
2023年度(1月~12月)に反響の大きかったビジネス記事ベスト5をお届けする。第3位は、グレートリセットに関するインタビュー記事だった(初公開日:2023年4月18日)。
2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「ビジネス記事ベスト5」第3位の、2024年問題となっているグレートリセットを解説した記事だ。(初公開日:2023年4月18日。記事は公開日の状況。ご注意ください)
実体経済が強いにも関わらず、マーケットが弱気という不思議

――2022年10月にNYダウは2万8000ドルに下落しましたが、その後盛り返して3万3000ドル台に復帰しています。実際に現在の米国の景気はよいのでしょうか。それとも米国の経済メディアが示すように、リセッションの手前にあるのでしょうか?
岩永憲治(以下同) 現在のアメリカは物価の上昇が止まらない。だから金利を上げなくてはいけない。しかし、金利が上がれば株価が暴落する。この3つを一度に解決できるのが戦時経済の到来なのですが、2022年には、おあつらえ向きにロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。
それ以前には、2020年から始まったコロナ禍の下、米国の医療業界は笑いが止まらぬほど潤いました。米国経済は大づかみに言うと2つの柱で成り立っています。
そして金利が上がり、物価も上がり、米国経済がリセッション(景気後退)の入り口に立たされたと経済メディアが騒ぎ出した段階で、タイムリーにウクライナを巡る戦端が開かれた。
戦時経済が米国に〝有利〟に働くのは、議会で予算がすんなりと通ることです。案の定、次々と新たな軍事予算案が通っています。ドルの輪転機が猛烈に回っているのに対して、マーケットのセンチメント(感情)はいたって弱気です。
しかし、現実にはヘッジファンドがいくら売りに回っても、裾野がきわめて広い軍産複合体関連が潤ってきていることから、実体経済は強いわけです。米国のGDPの底堅さがそれを表しています。
さらにそうした状況を補強する格好になったのが、S&Pが発表した3月のPMI(米総合購買担当者景気指数)でした。これは購買者から見た米国の景気を表す指数のことで、速報値で53.3と10ヵ月ぶりの高水準となりました。米国の実体経済が強いにも関わらず、マーケットが弱気。これが現状です。
ところで、2023年の第2四半期が始まりました。懐疑的な相場の動きを、私はこう予測しています。これまでと同様に、NYダウは2万8000ドルから3万4000ドルまでスクイーズされる。つまり買い戻されるでしょう。3万ドル、3万1000ドルまで売りまくった連中は、3万3000ドル、3万4000ドルで買わされるということです。
第2四半期において、NYダウはじわりと上昇していくはずです。ただし、本格的に伸び始めるのは第3四半期だと、私は踏んでいます。理由を少しだけ明かしましょうか。キーワードは、3月21日の岸田文雄首相のウクライナ電撃訪問です。これはウクライナとロシアの手打ちがすでになされている可能性が限りなく高いことを示しています。
破綻した金融機関には共通項があった

――2023年にはグレートリセットの前ぶれのような事象が起きてくると予測されていますが、実際にそれはどんなことからスタートするのでしょうか?
今回のシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行の経営破綻がその前ぶれと考えていいと思います。2008年9月に起きたリーマン・ショックのときも、その前年にベアスターンズ証券などが破綻しており、そのパターンを踏襲しているように見えます。
加えて、クレディスイスが実質破綻し、UBSに買収されることになりました。ただ、クレディスイスはもともとリーマンブラザースの元社員の多くが転出、マフィアのマネーロンダリングの幇助などで金融当局からペナルティを食らっていたほどの体たらくで、株価は2ユーロほど。つまり、いつ潰れてもおかしくはなかったのです。
ちなみにFTX、仮想通貨、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行の破綻には、ある共通項が存在していました。それは、そのすべてが中国資本と密接に絡んでいたのです。つまり米国はそれを許さなかったということです。
クレディスイスのバックボーンは中東各国の中央銀行であり、中東のオイルマネーです。もうピンとこられた人もいるでしょうが、中東のオイルマネーは、大株主としてクレディスイスに莫大なマネーを入れていて、それが吹っ飛んでしまった。手持ち債券を無価値にされ、株価は暴落、UBSに半値で買収されたのですから、中東各国の中央銀行は大損を被ったわけです。
これに繋がるのが今年1月に開催されたダボス会議です。1973年の石油危機以降、中東の石油の取引はドルのみで行うペトロダラー制でした。同会議の席で中国側は「人民元を石油取引の基軸通貨にしたい」と発言しました。
この一件が、米国が中国資本と繋がる銀行、組織を破綻させ、クレディスイスを窮地に追いやり、中国と中東各国の資本を大きく棄損させた真因だと私は見ています。
写真/shutterstock
金融暴落! グレートリセットに備えよ
岩永憲治

2023年3月24日発売
1,870円(税込)
四六判/288ページ
978-4-08-786139-6
もうすぐリーマン・ショック級の金融危機が起きる!?元敏腕トレーダーが近未来の経済危機を予測し、潮目の見方を指南!
リーマン・ショックから15年。コロナ禍やウクライナ戦争で世界の情勢も変わり、それまでのグローバル経済は立ち行かなくなった。最大の問題は世界的なインフレが止まらないこと!世界中にお金があふれ、生産地と消費地の間のいたるところでボトルネックが発生した結果だ。2022年からアメリカは金融を正常化しようとして急速な金利の引き上げを行っているが、その体制下で新たな金融危機が起こる可能性が飛躍的に高まっている。(2023年3月半ばにも、アメリカではIT系の投資に積極的だった3つの銀行が破綻し、米国財務省の即断の政策により金融危機が未然に防がれた。)
そんな予断を許さない情勢のなか【次なる史上最大の金融危機が2024年末前後に起こるであろう】と予測する。既に経済不況に突入したという意見もあるが、リーマン・ショック後の為替変動をいち早く予想した著者は、もう一度バブルの最後の吹き上げが起こり、2024年の大統領選の終わるころには米国経済においては株価が上がって景気も良くなったというユーフォリア状態に陥るという。そして誰もが予測もしなかった状況で反転し、最終的には1929年の大恐慌やリーマン・ショックを超える危機が来ると言う。
その兆候はいつ、どんな形で現れるのか?過去のバブルとその崩壊の歴史を紐解きつつ、トレーダー時代に培った「潮目の読み方」を披露する。
自衛隊での訓練経験を持ち、外資系金融機関で様々なキャリアを経た著者は、独自の情報収集力に優れ、危機管理意識も卓越している。そんな著者が日本人の誰もがこれからの困難な時代に自分の金融資産を守り生き抜くために是非とも読んでほしいと、渾身の思いで書いたデビュー作である。