電撃解散の和牛・水田「今でも漫才をする前は緊張します」…解散経験者の元ジャリズム・山下にだけ語っていた“望ましんじ”な「漫才に対する姿勢」とは

「漫才に対する姿勢の違いが目立つようになりました」とコメントを発表し、電撃解散することになったお笑いコンビ和牛」。自身も2度のコンビ解散経験を持つ元ジャリズム・山下しげのりことインタビューマン山下が、親交のある水田信二さんとのエピソードとともに振り返る。

弁当の食べ方ひとつで腹が立つこともある

水田信二さんと川西賢志郎さんによるお笑いコンビ「和牛」が、2024年3月末をもって解散することになりました。

M-1グランプリ』(ABC)で3年連続準優勝という実績を持つ、誰もが認める実力派漫才師の突然の解散とあって、各方面から驚きの声が上がっています。

筆者は和牛の漫才が大好きで、おふたりをインタビュー取材したり、『和牛のモーモーラジオ』(文化放送)にゲストで呼んでもらったりするなど、日ごろからたいへんお世話になっていました。

かつて「ジャリズム」というコンビで2度の解散を筆者は経験しています。コンビを長く続けていると、弁当の食べ方ひとつにしても腹が立つことがあるくらいです。

個人的には、さまぁ~ず三村マサカズさんがX(旧Twitter)で投稿した<和牛。解散か。もったいない。どっちもどっかで堪忍袋の尾が切れたんだろうな。コンビは許すことが続ける秘訣でもあるからなぁ。>という言葉にすごく共感できました。

35年もの長きにわたってコンビを続けていらっしゃる三村さんだからこそ、つぶやける言葉です。

ほかにも芸人仲間からSNSやメディアを通してコメントがたくさん寄せられています。

吉本興業の養成所「NSC大阪校」で和牛の1期先輩にあたるプラスマイナス・岩橋良昌さんは<和牛は僕達がなれなかった化け物漫才コンビ。その才能に憧れと、羨ましさと、少しの嫉妬もありました。長い間本当にお疲れ様でした。また個々で絡むことあると思うのでおもいっきり仕事しよう!>とX(旧Twitter)で投稿していました。

爆笑問題太田光さんはご自身のラジオ番組『JUNK爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)の冒頭で<いや~まさか和牛がさ。岸田(文雄)さんより先に解散するとは思わなかった>と太田さんらしく、笑いを交えて心境を語っていました。

2015年から2019年まで5年連続で「M-1グランプリ」の決勝に進出した和牛の漫才を、審査員として間近で見ていたダウンタウン松本人志さんはX(旧Twitter)で<2人とも実力あるから大丈夫やー>と一言。この言葉は芸人全員の総意といっても過言ではないと思います。

解散前に語っていた「漫才に対する姿勢」

昨年、筆者は『まいにち、楽しんじ! 和牛・水田信二の日めくりカレンダー』の制作に携わりましたが、その打ち合わせで水田さんに感心させられたことがありました。

当日は、水田さんの持ちギャグ「おいしんじ」にかけた「〇〇しんじ」というワードを考える打ち合わせでした。水田さんは事前に「嬉しんじ」「素晴らしんじ」「気難しんじ」「わざとらしんじ」といったワードを60個以上も考えてきてくれたのです。

そのアイデアをもとに「あっちにもこっちにも気を遣いすぎると苦しんじ」といった水田さんの“繊細人生訓”や“屁理屈ポジティブ語録”をまとめていったのですが、水田さんは妥協することなくひとつひとつ丁寧に言葉を紡ぎ出し、制作時間は6時間にも及びました。

その打ち合わせのなかで、水田さんは「漫才に対する姿勢」について話してくれました。

「今でも漫才をする前は緊張します。解決方法は練習しかありません。ちゃんと練習できていれば、間違えるかもしれないという不安は薄れるけど、本番でウケるとは限りません。

かといって、『どうなってもいいや』とまったく緊張しないのは投げやりなだけでよくない。

緊張を怖がらず、もっとポジティブにとらえてもいいんじゃないかな。緊張するということは一生懸命に向き合っていることの表れですから。

緊張はなくならない。だから、『緊張を怖がらない』という心構えが“望ましんじ”だと思いますよ」


今後、完成度が高い緻密な和牛の漫才が見られなくなってしまうのは非常に残念です。しかし、また新たなカタチで個々のお笑いが見られることを楽しみに待ちたいと思います。

電撃解散の和牛・水田「今でも漫才をする前は緊張します」…解散経験者の元ジャリズム・山下にだけ語っていた“望ましんじ”な「漫才に対する姿勢」とは

取材・文/インタビューマン山下