
広島東洋カープから海外フリーエージェント(FA)を行使してオリックス・バファローズに移籍した九里亜蓮投手(33)の人的補償について、広島は16日、金銭補償を選択したと発表した。
九里に期待される山本由伸の穴埋め
一昨年、リーグ3連覇を果たしたにもかかわらず、昨年はリーグ5位と低迷したオリックスは今オフの戦力補強で九里亜蓮を獲得した。
昨季のオリックスはメジャー移籍した山本由伸の穴を埋められず、その代役候補として期待の高かった山下舜平太、東晃平がそろって怪我で長期離脱。
その影響はチーム全体の成績からも一目瞭然だ。
2023年のオリックスは先発防御率は2.61(リーグ1位)、救援防御率2.93(リーグ3位)、完投数5(リーグ3位)と、山本を筆頭とした圧倒的な先発力でリーグ優勝を果たした。しかし、山本が移籍した昨年のオリックスは先発防御率は2.88(リーグ3位)、救援防御率2.67(リーグ2位)、完投数5(リーグ最下位)となっている。
先発の補強が急務だったオリックスは今オフ、ソフトバンクから国内FA権を行使した石川柊太の争奪戦に参戦。5球団による争奪戦に敗れ、石川はロッテに移籍したが、今オフの補強は九里が正解だったという声が上がる。
「結果的には石川より九里のほうがよかった。今のオリックスはポテンシャルの高い若手投手がゴロゴロいる。ただ昨季は規定投球回に到達した投手が一人もおらず、1年間通して結果を残せるか未知数なので、確実に計算できるタフな先発がほしかった。
そういう意味では、この3年間でセリーグでも5本の指に入るイニングイーターの九里はうってつけの人材だと思う」(スポーツ紙オリックス担当)
九里は昨季まで8年連続で投球回110回以上をクリアし続け、2023年には両リーグ通じて球界トップの投球回を記録している。九里と山本の成績について、山本がメジャー移籍前の2023年度で比較してみると、NPBナンバーワン投手だった山本にも投球回と完投(完封)数では勝っている。
リーグが違うため単純比較はできないが、九里の補強はオリックスのチーム状況に適した補強だったとえいる。
宝の山のオリックス若手よりも広島が守りたかったもの
「現在、広島の支配下枠は68人で残りは2枠。昨オフも同じ支配下枠68人という状況だったが、FA移籍した西川龍馬の人的補償で若手の日髙暖己を獲得した。だが、今季の広島の課題は投手ではなく、野手。獲るなら野手がほしいところだが、オリックスも広島と同じく貧打が課題のチーム。就任3年目で勝負の年を迎える新井貴浩監督にとって是が非でもほしい“即戦力野手”がいなかったのでしょう」(前同)
昨季終盤、首位に立ちながらも9月に大型連敗を喫してチームは最終的に4位に沈んだ。チーム打率.238、本塁打52本はいずれもリーグ最下位。得点415も5位で、慢性的な貧打が課題に挙がっている。さらにオリックスには若手有望株の投手は多数いるが、広島同様に野手の選手層は厚いとはいえない。
「オリックスが上手くプロテクトリストを作ったのでしょう。昨季の広島はシャイナー、レイノルズの両助っ人野手が開幕早々に怪我で離脱して、機能しなかったことも終盤の失速に響いた。
今オフはすでに新外国人野手として、ドミニカ共和国出身のモンテロとファビアンの右打者2人を獲得。ドラフトでは1位で大学生野手の佐々木泰、現役ドラフトではオリックスから2軍打率.318のユーティリティー野手・山足達也を獲得している
「今回、金銭補償を選択したことで、就任3年目を背水の陣で挑む新井監督と広島の今季への本気度が見える。そもそも9月のウソみたいな大型連敗がなければ、優勝していたほどチームの地力はあるので、今季の広島は強いはず」
昨オフは未来への補強を選んだ広島が今オフ選んだ“金銭補償”は、勝負年に懸ける意気込みのあらわれか…。
取材・文/集英社オンライン編集部