「女性映画として最高の1本」セクシー女優から反戦運動家…激動の人生をおくるジェーン・フォンダの見るべき作品が『ジュリア』である理由〈戸田奈津子〉
「女性映画として最高の1本」セクシー女優から反戦運動家…激動の人生をおくるジェーン・フォンダの見るべき作品が『ジュリア』である理由〈戸田奈津子〉

字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

女性映画として最高の1本

キャリアが長く作品数も多いジェーン・フォンダは、一時代を築いた女優であり、政治活動家としても有名です。時代の先端をいく意志の強い女性のイメージを持っていましたが、彼女の伝記を読んだら意外にそうでなく、恋に落ちた男性に染まっちゃうみたい。

耽美派だったフランス人監督のロジェ・ヴァディムと結婚した当時はセクシー女優に。社会活動家のトム・ヘイデンを夫とした80年代には反戦運動に傾倒して、その後、CNNの創業者のテッド・ターナーと結婚すると、いかにもなお金持ち夫人に!  父親のヘンリー・フォンダも恋多き俳優として知られていましたが、彼女の私生活も華やかです。

出演作で特に私が好きなのは『ジュリア』(1977)です。『テルマ&ルイーズ』(1991)など女性の友情を描いた作品は他にもたくさんありますが、これは先駆作品ね。



第二次世界大戦の時代をヨーロッパを舞台に、反ナチス運動をする友人のためにお金を届けるストーリーが本当にスリリングでした。時代に翻弄される女の友情物語がとても魅力的に描かれていたし、女性映画として最高の1本だと思います。

『ジュリア』(1977)Julia 上映時間:1時間57分/アメリカ

劇作家として活動するリリアン(ジェーン・フォンダ)の幼なじみジュリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)は、第二次世界大戦前夜、反ナチスの運動に加わっていた。活動資金をジュリアに届けるため、リリアンは危険を覚悟でベルリンへ向かう。

作家リリアン・ヘルマンの回顧録を映画化。第50回アカデミー賞では作品賞を含め11部門にノミネート。

助演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)をはじめ3部門を受賞した。

ジェーン・フォンダ

1937年12月21日生まれ、アメリカ・ニューヨーク出身。父は名優ヘンリー・フォンダ、弟はピーター・フォンダ。12歳のときに母がヘンリーの浮気を苦にして自殺したため、長らく父と確執があった。

モデルとして活躍し、1960年に『のっぽ物語』で映画デビュー。これまで7度のアカデミー主演女優賞にノミネートされ、『コールガール』(1971)、『帰郷』(1978)で同賞を受賞した。

主な出演作は『ひとりぼっちの青春』(1969)『ジュリア』(1977)『チャイナ・シンドローム』(1979)『黄昏』(1981)『モーニングアフター』(1986)など。

『黄昏』では父ヘンリーと和解するために、戯曲の映画化権を取得し製作をお膳立てした。近年は製作総指揮を務めたドラマ『グレイス&フランキー』(2015~2022)に出演。私生活では映画監督のロジェ・ヴァディム、政治活動家のトム・ヘイデン、CNNの創設者テッド・ターナーと結婚・離婚を経験している。

語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢