
TikTokや総合格闘技大会「ブレイキングダウン」への出演をきっかけに、知名度が上がっているドリフトギャル・油浦桃(ゆうら・もも)。ブレイキングダウンで注目が集まった胡桃そら、いーたろとの対戦エピソードをはじめ、「めちゃくちゃお金がかかる」とするドリフトドライバーの厳しさなどついて、詳しく聞いてみた。
「若い世代に改造車やドリ車の魅力を知ってもらいたい」
––––ふだんは何の仕事をされているのですか?
いろいろやっていて、ドリフトドライバーやトラックの運転手、SNSでのインフルエンサー活動、あと「BLACKPEACH」というアパレルブランドもやっています。イベントを主催することもありますね。すべてドリフトの資金のために動いています。
––––油浦桃さんの愛車は何ですか?
車はトヨタ「マークII」と日産「180SX」で、バイクはホンダ「ホークll」です。
––––どんなイベントを主催しているんですか?
車のミーティングイベントを主催しています。テイストにもよりますが、イベントにはドリ車やセダン、改造車、旧車、スポーツカーが多く集まります。あと、自分の車も出していますよ。
––––イベントにはどれくらいの人が来るんですか?
毎年自分のバースデイイベントを開催しているんですけど、そこには毎年100人以上が来ます。
いろんな年齢層の方が参加してくれるんですが、車業界では珍しく、若い女の子やカップルがとくに多いですね。女の子はギャルが多くて、SNSでイベントを知って来てくれる方もたくさんいます。あと、「ブレイキングダウン」や「令和の虎」を見てファンになってくれた方もいますね。
油浦桃が出演した令和の虎(出典:YouTube「令和の虎CHANNEL」より)
––––なぜ若い子に参加してほしいと思うのですか?
若い世代の中で、改造車や旧車、ドリ車などを好きな子が年々減ってきているんですよ。最近は車の免許すら持ってない人が増えてきていますし、旧車やドリ車の価格もどんどん高くなってきていて…。
エコブームでガソリン車が受け入れられづらい時代になってきているので、若い人が減るのはしょうがないのかなとも思うんですけど。
そういった理由もあって、「YouTubeやSNSを通して、若い世代に車の魅力を知ってもらいたい」という思いで発信をしています。
「ブレイキングダウンに出る女の子は、根性ある」
––––ブレイキングダウンに出たきっかけは?
ドリフト活動の資金を集めるために、知名度を上げたくて。ドリフトって、めちゃくちゃお金がかかるんですよ。
––––実際に出場してみて、どうでしたか?
ブレイキングダウンがきっかけで、スポンサーが増えたり、イベントの単価が上がったりしました。おかげで、日産の「180SX」を一括購入できましたね。
––––胡桃そらさんと対戦して、どうでしたか?
あのときは、普通にムカつきましたね。でも正直、彼女が盛り上げてくれなかったら、試合は決まってなかったなと思います。
––––胡桃そらさんには、スパーリング前のオーディションでエクステをむしり取られたんですよね?
エクステをむしり取られてはいないですが、髪の毛は引っ張られました。でも、彼女のようなタイプは嫌いじゃないですし、むしろ結構好き。ブレイキングダウンに出る女の子は、根性あるなって思います。
––––胡桃そらさんが「ブレイキングダウンのスパーリング後に、油浦桃さんから挨拶された。なんで裏で馴れ合いしてくんの?」と言っていたのですが、事実ですか?
裏でどんなやりとりをしたかは、全然覚えてないです。
ほかの子たちはたぶんエンタメ性を重視していたと思うけど、私はドリフトというスポーツ分野でがんばっているから、目立つことで「ドリフトやっている子」っていうのを知ってもらえればよくて。
だから胡桃そらさんに限らず、ブレイキングダウンに出ていた選手とは、誰とも仲よくしないですよ。
––––いーたろさんと対戦してどうでしたか?
女子枠ではいーたろが一番目立っていたので、絶対に対戦したいと思っていました。
実際に対戦してみたら、相手はけっこう疲れていましたね(笑)。オーディションのとき、いーたろは私より10キロ重かったんです。私の体重は45キロぐらいで、向こうはたぶん55キロ。それで「試合までにお互い50キロに揃えてくれ」って言われたんです。
彼女はちゃんと50キロに痩せてくれたんですけど、私は体重を増やすことができず、当日も体重差は少しありました。
体重をクリアしたというのもあって、向こうは余裕だと思っていたのかもしれないです。でも試合では私がめっちゃ連打するから、びっくりしていましたね。それで、すごく疲れていたように見えました。でも、相手のパンチは重くて痛かったですよ。
––––格闘技の経験はあったんですか?
ないです。でも、「ブレイキングタウンの女子の試合は、気持ちで引いたほうが負けなのかな」というのがあって。私は「絶対に気持ちで引かない」という自信があったので、挑戦しました。
––––ふだん、ストリートでケンカをすることは?
そういうことはしないです。
数千万の借金を置いて、父親が蒸発
––––もともとヤンキーだったわけではないんですよね?
ヤンキーではなかったですね。バイクは16歳から乗っているんですが、悪さをした覚えはないです。
強いて言えば、小学校5~6年生のときのクラスが学級崩壊のようになってしまって、みんなで授業中に後ろでお菓子を食べながらオセロで遊んだり、勝手に家に帰ったり、男の子の顔面を踏んづけたりしていました。毎日殴り合いの喧嘩をしているようなクラスでしたね。
––––どんな家庭で育ったんですか?
母子家庭で育ちました。母と8個上の兄、5個上の兄、私の4人暮らしでした。
父親は私が小学校2年生のときに借金を置いて逃げて、そのぶん母親ががんばって育ててくれました。借金は何千万円もあったみたいで、差し押さえが来て、車とか家とか全部持っていかれました。でも、周りにめちゃくちゃ愛されて育ったんで、苦労した記憶は全然ないです。
上の兄は、父親代わりに私たちの面倒をみてくれました。一級建築士免許を持っていて、建築関係の仕事をしているんですが、昔から真面目で、めちゃくちゃ頭がよかったです。家にもお金を入れてくれていましたし、学費や携帯代も全部出してくれていました。だから、マジでずっと感謝していますね。
真ん中の兄は昔めちゃくちゃグレていたんですが、今は会社員をしています。私は2人の兄を足して2で割ったような性格なのかなと。2人とも、私の活動を応援してくれていますよ。
ドリフトにかけた費用は「3年で1500万円超え」
––––ドリフトを始めたきっかけは?
22歳のときにドリフトプロ育成プロジェクトのオーディションを受けたのがきっかけです。プロジェクトでは生き残りゲームみたいなものがあって、勝ち上がって10ヶ月くらい参加し続けました。
ドリフトを始めた最初の年は、お金を捻出するのがキツくて…。ご飯を食べられなかったり、家の電気が止まったりしました。でも、それでもいいから走りたかった。「100円で水を買うのがもったいない。そのお金もガソリン代にしたい」みたいな感じでした。
––––22歳から始めて、すぐにドリフトできるようになるのですか?
私は最初からできたわけじゃなくて、ほかの人よりだいぶ時間がかかったんです。「定常円」という最初のステップがあるんですけど、それができるまでに1~2週間かかりました。1日で習得する人も多いんですが、私はセンスがなかったので。
あと練習量を増やそうと思ったら、それだけお金がかかります。だから、どれくらい早く上達できるかは、私の場合、お金のかけ方次第。資金繰りをがんばる気持ちがないと、なかなか上手くならないと思います。
––––今までドリフトにどれくらいお金を使いましたか?
3年間で1500万円は超えていますね。1回サーキットに行くと、タイヤ代だけで6万円くらい。月4回はサーキットに行くので、タイヤ代だけで月24万円程度はかかっています。
サーキット使用料は、だいたい1回1万円から2万円の間。あと現地に行くための高速代やガソリン代、ドリフトのためのガソリン代…。それから、オイルを毎回替えなきゃいけなくて、その費用も必要。あと車が壊れたら一度に30万円とか…とにかくお金がかかります。
––––プライベートではどういう人と遊びますか?
ギャルっぽい子ですね。ドリフトを始める前は、飲みに行ったり、遊びに行ったりしていたんですけど、ドリフトをがんばるって決めたときに、友だちにLINEで「もう飲み行けない」と送って、遊びに行くのは一切やめました。
私、昔から「好きなことをして生きていきたい」っていうのがあって。そのぶん、ほかの人の何倍もがんばらないといけないと思っているんで、プライベートの時間はなくてもいいです。
––––彼氏はいますか?
いないです。自分の時間をつくるので精一杯なんで。
––––どういう男性がタイプですか?
メンヘラじゃない人。あと、尊敬できる人がいいですね。見た目はあまりこだわらないですけど、やっぱりギャル男っぽいっていうか、昔の『ごくせん」に出てきたような、襟足の長い人が好きです。
––––ギャル友だちとドン・キホーテにたまったりしますか?
たまったりはしないですけど、ドンキは大好きです。週1回は行きますね。ドンキに行くと、ブレイキングダウンやSNSで私のことを知ってくれたギャルやヤンキーにめちゃめちゃ話しかけられますね。
––––最後に、現在の夢を教えてください。
「D1GP」というドリフトの一番上のカテゴリーの大会に出たいです。あと、海外でも活躍していきたい。「ドリフトといえば、油浦桃でしょ」と言われるくらいまで頑張りたいですね。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班