「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

2023年で創刊60周年を迎えた集英社の少女マンガ誌「マーガレット」と「別冊マーガレット」。60周年を記念して、少女マンガの名作30作品に登場するカップルたちにピッタリの物件を提案するボードゲーム『同棲不動産』が発売される。「少女マンガの可能性をもっと広げたい」という思いで企画を発案した、別冊マーガレット編集部の畠山葵氏に話を聞いた。

集英社の関連会社でゲーム関連事業を展開する集英社ゲームズが手掛ける“マンガがもっと楽しくなる体験を届ける”ボードゲームのブランド「マンガボドゲ」と2023年で創刊60周年を迎えた「マーガレット」「別冊マーガレット」がタッグを組んだボードゲーム『同棲不動産』が12月21日に発売される。

本ゲームには『花より男子』(神尾葉子・著)『君に届け』(椎名軽穂・著)『メイちゃんの執事』(宮城理子・著)など、2誌を代表する不朽の名作をはじめ、現在2誌で連載中の作品など30作品のカップルたちが登場する。

各作品の漫画家により新たに執筆された各カップルの「お客様プロフィール」の存在も、発表されるやすでに話題となっているが、そもそもなぜ少女マンガが作品という垣根を越えたボードゲームになったのか。

少女マンガはグッズやファンブックが多くないからこそ、形に残るものを

――今回のボードゲーム『同棲不動産』の企画は、編集の畠山さんの提案から始動したとお聞きしました。キッカケはなんだったのでしょうか?

私はもともと入社2年目の秋までは別冊マーガレット編集部、その後でマーガレット編集部に異動になり、昨年の秋にまた別冊マーガレット編集部に戻ってきました。(現在、入社7年目)

そのタイミングで60周年企画の案を会議で出すことになったのですが、自分にしかできないようなことがないかと考えたときに「『マーガレット』と『別マ(別冊マーガレット)』を横断した企画がしたい!」と思ったんです。

あと、少女マンガのファンではない人に、もっと少女マンガの魅力を知ってもらいたい気持ちがあったのも大きいです。そこで何か「ゲーム性」があれば、たとえマンガを知らなくても、誰でも楽しめるものになるんじゃないかと思ったのがキッカケでしたね。

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

別冊マーガレット編集部の畠山葵氏

――なぜアプリやネットが全盛期の時代に、ボードゲームにしたのでしょうか?

少女マンガはグッズやファンブックがまだまだ多くないということをつねづね感じていて…原画展などでグッズが販売されることはあるのですが、ふだんはグッズ類がそこまで販売されることはなかなかないので、絶対に「形に残るものにしたい」と思ったんです。

そこでたまたま私がボドゲ(ボードゲーム)を好きだったこと、そして集英社ゲームズによる「マンガボドゲ」のブランドがあったこと、すべてがピッタリとハマりました。

『同棲不動産』ローンチPV

――『同棲不動産』のボードゲームは、作品のキャラたちに同棲するお家を提案するゲームになっていますが、このテーマ自体はどのように決めたのでしょうか?

そもそも少女マンガの制作背景で行う打ち合わせは、「この2人ってこういうことしそうだよね」とか、「このシチュエーションだとこういう服着るよね」とか、作家さんと妄想の繰り返しだと感じることも多くて…。

その妄想を広げて作品にして、読者の心を揺さぶるところが少女マンガの醍醐味・魅力なので、そういうマンガのおもしろさの一部を伝えられるようにしたかったのもあります。

また、例えば推しのアイドルや、好きなキャラクターについての感想や妄想を語り合うのが好きな人同士がおしゃべりするような感覚で楽しんでもらえるゲームにしたかったんです。

物件を提案するゲーム自体もそもそもなかったのと、仮に作品を知らなくても楽しめるようなゲーム性を持たせられるテーマだったので、集英社ゲームズさんからゲーム内容のご提案をいただいてからはわりと「即決!」という感じでした!

パッケージやカードになっている作品のカラーの仕上がりにこだわり

――創刊60周年を迎えた「マーガレット」「別冊マーガレット」、そして歴代の名作から2誌で連載中の作品までが参加しているこのゲームですが、雑誌を超えたコラボは大変ではなかったでしょうか?

以前は「マーガレット」や「別マ」で描いていて、今は「ココハナ(cocohana)」で描いてらっしゃる作家さんもいらっしゃるのですが、今回そういった方の作品もラインナップに加えさせていただいたので、何度も確認にご協力いただいて…。時間やタイミングの兼ね合いで大変なこともありました。

また、過去の作品だけではなく2誌で連載中の作品からもカップルとして結ばれている作品をピックアップする必要があり、企画段階~発売までの連載状況を鑑みなければいけないと思っていたので…そういった点での大変さもありましたね。

でも、60周年という歴史の重みと記念といううしろ盾があったおかげで、多くの作家さんからご協力いただけて、本当にありがたかったです。

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

――では、1番大変だった部分はどこでしょうか?

パッケージやカードになっている作品の色校(印刷の仕上がりが表現したいイメージを再現できているか、色の認識が違っていないか)をチェックするのが大変でした。

作品ごとに作家さんが大事にしているテーマやイメージがあるので、その調整がすごく難しく、古い作品だと使用したイラストの見本になるものも少ない状態で…。

でも、たくさんの方にご協力いただき何度も校正した分、自信を持って皆さんにお届けできるクオリティのカードになったと思います。

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

参加作品タイトル:アオハライド / 悪魔で候 / 悪魔とラブソング / うちの弟どもがすみません / オオカミ少女と黒王子 /俺物語‼︎/ 学校のおじかん / 消えた初恋 / 君に届け / 君に届け番外編~運命の人~ / 高校デビュー / サクラ、サク。 / シンデレラ クロゼット / センセイ君主 / 太陽よりも眩しい星 / 月のお気に召すまま / 椿町ロンリープラネット / 虹色デイズ / 猫と私の金曜日 / 花より男子 / ハニー / パフェちっく! / ピンクとハバネロ / ふたりで恋をする理由 / 僕に花のメランコリー / マイルノビッチ / みにあまる彼氏 / メイちゃんの執事 / ラブ★コン / ReReハロ

――1つ気になったのは「同棲」というキーワードですが、原作の中では同棲していない作品もあるかと思います。作中のキャラクターが一線を超えたことを想像させるという、「原作を越えてしまう」という意味に取られるのではないかと思いましたが…

そこは少し迷ったポイントでもありますね、原作ではカップルになる恋愛模様までを描いただけの作品も多くあるので。「結婚している設定?」という疑問だったり、「高校生なのに同棲なんて」と感じる人もいるかと思います。

しかし、先ほど申し上げたように「作品を知らなくても楽しんでもらいたい」という気持ちと、友だちとワイワイ推しについてや、好きなものを語ることを楽しんでもらいたいので「あくまでも妄想では…」ということを踏まえて、ゲームを楽しんでもらいたいです。

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

『同棲不動産』では「3人で住む」「同性同士」への部屋探しもある

少女マンガはもっとおもしろくなる

――今回、実際に『同棲不動産』という1つの形になったことで、気づいたことはありますか?

私自身は、これまで少女マンガを作るときに、自分たちの世界の延長線上にキャラクター達がいるということを大切に意識してきました。リアルに不動産検索サービスサイトで物件を探すという行為が、それを具体化していると思いましたし、“現実世界×少女マンガのキャラクター”という発想がゲームになったことで、少女マンガの世界は私たちの世界とつながっている感覚がはっきりしたような、マンガ作りでやりたいことと繋がっている嬉しさがありました。

それから、改めて少女マンガのおもしろさに気づけました。

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性

――少女マンガのおもしろさ、ぜひ教えてください。

もちろん一概にはいえませんが、少女マンガは高校生など学生キャラクターをメインとした、「恋愛や友情」が描かれているものが多いと思うんです。

でも、そういう永遠に魅力を失わない「恋愛や友情」という不変的なテーマの作品にもかかわらず、『同棲不動産』のカップルカードやプロフィール中で、これだけ違いが出せるっていうのは、少女マンガの懐の深さだなと思いました。

それは、少女マンガというジャンルにおいて、キャラクターの組み合わせだったり、演出だったり、とにかく感情を描く丁寧さ、そういったものの中に作家さんたちの個性が発揮されているからだと思うんです。そういう部分を、今一度多くの人に楽しんでいただけたら、うれしいです。

取材・文/於ありさ

『同棲不動産』

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性


舞台は、カップルで行けば必ず最高の家に出会えるという噂から"同棲不動産"と呼ばれる不動産屋。ここに来店するのは、マーガレットと別冊マーガレットで結ばれたカップルたち。カップルたちにぴったりの物件を提案し、最高の同棲ライフを届けられるのは誰でしょうか?
■製品情報:
メーカー希望小売価格:3,300円(税込)
プレイ人数:3~6人
プレイ時間:30分~
対象年齢:13歳以上

■内容物:
・カップルカード:30枚
・エリアカード:30枚
・おうち紹介マニュアル:1枚
・マスターキー:1個
・ルールブック&お客様プロフィール:1冊

■ルール
カップルの特徴が書かれたカードを引いて、来店カップルを決定。暮らしの様子を空想し、スマートフォンの不動産検索サービスなどを使って物件を探します。その後、見つけたお家をおすすめポイントを交えてプレゼン、もっともカップルにふさわしい物件を紹介できた人が勝者です。

■ 「お客様プロフィール」について

「少女マンガはもっとおもしろくなる」若手マンガ編集者が考えた“現実世界×少女マンガの人気カップル”ゲームが広げる“推しと妄想”の可能性


各作品の漫画家により新たに執筆された「お客様プロフィール」には、今まで作中に出てこなかった登場人物のプロフィールの他、今回の『同棲不動産』発売にあたり、各漫画家より「これから同棲する○○と○○に、○○先生からひとこと」というかたちで、カップルに向けたメッセージが寄せられています。
例えば、『君に届け』のページの「これから同棲する爽子と翔太に、椎名先生からひとこと」には「爽子も幸せいっぱいだと思いますが、風早良かったね。毎日夢みたいですね。」というメッセージが記載されています。

企画:株式会社集英社ゲームズ
販売元:株式会社集英社ゲームズ
発売元:株式会社集英社
ゲームデザイン:ミヤザキユウ
クレジット:MARGARET & BETSUMA 60th anniversary