土)~5月8日(水)
会場:梅田芸術劇場メインホール



チケット情報
https://w.pia.jp/t/thekingandi/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347719&afid=P66)



公式ホームページ:
https://www.thekingandi.jp