
記録的な猛暑の夏が終わり、秋をほとんど感じないまま、冬が到来した。寒暖差の激しいこの時期、は風邪をひく人も多い。
ビタミンCの持つ効果や摂り方いついて、『間違いだらけの「野菜」の食べ方』(青春出版社)より一部抜粋・再構成してお届けする。
冷凍はスピード勝負と心得る
冷凍に時間がかかると、野菜の栄養や風味が損なわれます。食材はできるだけ薄く、平らになるように並べ、冷凍にかかる時間を短縮しましょう。熱伝導のよい金属製のバットの上に置くと、冷凍スピードがアップします。
なお、自分で冷凍した野菜は3週間を目安に使い切りましょう。調理の際は、市販の冷凍野菜と同様に凍ったまま使ってください。
「ビタミンCをたっぷりとって風邪予防」は俗説
「ビタミンCをたっぷりとると風邪の予防になる」といわれますが、この話には元ネタがあります。
アメリカの化学者ライナス・ポーリング博士は、1970年に『ビタミンCと風邪』という本を出版し、「ビタミンCを大量に飲めば風邪を予防できる」「ビタミンCを大量に飲んでいれば、風邪を引いても回復が早い」と主張しました。これが、「ビタミンCをたっぷりとると風邪の予防になる」という説の元ネタです。
ノーベル賞を2度も受賞したポーリング博士の著作とあって同書は世界じゅうの注目を集め、多くの研究者がポーリング博士の主張を検証しました。すると、ポーリング博士の主張を裏づける結果が得られる一方で、ビタミンCに風邪を予防する効果はないという発表も数多くなされ、事態は長らく混迷を極めました。
ビタミンCは風邪を予防するのかしないのか。この論争に終止符が打たれたのはわりと最近で、2013年に過去70年におよぶ研究を再検討した論文が発表されたのです。
その論文によると、ビタミンCが風邪を予防する効果は、プラセボ(偽薬)を服用して風邪を引く確率を1とした場合、0・97でした。つまり、ビタミンCを摂取したほうが、なにもしないより3%だけ風邪を引く可能性が低くなるというわけです。これにより、ビタミンCには風邪を防ぐ効果はほとんどないと結論づけられました。
ただ、ビタミンCが風邪に対してまったく効果がないかというと、そうともいえないようです。前述の3%という数字は一般市民の場合です。マラソン選手やスキー選手など、強い運動負荷がかかった状態で行われた研究では、ビタミンCを摂取するとプラセボ(偽薬)を服用した場合より風邪を引く確率は0・48、つまり半減するというものでした。
野菜や果物はビタミンCの宝庫
ビタミンCは、皮膚や細胞の材料であるコラーゲンの合成に不可欠な栄養素です。毛細血管や骨、歯などを正常に保つ、日焼けを防ぐ、免疫力を高めるなどの作用もあります。また、その強い抗酸化作用から、がんや動脈硬化の予防効果が期待されています。
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で1日あたりのビタミンC推奨量を15歳以上で100mgと定めていますが、「国民健康・栄養調査(令和4年)」によると、20歳以上男女が1日に摂取しているビタミンCは98・0mgとわずかに足りません。
野菜・果物はビタミンCの宝庫です。野菜をあと一皿、あるいは果物をあと1個食べて、1日あたり100mgのビタミンCを摂取するよう心がけましょう。
なお、喫煙者は非喫煙者に比べてビタミンCの消耗が大きいので、さらに多くとる必要があります。
さらに肥満で糖尿病の方、またその予備軍の方は、糖尿病がない方に比べて代謝異常が亢進し、血中のビタミンC濃度が低下していたという報告があります。ビタミンCは体内で合成されないため、こうした方は適量の野菜・果物を積極的に食べて、食物繊維だけでなくビタミンCをとるようにしましょう。
『間違いだらけの「野菜」の食べ方』(青春出版社)
林芙美(監修)