「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

2023年9月末をもって表舞台から去り、無期限活動休止中のインフルエンサー・てんちむ。26歳のとき、豊胸手術を隠してバストアップ下着をプロデュースしていたことで大炎上するも、いち早く“全額自腹返金”を決め、わずか半年で約5億円を完済した。

炎上をものともせずに影響力を増し、見事な復活劇を見せた彼女の、どん底から這い上がる「逆境力」とは。『推される力 推された人間の幸福度』(星天出版)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

プライドも肩書も捨ててからが最強

返金希望者の数かが増え続け、2億2,000万円の貯金を手放しても返金の見通しが立たなかったてんちむは、より多くを稼ぐための最適解を選び続けていた。それがリアルな転落ドキュメンタリーでより多くの人におもしろがられることだった。

転落した生活をここまでさらけ出すのは簡単ではない。知り合いはもちろん、約150万人もの視聴者が「タワマンに住んでいるお金持ちの人気ユーチューバー」というイメージを持っているなかで、ワンルームに引っ越し、ブランド品を売り、ファーストフードを食べる様子を公開するのだ。普通はプライドが邪魔をするだろう。


「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

私生活をさらけ出すことに慣れている人気ユーチューバーでも、てんちむほど投げ打った行動ができる人は見たことがない。

実際、てんちむの新居に撮影で訪れたユーチューバーのほとんどが「えっ、本当に住んでるの?セカンドハウスじゃなくて?」と本気で驚き、疑っていた。今でも「あれはヤラセ」と信じていない人も多いが、特定されるまで本当に住んでいた。(ポストにガムをつっこまれるようになり、身の危険を感じてからはアシスタントのしんちゃんの家で過ごしていた)

炎上前は「クリーンなイメージをつけたい」「キラキラしている自分も見せたい」といった思いもあったが、ユーチューブ活動を再開する前に「プライドは捨てる」と自身に約束した。

「炎上で転落するって、だいぶかっこ悪いじゃないですか。私だって炎上前だったらプライドが勝ってたかもしれないけど、返金額が大きすぎてプライドがどうとか言ってる場合じゃない。



誰に何を言われようが誠意を見せて返金しててんちむを生かすって決めて、自分の全部をユーチューブに売ったときに『よく見られたい』『こういう自分になりたい』みたいな憧れやプライドは全部捨てたんです。

話題になって再生数が伸びて、返金するお金も稼げたからメンタルを保てた部分もあります。仕事第一で生きてきた私にとって、てんちむの死は橋本甜歌の死。お金やプライドより、ファンや信頼を維持しててんちむを生かすほうが大事でした

過去に依存しないから、誰にどう思われてもいい

過去への執着心のなさも、プライドを捨てられる理由だった。

私は過去に依存せず、キャリアを捨てる勇気があるんですよ。小学生で天才てれびくんに出演していたけど、SNSのプロフィールに『元てれび戦士』とは書きたくない。

出演できたのはうれしいけど、小学生時代の肩書きを語り続けるのは過去の栄光にずっとしがみついてる感じがして嫌です。



芸能界を引退するときも周りから『めっちゃ後悔するよ』って散々言われましたけど、未練はありませんでした。自分が築き上げた過去よりも、なりたい自分で今を生きたいし、過去を超えられる自分でいたい。

もったいないからってキャリアを捨てられない人が多いなか、サクッと捨てられるのは自分の強さだと思ってます」

「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

「肩書きに依存しないようにしよう」と思っても肩書きや栄光が大きいほど捨てるのは難しく、なかなかできないものだが、てんちむは「過去の栄光を守ること」に興味がなく「なりたい自分になること」を欲した。

なりたい自分になるためなら、過去の自分が積み重ねてきた実績も肩書きも、丸めてゴミ箱に捨てられる。

自己プロデュース力を生かし「自分をどう見せたらいいか」を理解して行動に移していることを「あざとい」「計算高い」と感じる人もいるだろうが、てんちむのすさまじい行動力の裏には一般女性・橋本甜歌の逃れようがない絶望がある。「求められないよりは求められたほうがいい」という価値観のもと、橋本甜歌を殺してきた。



てんちむは炎上から復帰するにあたり、「てんちむを死なせる」か「橋本甜歌を捨てる」の2択から「橋本甜歌を捨てる」を選んだ。

ユーチューブを引退し、2億2,000万円の貯金を支えに橋本甜歌として暮らす道もあったが、橋本甜歌のプライベートを捨てててんちむの仕事にフルコミットする道を選択したのだ。

当時の心境は、インスタグラムの裏アカウントに綴られている。取材中にポンと送られてきたのだが、読んだ瞬間にぎゅっと心臓を掴まれ、言葉が出なくなった。この文章を読んで、てんちむの炎上対応を「計算高い行動」と言うには代償が大きすぎると思った。

裏アカウントに綴った葛藤…その内容とは?

炎上から2週間、鎮火の空気は微妙。
無人島生活(*1)13日目、ユーチューブ撮影復活。



この炎上のときに私が思っていたのは、てんちむを死なせて全身整形して別人として生きるか、プライベートを全部捨てて仕事に本当に全ての魂を売るかの2択。

きっと両方幸せじゃない。と言うか、この先ずっと幸せじゃない。でも何しても茨の道だから受け入れてあきらめるしかない。


大麻の件(*2)では手マンとか性のことまで言われてんのがマジキモい。おまけに突っ込まれたく無かった体型とか、一部にはどこ脂肪吸引したとか知られる訳だし、知られたくないプライベートが知られてしまうのが本当無理。


詐欺師だの言われてるけど、報道が早く周りすぎたせいで世間の認識は詐欺師だし、今後私と出会う旦那も子供も詐欺師の妻、子供とか言われて可哀想。もし、そうならなくても私が嫌だ。

だから私はてんちむを捨てたい。過去も詮索されず別の誰かとして生きたい。

てんちむを死なせても、てんちむの面影があったり誰かにバレて伝わったら努力が無駄になる。でもうまくいけば、自分が言わない限り誰にも過去がバレないし、第二の人生として生きやすそう。

だけど、一生分暮らせるお金もない。そして返金額は多額。だから別人になってさらに綺麗になって男んちを転々として養われていきたい。

でもまぁ今無人島来てる時点で、てんちむをフル活用する選択を選んだんだけども。

「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

私がユーチューブを続けるには覚悟がいる。今回の炎上で思ったことは、想像以上に私は人に嫌われたくないと思っていたらしい。

今までファンが多くて、ちょっとの誹謗中傷で病んでたり再生回数やコメントの治安でメンタルが日々左右されてたけど、ここまでくると私が恐れてた「嫌われ者」になり、嫌われ者だからいいやと何事も吹っ切れる訳だ。

吹っ切れるまでいけたら、メンタルは安定してる。辞めて別の人生歩むか、バッシングを受け入れながら突き進むかの2択。やることは目に見えてるから、割と簡単。

病んでそうって心配をされるけど、自分でもびっくりするくらい想像以上に冷静。

てんちむと橋本甜歌がいて、今までは5:5~7:3とかのものが、完全に片方死んだ(どっちが死んだかは自分でも分からない)。てんちむを橋本甜歌が操ってる感覚。
でも、ユーチューブを続けるのなら、私には覚悟がいる。

汚い過去が公になった今、人を好きになるのは苦しいからしないし、プライベートは変なプライドが出ちゃうから要らないし、この子になりたいなって憧れを持っても苦しいだけだから辞める。

既に今趣味の漫画を読んで感情移入しても、どうがんばっても自分が悪役側で、見てて罪悪感が沸く。

でも続けるのだ。逆を言えば、今まで私に興味ない人も私に興味を持つのだ。ここまでバッシングされてて、保守的になっていつも通り同じ企画を再開したところでオワコン化するだけだ。

なら、炎上商法と言われるものをやって、今のバッシングも全て生かして、私を死なせててんちむを生かして、道化として生きて最後の金稼ぎをするしかない。

そして上がるときが、次があるのなら、そのときに別人に生まれ変わる。

*1:復帰直後、禊企画として無人島生活をし、撮影していた
*2:プライベートの LINE 画像が流出し、薬物使用疑惑が出ていた

“道化”として生きる…てんちむを続ける覚悟

この文章を読んだとき、あまりにも心を引きずり込まれて「この本を自分で書くのはやめようか」と思った。光と闇のコントラストが強く、抗えない引力がある。本当に絶望しながら生きる覚悟をしたから書ける文章だ。

「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

取材でのてんちむは、目的達成思考の理論を筋道立ててサラサラと答えていたので、こんなに壮絶な葛藤とあきらめの果てに立っていたとは思わなかった。

「プライベートよりも仕事を優先してきたから人の目を気にしなくなった」と答えていたが、「恐れてた『嫌われ者』になり、嫌われ者だからいいやと何事も吹っ切れる」ことでさらに人目を気にしなくなったのだ。

ぜひこの文章を読んだ後に、無人島生活の動画を見てほしい。野生児のようにドロを体に塗り、手づかみで捕まえたバッタを揚げて食べ、漂流してきたウコンの缶を使って小麦粉を練ったチネリ米を作り、木の棒に巻き付けてパンを焼いて食べていたてんちむが、夜ひとりで寝袋にくるまり、こんなことを考えていたのだと思うと—なんだかたまらないのである。

確かに、ときおり伏せる目元には影があった。それでもガシガシと草木を踏みしめ、てんちむを全うしている。

文/てんちむ・秋カヲリ
写真/『推される力 推された人間の幸福度』より出典

『推される力 推された人間の幸福度』

てんちむ

「生き延びるためにプライド捨てた」豊胸炎上後のてんちむ、5億円自腹返金で再起決意も、裏アカに綴った葛藤「道化として生きて最後の金稼ぎをする」

2023年11月18日発売

1,870円(税込)

344ページ

ISBN:

978-4910903040

「私を死なせてでもてんちむを生かす。道化になっても生き抜いてやる」

10歳から29歳まで推され続け、2023年9月に無期限活動休止した天性のインフルエンサー・てんちむの度重なる転落と再起を追い、鬼の自己プロデュースによる【推される力】を彼女の言葉と周囲の人々の言葉で赤裸々に紐解く1冊。
大炎上から半年で5億円を支払った逆転劇の裏側と、活動休止に至る葛藤とは―?

自分をさらけ出して私生活を切り売りし、人気と幸福度に向き合ったてんちむが、29歳最後の日に届けるこれまでの総決算。

「炎上後は『全身整形して別人として生きていきたい』って何度も言ってました」(アシスタント)
「たかが2億2000万円を守って、てんちむ生命を終わらせてたまるか。炎上商法と言われるものをやって、今のバッシングも全て生かして、私を死なせててんちむを生かして、道化として生きて最後の金稼ぎをするしかない」(てんちむ)
「銀座にバケモンが来たな、と思いました。こんなに売上を立てる人は見たことがないですし、たぶん今後も現れないと思います」(クラブ・黒服)
「過程から本番までの見せ方がうまくて、女性は『夢中になってるてんちむを見てると幸せ』ってなるし、男性は『無邪気で愛せる』ってなる。『コイツ、おもろいから追い続けたいな』って思うんです」(友人)
「彼女はどれだけ避けても、投げ出しても、逃げ出しても、その場その場で成功してしまった。家出して上京しても、芸能活動を辞めても、モデルを辞めても、人と向き合わなくても、それでもずっと成功してきた子なんですよね」(元恋人)

――この本を読んだあなたは、私に対してどんな印象を受けるんだろう。強い?自立?自由?破天荒?想像通り?
私はこの本を読んで「とても頑張ってるはずなのに、かわいそうな人」に見えました。この本の取材期間中は、私自身を見直す期間でもありました。(てんちむ)