
Text:吉羽さおり Pnoto:白石達也
“耳に残るロック”をコンセプトに、2015年に東京・吉祥寺でスタートしたサーキットライブイベント『MiMiNOKOROCK FES JAPAN』。年々会場数を増やし、また大阪でも開催してきたこのイベントが、2025年に10周年を迎える。
さらにオープニングアクトとして2022年に軽音部のメンバーが集まって結成した4ピース高校生バンド、パキルカが出演した。自らを邦ロック勢の味変と呼び、ひと癖あるロック・サウンドを奏でるパキルカは、ダークな曲から「えなじ~ぽっぷ!」などひねりのあるノイジーな曲で、会場を温めた。

パキルカ
続いて登場したのは、北海道札幌発のギターロック・バンド、UMEILO。登場と共に勢いよく楽器をかき鳴らすと、そのまま疾走感のあるアンサンブルで「高空」、ダイナミックさを増して「ダーリン」へとエネルギーを迸らせる。UMEILOは同会場で行われた2019年の“Special Edition”にも出演しており、伊藤純輔(vo/g)は「また出られてうれしい」と語る。

UMEILO
情景を描いていくようなギター・サウンドと、繊細な柔らかさを持ったボーカルながら鋭い言葉ですっと心に切り込む歌でリスナーをとらえていくUMEILO。音楽は饒舌だがMCは苦手なようで、「信じてもらえないかもしれないですけど、4人中ふたりが普段コールセンターで働いているんです」(伊藤)と演奏時の雰囲気とは変わってボソリと語る姿にフロアから笑いが漏れる。
そんな不器用さを鮮やかに塗り替えていくように「水晶」や、渇きを埋めるようなバンドアンサンブルを響かせる「rouge」、そしてドラムとベースによるイントロダクションで心拍数を上げながら「幽灯」へと突入する。観客を引き込んでいくプレイに、自ずとフロアから手拍子が起こりラストはバースト感たっぷりに「LastSong」を放って、5年ぶりの“Special Edition”のステージを飾った。

UMEILO
この“Special Edition”では10代や若手のバンドの出演が多いが、そのなかで異色となったのはEnfants。

Enfants
手を上げたり、自由に楽しんでほしいと言いながら、「でもめっちゃ沈む曲やります」と「R.I.P.」からスタートした後半も観客を翻弄するように、アクセルを踏み込んで乾いた景色や風を感じさせたかと思えば、一転して無重力の空間を寄るすべなく漂うような「惑星」を甘美に紡いでいく。今回は出演バンド同様に普段のEnfantsのライブよりも観客の年齢層が若く、制服姿の学生の姿もあって、松本は「今後、また会えることがあるのかな」とは言ったが、迫力のあるサウンドといつの間にか記憶に侵食するような歌や叫びには普遍のエネルギーがある。ラスト「Play」で上がった大きな歓声がその答えだろう。

Enfants
T-REX「20 TH CENTURY BOY」をSEに登場した3ピース、セカンドバッカーのステージは早口でまくし立てるように歌う怒涛のショートチューン「バンドマンとして」、そして“ワン、ツー、スリー、フォー!”を合図にもどかしい思いを炸裂させる「アダルトエイティーン」の2連投でスタートした。11月6日には渋谷WWWXで1stワンマン(完売御礼)を成功させ波に乗っているところで、「両思い」では「声、出せますか」「もっといけますか」(こうへい/vo&g)と早速コール&レスポンスで観客の歌声を引っ張り出していく。

セカンドバッカー
「今日はいろんなバンドが出演しているので、このバンドいいな、あのバンドいいなというのがあると思うんですけど。今日来てよかったなって思えるように、頑張ります」(こうへい)と挨拶をすると、「告白」「別れた後で」を続けていく。受け身な恋愛の不安や切なさをキャッチーなメロディで歌う「なんだっていいわ。」では、サビをシンガロングしたり、「君とのこと」では頭から観客に歌ってもらい「いいね!」と盛り上げる。曖昧で煮え切らない、そんな関係性から立ち上る感情をストレートに綴った曲たちはフレンドリーだ。

セカンドバッカー
『MiMiNOKOROCK Special Edition 2024』のトリを飾るのは、今年7月に1stフル・アルバム『POP STAR』をリリースした“POPS日本代表”を掲げるパーカーズ。登場いちばん「ハッピーをちょうだい」の軽やかなビートと陽性のサウンドで観客の手拍子を誘う。ちょっぴりため息まじりの歌だが、バンドアンサンブルや観客とのケミストリーでこの空間の彩度がぐんぐんと増していく感覚だ。「一緒に楽しんでいきましょう」(豊田賢一郎/g&vo)の声と共に、両サイドのギタリストねたろ(g/cho)とナオキ(g)がステージ先端へと躍り出て「痛いの痛いの飛んでゆけ」へと突入し、力強いフカツ(ds)のビートやメンバーのコーラスで高揚感を増す。

パーカーズ
「ナンバーワン」では豊田がハンドマイクで歌い、“ナンバーワン”の合唱を指揮するように声を上げる。すぐにでもシンガロングできるキャッチーさが冴える。アルバム『POP STAR』中心のセットリストのなか、後半は結成当初からやっていた曲をとミドルテンポの「雨の音」で、心の内にある悲しみもこぼす。しんみりと心を揺らしたところで、ポップな「君が好き」、そしてラストは「中華で満腹」でフロア一体となって中華のメニューをシンガロングするという急展開のドラマを生み出した。しっかりとライブを積み重ねているバンドだからこその説得力、そして何よりバンドが楽しんでいるノリのよさが、会場の雰囲気を明るく包んでいる、そんなステージだ。

パーカーズ
鳴り止まない拍手や手拍子でアンコールに応えたパーカーズは改めて、2025年にサーキットイベント『MiMiNOKOROCK FES JAPAN』が10周年を迎えること、そして第1回と同じ吉祥寺CLUB SEATAでの開催で原点回帰的な回となったこの日の『MiMiNOKOROCK Special Edition 2024』で、トリを任されたことがうれしいと語る。出会ってくれてありがとうと観客に思いを伝えると、最後に1曲「運命の人」を披露して、MiMiNOKOROCKの前途を祝すような晴れやかさで締めくくった。
<公演情報>
「MiMiNOKOROCK Special Edition 2024」
2024年11月22日吉祥寺CLUB SEATA
出演:パーカーズ / UMEILO / セカンドバッカー / Enfants / OA︓パキルカ
セットリスト
パキルカ
1.BANG!!
2.酔いどれ
3.私、
4.MISSION
5.えなじ~ぽっぷ!
6.U!M!A!
7.海鮮カーニバル
UMEILO
1.高空
2.ダーリン
3.推奨
4.Rouge
5.幽灯
6.lastSong
Enfants
1.HYS
2.デッドエンド
3.Kid Blue
4.R.I.P.
5.Drive Living
6.Dead
7.惑星
8.Play
セカンドバッカー
1.バンドマンとして
2.アダルトエイティーン
3.両想い
4.告白
5.別れた後で
6.なんだっていいわ。
7.君のこと
8.どうせ枯れるなら
9.月と太陽
パーカーズ
1.ハッピーをちょうだい
2.痛いの痛いの飛んでゆけ
3.ナンバーワン
4.雨の音
5.君が好き
6.中華で満腹
En.運命の人
<次回公演>
『MiMiNOKOROCK FES JAPAN in 大阪 2025』
2025年3月15日(土) 11:00開場。12:00開演
会場:ANIMA / BRONZE / BEYOND / AtlantiQs (大阪府)
出演:つきみ / 606号室 / 猫背のネイビーセゾン / ウマシカて / EVE OF THE LAIN / 東京、君がいない街 / UMEILO / muk / らくガキ / yummy’s / 三四少女 / Cloudy / 琳子 / 黒酢ライフ / ORCALAND / 板歯目 / ma℃ister / Kohamo / マママ・ダ・マート 他
料金:4,000円(入場時ドリンク代が必要)
イベント公式サイト:
https://miminoko69.com/