「売掛やめました」歌舞伎町の中心でデカデカと看板で宣言した有名ホストに「本当に売掛してない?」「斡旋業してない?」「立ちんぼをどう思う?」と聞いてみた
「売掛やめました」歌舞伎町の中心でデカデカと看板で宣言した有名ホストに「本当に売掛してない?」「斡旋業してない?」「立ちんぼをどう思う?」と聞いてみた

男性から1億5000万円以上をだまし取り、ホストクラブへの売掛金に充てていた「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(25)に懲役9年、罰金800万円の有罪判決が下された。一方、東京新宿・歌舞伎町のホストクラブは今年4月から「売掛禁止」を掲げているが、本当なのか? 歌舞伎町の花道通りのホストクラブの広告看板で最も目立つ位置に「売掛 辞めました」という看板を出した名物ホストに話を聞いた。

「売掛 辞めました」の看板を作った意図

売掛が禁止された4月1日から、歌舞伎町の花道通りにデカデカと「売掛 辞めました」という広告看板を出したのは、ホスト歴18年で、インフルエンサーとしても有名な“噂のりっくん”(35歳)と“はっしー”(32歳)の二人だ。

集英社オンラインでは4月13日、一部のホストクラブ内で禁止されている「売掛」が「立替」と名前を変え、横行していることを報じたが、これに対しこの二人が「俺たちの話も聞いてくれ」と“待った”をかけた形だ。そこでホスト側の意見を聞いた。

――集英社オンライン♯1の記事を見て、どう思われたんでしょうか。

はっしー ダメな店と残念すぎるホストのおかげで、僕らの店の看板が記事に掲載されて光栄に思いましたよ。

噂のりっくん(以下、りっくん) 正直言えば僕らの店も会計時に、お客さんが「2、3万円くらい足りない、どうしよう」みたいなときに「じゃあ次回ですね」くらいはあります。でも「立替するからシャンパン入れて」は僕らの店ではしないです。



はっしー いわゆるツケ払いですよね、僕らはしてません。僕らの店(『FILIA』)の他の従業員(ホスト)が立替しているという話も耳に入ってきてません。
 

――「売掛 辞めました」の看板はどういう意図で作られたのでしょうか。

りっくん ホストクラブの売掛については、頂き女子りりちゃんの事件をはじめ、去年から問題が複数浮上して、行政から指摘を受けました。これを受けて売掛はしないとホストクラブ側が宣言して始まった自主規制なので、僕らの店では昨年12月から売掛は一切してないです。あの看板は、ホストクラブ業界全体に「うちらは辞めたぞ、お前らはどうだ?」と煽るような意図で作りました。



はっしー そうね。最初「売掛 まだしてるの?」とか、さらに煽る文言の候補も出てたけど、最終的に「煽りすぎはよくない」という判断からこの文言になりました。

――では今ではお客に売掛をもちかけることはないのでしょうか。

りっくん うちの店やグループ店、全5店舗では昨年12月から一切の売掛を禁止しています。これは門外不出の売上表ですが、売掛金の欄は昨年12月からゼロになっています。

はっしー 僕は昨年12月時点でお客さま数名の売掛の残金が30万円ほど残っていましたが、そのお客さまには「もう払わんでええよ」と伝えました。

禁止になった以上はチャラにしちゃったほうが自分の気持ち的にもクリーンでいいなと思ったので、僕が残金をカブりました。

 頂き女子りりちゃんの事件をどう思うか?

――お二人以外の従業員ホストの残金についてはどうですか?

りっくん 全員の売掛金の残高は把握していませんが、昨年12月の時点で100万円から200万円ほどの残高が残っていた従業員はいたと思います。ただし、それらの残金は昨年のうちに従業員から全額入金済みです。従業員らがそれらをきっちり回収したのか、それともカブったのかまでは把握していません。

はっしー 売掛って結局、カッコ悪いことなので、あまり他の従業員には言わないんですよね。回収できなかったら「力がない」と舐められますしね。

――お二人は昨年12月以前には、高額の売掛をもちかけたことはありますか?

りっくん ホストになって4年目くらいまでは売掛(営業)を100万円単位でバンバンやってましたよ。

でも8年前にYouTubeチャンネルを始めてからは「ホスト業界をよくしていこう」という意識に変わったのでしなくなりました。

はっしー そうですね。自分も始めて1年半くらいまでは、売り上げが立てられずにお客さまに頼るような形で売掛を持ち掛けて回収できず、給料から引かれて生活が苦しい時期がありました。そして翌々月の生活のためにまた売掛を重ねるループにハマったこともあります。でも一方でお客さまから「今日、掛けでいい?」って聞かれたこともあります。売掛というと、みんなホスト側から強要するようなイメージがあるかと思いますが、女性側から言ってくるパターンのほうが多いくらいなんですよ。

 

りっくん 「売掛はホストの醍醐味だ」というお客さまもいるくらいで。結局みんな仕事を頑張る理由が欲しいんですよ。そういう意味では、売掛したがるお客さまを止める勇気や断る勇気もホストには必要だと思う。僕も実は昨年、お客さまからどうしてもと頼まれてした売掛で飛ばれて、数百万円もの自腹を切りました。それで改めて思い直しました。

――売掛問題の象徴ともいえる、頂き女子りりちゃんの事件についてどう思いますか。



りっくん
 返済能力以上の金額をホストに支払わなければならない状況がある限り、同様のケースが他にも多く存在すると思います。そうしたことがひとつでもなくなることを願ってますよ、ほんと。

はっしー 僕もかつて在籍していた店で、間近で9000万円の売掛をしているお客さまを見ました。その女性は飛んで、ホストは永遠にタダ働きさせられていましたね。今もその店にいるかどうかはわかりませんが。売掛はいずれにせよホストもお客さまも苦しめるもの。だからこそ、今のように売掛禁止になったことは、結果的にホストもお客さまを苦しませずに済む、よい環境になるのではと思います。
 

――売掛を払えず風俗や、立ちんぼ、海外で出稼ぎ売春までするお客についてどう思いますか。

りっくん そうまでしてホストクラブに行こうと思う気持ちが、ただただすごいと思います。僕のお客さまも大半は風俗や夜職のかたなので、愚痴を聞くことも多いし、その大変さも察しながら楽しませるのが僕らの仕事だと思っています。

はっしー 海外出稼ぎはここ最近ですごく話題になっていますが、少なくとも10年くらい前から流行っていました。僕のお客さまも5年ほど前に「フィリピン行ってくるねー」と言って飛び立って入管で捕まってましたから。他のホストがどうかは知らないですが、僕のお客さまは突然、自ら海外に行くって方が多かったですね。「これから行こうと思ってる」という子には引き留めたこともありますが、それでも行くお客さまはいます。

「きてね」と言いつつ「簡単にはこないでね」という想いも

――ホストというと、お金を支払えない客に対して風俗を斡旋するイメージがあります。お二人はどうなのでしょうか。

りっくん 少なくとも僕は昼職やってた子を風俗に沈めるような行為はしたことがない。でもお客さまから「風俗で働こうと思ってる」と言われたことはあります。そのときは、別のお客さまから聞いた“風俗で働く大変さ”などを説明しました。
 

はっしー 僕も風俗を勧めたことはないですね。でも風俗のスカウトの方からは山のように「お客さま紹介してください」というようなDMがXにはきますけどね。

りっくん くるね。数年前まではお客さまを一人紹介するにあたりバックはいくらとか、細かく書いたDMがきてたけど、最近は「業務提携したい」と簡潔な内容で来ることが多いです。

――今後、ホストクラブの行末はどうなっていくと思いますか。

はっしー 店も増えたしホストも増えすぎたので、縮小していくでしょうね。僕らとしてはホストクラブって怖いところじゃないよって印象を出しつつ、お客さまを呼び込んでいますが、お客さまのほうでもある程度の自制心と警戒心を持って楽しんでもらいたいな、という思いはあります。

りっくん うん、やっぱり、「きてね」と言いつつ「簡単にはこないでね」というふたつの想いがありますね。ホストがみんな悪いわけじゃない。でも悪いホストがいるのも確かなんで。
 

はっしー まあ、ホストって女に金使わせて簡単に稼げるみたいなイメージが未だについてる職業なので、そりゃゴミが集まっちゃうんですよ。だからこそお客さまのほうでもゴミみたいなホストとそうじゃないとホストの選別の目は持ってほしいというか。

りっくん 自分たちは特別と言いたいわけじゃない。でも自分たちはゴミじゃないことを示すために行動で表しています。

「売掛 辞めました」と声をあげた二人。未だ「売掛」ならぬ「立替」でホストと客が酔いしれる行為が横行するなか、その志は今後も持ち続けてもらいたい。

※「集英社オンライン」では、「ホストクラブの売掛問題」について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班