
ハリソン・フォード主演の大ヒットシリーズの第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』がついに公開! インディの因縁の宿敵を演じたマッツ・ミケルセンに、ハリソン・フォードとの撮影秘話を聞いた。(トップ画像:©️2022 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)
「インディ」シリーズは個性的でスペシャル
マッツ・ミケルセン(左)は冷酷な物理学者ユルゲンを演じた
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──『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)に続き、またしても大人気シリーズに出演ですね。
そうなんだよ。
──1981年から続いている長寿のシリーズでもあります。一番印象的だったエピソードは?
みんな同じだと思うんだが、やはり1作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)だよ。劇場で見て完全に圧倒されたのをよく憶えている。ストーリーが面白く、アクションも素晴らしく、キャラクターが魅力的。しかも、今までに見たことがない映画だった。同世代の人間で、この作品に影響を受けた人はとても多いと思うね。

80歳とは思えないアクションを披露したインディ・ジョーンズ
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──『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)の脚本を初めて読んだときはどういう印象を?
オファーをもらったあと、zoomでミーティングをしたんだ。そのときに物語については聞いていて、とても『インディ』シリーズっぽいと思っていた。さらに送ってもらった脚本を読み、言うまでもなくとても気に入り「さあ! やろうぜ」ということになった。
このシリーズは個性的でスペシャルだ。脚本もそういうものじゃなきゃいけない。今回は第二次大戦中が舞台でナチが出てくるなど、1作目と時代が被るところがあるんだが、それでもコピーにはなっていない。ちゃんと独自のスタイルがあった。
いや、感動的ですらあったし、心が温かくなってしまったくらいで。インディらしさを踏まえつつ、独自のスタイルもある。ジェームズ・マンゴールド監督(『17歳のカルテ』、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、『フォードVSフェラーリ』)だからこその脚本だと思ったよ。
──今回あなたが演じたのは元ナチの科学者ユルゲン・フォラー役。インディ・ジョーンズの前に立ちふさがるヴィランです。彼を演じる上で気をつけたことは?
こういう作品でヴィランがマストなことは理解している。私はヴィラン・サイドからアプローチをし、彼がどういう物語を抱えているのか? 夢は? 野心は? 第三者から見れば恐ろしい人物かもしれないが、彼には彼の理屈があり解釈がある。そこを理解して演じるのが私のやり方だ。
今回フォラーを演じる上で、私がもっとも重要視したのは彼のイデオロギーなどではなく、科学への情熱だった。その情熱によって、世界を自分が正しいと思っている方向へと導こうとしているんだ。そういう意味ではインディと重なるんだよ。彼もまた生涯を考古学に捧げた人間だから。
現場を和ませてくれたハリソンのジョーク

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──そのインディを長年演じている、このシリーズの大先輩ハリソン・フォードとの共演はいかがでしたか?
私のロサンゼルスの家とハリソンの家は近くて、あるとき道端でばったり会ったんだ。彼は私にこう言ったよ。「ヘイ! ナチ」って。それも大きな声で! 私は「ハリソン、それは映画の中だけだろ? こんなところで大声で言わないでくれよ」って(笑)。
そういうユーモアをもっている人で、現場でも大きなシーンに取りかかる前は「ヘマするなよ」と言われていた。私はハリソンのそういうジョークのセンスが好きだよ。若い人が多い現場で、彼はジョークを言ってみんなを和ませてくれたんだ。
──このシリーズの特徴のひとつに“世界を股にかける大冒険”があります。撮影でもいろんな土地に行ったと思いますが、印象的だったのは?
撮影の大半はロンドンやグラスゴーだったが、モロッコやシチリア島にも行かせてもらった。シチリアは美しい島なんだが、憶えているのはその島についてじゃなくてハリソンのことだ。夜間撮影が行われ、朝の5時に終了したんだが、何とハリソンはそれから自転車で50km走ったというんだ。
私は「正気じゃない!」と思ったよ。一方で、ハリソンはその場にいた私たち全員に、自分自身のことを「情けない」と思わせてしまった。いや、本当は彼のように、もっと鍛えなきゃいけないんだけどね(笑)。

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──あなたは、ヴィランをとても魅力的に演じる役者です。そういうあなたがいいと思うヴィランがいれば教えてください。
クラシックなヴィラン・キャラクターでいうとドラキュラ伯爵だろうか。彼はとても興味深い。あとはハンニバル・レクターだ。
キャラクターではなく役者でいうと、私はピーター・ローレが演じるヴィランがとても好きなんだ。彼のヴィランは哀れで、見ていて胸が痛くなるほどだった。フリッツ・ラング監督の『M』(1931)のローレは素晴らしいよ。
──著名な映画人と仕事をしていますが、是非とも一緒にやってみたいという映画人がいれば教えてください。
才能豊かな新人も次々と出てきていて、そういう人たちをまだちゃんと把握できていなんだけど、是非となるとマーティン・スコセッシ監督になるかな。私は彼の作品が大好きで、若い頃からずっと追いかけていた。彼とは何度も会ったことがあるとはいえ、まだ仕事はしていないんだ。もし彼からオファーをもらえば一も二もなく駆けつけるよ。
俳優だと、スコセッシの映画に出ていた(ロバート・)デ・ニーロやハーベイ・カイテルになる。あとはメリル・ストリープも素晴らしい役者だから是非とも共演してみたいね。

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取材・文/渡辺麻紀
マッツ・ミケルセン
1965年デンマーク、コペンハーゲン生まれ。体操選手からダンサーを経て役者になる。母国でブレイクしたのは、麻薬の売人に扮したバイオレント映画『プッシャー』3部作(1996~2005)。世界的に注目されたのは大ヒットシリーズ『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)の悪役だった。デンマーク映画『偽りなき者』(2012)の演技でカンヌ国際映画祭主演男優賞に輝き、アカデミー国際長編映画賞を受賞したデンマーク映画『アナザーラウンド』(2020)では主人公の高校教師を演じている。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)では、前作までジョニー・デップが演じていたグリンデルバルド役を引き継ぎ話題となった。デンマークとハリウッドで活躍を続けている個性派アクター。
『インディ・ジョーンズと運命の炎』(2023)Indiana Jones and the Dial of Destiny 上映時間:2時間34分/アメリカ

ハリソン・フォード演じる大ヒットシリーズ「インディ・ジョーンズ」がこの夏、最後にして、最大の冒険へ。“人類の歴史を変える力”を持つ究極の秘宝《運命のダイヤル》を巡り、考古学者にして冒険家のインディが、因縁の宿敵、元ナチスの科学者フォラーと全世界を股にかけて陸・海・空と全方位で争奪戦を繰り広げる! 巨匠ジョン・ウィリアムズのおなじみのテーマ曲に乗せて、インディ・ジョーンズと共に映画館で壮大な冒険を体験する究極のアクション・アドベンチャーの幕が上がる―─。
監督 :ジェームズ・マンゴールド
製作総指揮 :スティーブン・スピルバーグ, ジョージ・ルーカス
音楽 :ジョン・ウィリアムズ
キャスト:ハリソン・フォード,、フィービー・ウォーラー=ブリッジ。アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、マッツ・ミケルセン
2023年6月30日(金)より全国劇場にて公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/indianajones-dial
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