藤原竜也「どこか自分にも通じる部分を感じます」 舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』で初代中村仲蔵に
藤原竜也 (撮影:源賀津己)

江戸時代中期に実在した、伝説的歌舞伎役者・初代中村仲蔵。梨園の血縁でないにも関わらず、四代目市川團十郎に見出され、異例の出世を遂げた大スターである。

そんな仲蔵の波乱に満ちた半生を描き出す、舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』。タイトルロールの仲蔵を、蜷川幸雄に見出された演劇界の申し子、藤原竜也が演じる。脚本を手がけるのは、21年のドラマ版と同じく源孝志。さらにこれまでも相性の良さを発揮してきた蓬莱竜太の演出のもと、藤原はいかなる仲蔵を舞台上に体現しようとしているのか。



そう簡単に入り込むことが出来ない“歌舞伎”の世界

藤原竜也「どこか自分にも通じる部分を感じます」 舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』で初代中村仲蔵に

――今回歌舞伎役者を演じられますが、これまで歌舞伎に対してどんなイメージを持たれていましたか?



僕の中では六代目中村勘九郎さんのイメージがとても強いです。この時代に中村勘九郎あり!と、共に今、演劇に関わる役者で良かったと思えるぐらいの存在ですから。そんな勘九郎さんが演じていたのが、ドラマ版(※21年に放送された『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』)の仲蔵。彼の熱い、強いイメージを常に心の内に留めつつ、今回自分なりの仲蔵を演じられたらと思っています。



――踊りの稽古はすでに1年ほど続けられているそうですね。



中村流の中村梅彌先生に教えていただいています。僕は気持ちのいい春の日も、炎天下のとても暑い真夏の日も、肌寒くなってきた秋の日も、汚ないジャージに汚ないTシャツ、リュックひとつで先生の家に通っているのですが(笑)、いつも懐かしい感覚を覚えるんです。というのも15、16歳のころの自分と着ているものが変わらなくて(笑)。毎日「今日も稽古イヤだなぁ、難しいよなぁ」と思いながら稽古場に行き、終わるとちょっと清々しい気持ちで帰路に就く。

知らないことを学ぶってやっぱり大事ですからね。帰り道が非常に心地いいのは、きっとそれが理由で。数日後にまた梅彌先生の稽古がありますが、きっと思うはずなんですよ。「行きたくねえな」って(笑)。さらに最近は勘九郎さんが来て、「そろそろ教えようか?」なんて言ってくれるんです。でもいやいやと。勘九郎さんとは大河ドラマ『新選組!』(04年)から家族ぐるみのおつき合いをさせてもらっていますが、どんなに長いつき合いであっても、やっぱり入り込めないところはあって。歌舞伎ってそう簡単に真似られるものではないですから。じゃあ今回我々はどうするのかと言ったら、演劇としてこの作品を成立させる。それしかないのではないかと思っています。



“演劇の持つ力”というものを存分に発揮出来る作品に

――演じる仲蔵についてですが、同じ役者として惹かれるところはありますか?



他の人がやってこなかったことにチャレンジし、芝居の世界を広げることで見物衆を驚かせる。その精神力、勇気っていうのは、本当にすごいなと思います。

打たれても、打たれても這い上がっていく、という部分では、どこか自分にも通じる部分を感じます。先ほどもお話ししましたが、僕は15、16歳のころに蜷川幸雄さんに出会い、打たれて、打たれて、今の自分があるわけです。もちろん当時は辛くて、逃げ出したい瞬間もありましたよ(笑)。でも振り返ってみれば、すべて自分のためになっている。本当にありがたいことだと思います。



藤原竜也「どこか自分にも通じる部分を感じます」 舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』で初代中村仲蔵に

――ドラマ版と同じく源孝志さんが脚本を手がけられますが、舞台版ならではの魅力とは?



ホンが本当に面白いです。非常に壮大なストーリーではありますが、とてもわかりやすいものにもなっていて。瞬間的に江戸の世界、歌舞伎の世界、さらにヒエラルキー構造の楽屋の世界へと引き込む手腕というのは、やはり源さん、さすがだなと。僕は源さんの監督作品にも参加していますが、源さん自身、とても人間的に魅力のある方なんですよね。一緒にいて面白いし、芝居好きだし、バカな話もたくさんする(笑)。そういう柔軟な人間性が、源さんの描く作品の魅力にも繋がっている気がします。



藤原竜也「どこか自分にも通じる部分を感じます」 舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』で初代中村仲蔵に

――演出は、『渦が森団地の眠れない子たち』(19年)でもご一緒された蓬莱竜太さんが手がけられます。



源さんと同じくとても才能のある、そして信頼の置ける方ですから。こうしてまた一緒に作業させてもらえることは、本当にありがたいなと思います。僕としては安心して身を委ねられますし、また共演者の皆さんが本当に素敵な方ばかり。どんな舞台になるかは演出の蓬莱さんにお任せし、僕らはとにかく精一杯、振り切ってお芝居出来たらなと。きっと“演劇の持つ力”というのを、存分に発揮出来る作品になるのではないかと思います。



藤原竜也「どこか自分にも通じる部分を感じます」 舞台『中村仲蔵―歌舞伎王国 下剋上異聞―』で初代中村仲蔵に

取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己



<公演情報>
Sky presents 舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』



脚本:源孝志
演出:蓬莱竜太

出演:
中村仲蔵:藤原竜也
初代市川八百蔵/酒井新左衛門:市原隼人
中村伝蔵:浅香航大
志賀山お俊:尾上紫
中村伝九郎:廣田高志
七代目中村勘三郎/中村任三郎:植本純米
瀬川錦次:古河耕史
五代目市川團十郎ほか:深澤
蕎麦屋の万蔵ほか:斉藤莉生
金井三笑:今井朋彦
コン太夫:池田成志
四代目市川團十郎:髙嶋政宏
ほか

2024年2月6日(火)~2月25日(日)
会場:東京建物Brillia HALL

【ツアー公演詳細】
■広島公演
期間:2024年2月29日(木)~3月1日(金)
会場:広島文化学園HBGホール

■名古屋公演
期間:2024年3月7日(木)~3月10日(日)
会場:御園座

■宮城公演
期間:2024年3月15日(金)~17日(日)
会場:東京エレクトロンホール宮城

■福岡公演
期間:2024年3月22日(金)~24日(日)
会場:キャナルシティ劇場

■大阪公演
期間:2024年3月27日(水)~3月31日(日)
会場:SkyシアターMBS



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/nakamuranakazo2024/



公式サイト:
https://horipro-stage.jp/stage/nakamuranakazo2024/



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