2026年3月上旬、SPAC-静岡県舞台芸術センターがプレス懇談会を実施した。SHIZUOKAせかい演劇祭2026アーティスティック・ディレクターの石神夏希、振付家・ダンサーの下島礼紗、ストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡2026」から振付家・ダンサーの鈴木ユキオ、コミュニケーションディレクターの山口良太が登壇した第1部では、SHIZUOKAせかい演劇祭2026、同時開催のストレンジシード静岡2026の魅力をアピール。
「SHIZUOKAせかい演劇祭2026」メインビジュアル
石神の新作はブラジルにルーツを持つ人々と作る『うなぎの回遊』
今年で開催27年目を迎えるSHIZUOKAせかい演劇祭のキャッチコピーは、“「せかい」はあなたの隣に住んでいる”。SPAC秋のシーズン2025-2026よりアーティスティック・ディレクターとなりSPACの2026年度の年間プログラムに携わる石神がすべてのプログラミングを担うとともに、自身の台本・演出による『うなぎの回遊 Eel Migration』を上演する。一般公募で選ばれた、ブラジルにルーツを持つ静岡在住の4名のキャストとSPACの4名の俳優、スタッフたちとクリエーションを進めているという。
『うなぎの回遊 Eel Migration』(提供:SPAC 撮影:鈴木竜一朗)
「ブラジルにルーツを持つ方たちのエピソードが織り込まれた作品ですが、そこに、謎の多い生態を持つうなぎをフィクションの物語として導入しています。地球規模で旅をしながら生きていくうなぎの姿に、さまざまな理由で海を越え、たくましく生きてこられた方たちの物語を重ねながら作っています」(石神)
下島礼紗が構成・演出・振付を手がける新作『さあ環境に抵抗しよう、死に抵抗しよう。そうさ生に抵抗するのさ、』は、今回の演劇祭でワーク・イン・プログレス公演を行う。ダンスカンパニー・ケダゴロを主宰し、「ダンス」とは「世の中を解釈するためのひとつの手法」という理念のもと、オウム真理教や連合赤軍などの事件に切り込む作品を創作してきたが、今回彼女が向き合うのは、死刑囚として48年もの長きにわたり拘禁され、その後再審無罪判決が確定した袴田巌氏だ。
「袴田さんが生まれ、いまも住んでいらっしゃる静岡でこのような機会をいただき、心して挑ませていただこうと思っています。袴田さんを初めてテレビで拝見した時、袴田さんの歩く姿に、誤解を恐れずに例えるなら、赤ちゃんが初めて立って歩いた時の奇跡、感動のようなものが、ずーっと続いているような凄まじい生命力を感じた。振付をやる中で、俳優やダンサーが歩くことに難しさ、不自然さを感じていましたが、歩行って一体何なんだろうということを、袴田さんの身体を通してやってみたい」(下島)
下島礼紗×SPAC新作ワーク・イン・プログレス『さあ環境に抵抗しよう、死に抵抗しよう。そうさ生に抵抗するのさ、』
下島は支援団体の人々とコンタクトを取り、死刑制度廃止運動の会合に参加するなどリサーチを進める。ともに創作にのぞむのは、歩行などのトレーニングに取り組むSPACの俳優たち。
鈴木は、演劇祭と同時開催のストリートシアターフェスティバル「ストレンジシード静岡2026」のコアプログラムとして上演される『Peace & Quiet』の振付・演出を手がける。2年前に『風景とともに』、昨年は『音のある風景』を上演、ダンサーだけではなく、市民──盲導犬を連れた人や車椅子の人なども参加した。今回は、障がいのあるダンサーが所属するイギリスのStopgap Dance Companyとの国際共同制作作品だが、「いろんな身体がそこにあるということをお見せし、それをきっかけにいろんなことを見る感覚が刺激されていくといいなと思います」と意気込む。なお、鈴木はストレンジシード静岡とSPACが共同で取り組むストリートシアター グローバル人材育成プロジェクト“STRANGE Lab.”の育成対象アーティストでもある。
鈴木ユキオ×Stopgap Dance Company『Peace & Quiet』(撮影:岩本順平)
静岡の公園、市街地、商店街などを舞台に、さまざまなパフォーマンスやワークショップを展開するストレンジシード静岡。コミュニケーションディレクターの山口は、「たまたま通りかかった方が足を止めて不意に見てしまう、出会ってしまう状況を作り、お客さまも一緒に参加しながら鑑賞できるプログラムを意識してプログラミングしています。たとえば2年前に上演した鈴木さんの『風景とともに』では、公園の中で数十名のダンサーの方が簡単な動きのダンスをしながら移動していくと、お客さんがぞろぞろとついていき、そのうちダンサーの動きを真似したりして、出演者との境界線がだんだん曖昧になる。境界線を作らないということを、大事にしてきました」という。気軽な感覚で楽しめるフェスティバルながら、ここでしか味わえない、忘れ難い体験が待っている。
「ストレンジシード静岡2026」ティザービジュアル
海外からの参加作品、BIOTOPE招聘作品にも注目
海外からの参加作品にも期待が寄せられる。そのひとつ、バロ・デヴェルによる『Qui som(キ ソム)?―わたしたちは誰?』をアヴィニョン演劇祭で観た石神は、「現代サーカスという枠を超えた、カテゴライズが難しい作品。路上からテント、劇場へとフィールドを変えながら活動されてきたカンパニーです。
パロ・デヴェル『Qui som(キ ソム?)──わたしたちは誰?』(c) Christophe Raynaud de Lage
また今年は、国際交流基金との共催で東南アジア諸国との舞台芸術における3年間にわたる交流事業「BIOTOPE」が始動する。演劇祭では招聘プログラムとして、テアター・エカマトラによる『マライの虎―ハリマオ』、アイサ・ホクソン、ヴェヌーリ・ペレラ『マジック・メイド』が上演される。
「私自身、過去に東南アジアの舞台芸術に関わり、地域の文脈に根ざした実践から生まれてくる実験的な取り組み、システムに影響を受け、そこに学ぶべき知恵があるのではないかと感じました。『マライの虎』のアルフィアン・サアットさんはシンガポールで大変な人気の劇作家。シンガポールは検閲が厳しく、アルフィアンさんの作品も何度か上演中止に。助成金がカットされ、寄付を募ると、劇場を建てられるくらいものすごくたくさん集まった。ショッピングセンターの中に劇場をお持ちで、人々の生活の中にある劇場創作を実践されています。『マジック・メイド』はアイサ・ホクソンさんとヴェヌーリ・ペレラさんという、フィリピンとスリランカのアーティストですが、アイサさんはアジアのパフォーマンス・メーカーを代表されるようなアーティスト。魔女とメイド、ある意味ケアワーカーと言い換えられる、抑圧されてきた女性の声、身体の記憶を呼び起こすような作品です」。
テアター・エカマトラ『マライの虎―ハリマオ』
アイサ・ホクソン、ヴェヌーリ・ペレラ『マジック・メイド』(photo by Bernie Ng, courtesy of Esplanade)
BIOTOPEでは、東南アジアと日本の劇作家が交流しながら劇作に取り組む「劇作家のためのキャンプ」を展開するが、日本からの西尾佳織、山田カイルを含む7人が参加、最終的には2028年の演劇祭でリーディング公演として発表する。石神は「これから東南アジアと日本の間のネットワークのハブになっていただけるような方を選んでいます。この方たちがホストとなって企画が立ち上がるとか、お互いを呼び合う公演が実現する可能性があるのではないか」と未来を見据える。
SPACは壮大な社会実験。これからも続いていく必要がある
第2部ではまず、SHIZUOKAせかい演劇祭で16年ぶりに上演される『王女メデイア』について、台本・演出の宮城聰が上演への思いを明かした。
「人間はかなりダメダメだけれど、でも、もしかしたらちょっと捨てたもんじゃないところもあるのかもしれないぞ、と最後に思ってもらえるような芝居にしたくて作りました」(宮城)
初演は1999年。宮城は、「一番近いところにいる自分という途方もない他者と出会わねば、全面的に生きられないのではないか、という気がしています。一番側にいる一番の他者と出会うには、僕はむしろ、あからさまな他者に出会うことがきっかけになると考えてきました。例えば、座禅。思いきり非日常を設定し、その扉を開けることによって、最終的には自分という一番の他者に出会えるんじゃないか、というのが僕の演劇観でした」と振り返り、2026年のいま、あらためて『王女メディア』が私たちにもたらす“出会い”を予感させた。
『王女メディア』(c)SPAC photo by Uchida Takuma
その後、SPAC秋のシーズン2026-2027のラインアップについて石神が説明。昨年度の実績、手応えを振り返りつつ、引き続き“きょうを生きるあなたとわたしのための演劇”というメッセージのもと、『伊豆の踊子』の再演と、『ニホンジン』、『星の王子さま』というふたつの新作を上演する。
多田淳之介が川端康成の代表作を舞台化した『伊豆の踊り子』は、2023年の初演ののち下田や浜松、沼津などでも上演、SPACでの演劇体験がない観客にも幅広く届けている。オスカール・ナカザトの小説をもとに瀬戸山美咲が創作する『ニホンジン』は、日系ブラジル人家族の100年にわたるドラマを描く。『うなぎの回遊』のリサーチの中で生まれた企画だと石神はいうが、「日本とブラジルの間の関係、移民の歴史というものも、しっかり扱っていきたい」。『星の王子さま』の構成・演出・美術を手がけるのは、静岡生まれの深沢襟。深沢は宮城が率いたク・ナウカ シアターカンパニーに参加、演出、舞台美術を学び、SPACで舞台美術を担ってきた。石神は「いろいろな方が一緒に観ることができる作品、あるいは劇場をどうやったら開いていくことができるのかということを、今回のクリエーションを通じて取り組んでいきましょう、と企画しています」と明かした。
その後の質疑応答では、劇場やこれからのSPACについての話題も。宮城は、「不思議なことですが、富士山を醜いという人はあまりいない。育った文化、環境によって、あんなもの全然美とは思えないという人がいてもよさそうなのに。美というものは、いま、分断を防ぐわずかな手段のひとつだと思います。美を見るという幸福感を、一部の人だけが享受するのではなく、たくさんの人でいっぺんに共有する。それがフェスティバル、祭りということなのかなというふうに考えています」と発言。
取材・文:加藤智子
関連リンク
SPAC公式サイト:
https://spac.or.jp
「SHIZUOKAせかい演劇祭」公式サイト:
https://festival-shizuoka.jp
「ストレンジシード静岡 2026」公式サイト:
https://strangeseed.info

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