
映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで脱力系殺し屋を演じて注目を集めたのち、ドラマ『御上先生』『アポロの歌』、映画『遺書、公開』と話題作に続けて出演。そして今秋に始まる朝ドラ『ばけばけ』ではヒロインに決定と、2025年最注目俳優の髙石あかり。
多弁なスナイパーから寡黙な女子高生まで、振り幅が大きい役をこなす彼女の素顔とは?
“令和の憑依俳優”と呼ばれて
――幅広くいろいろな役をこなされている髙石さんですが、役作りのために実際に映画で使う銃を持ち歩いてみたり、歩き方を意識したりなどされるそうですが、心がけていることはなんですか?
髙石あかり(以下同) 昔は動きから役を知るっていうことをしていたんですが、今はホン(脚本)です。暑がっていたら、暑さに弱いキャラなのかなとか、些細なことでもト書きにしてます。
言葉数が少ないキャラクターだと情報も少ないんですけど、何度も何度も読むと、相手が話している言葉から自分の演じるキャラクターも知れるので、とにかく脚本が教えてくれると思っています。
――幅広い役柄をこなし、しかも役になりきっているので、“令和の憑依俳優”という呼ばれ方もされていますが……。
ちょっと前までは自分を消さなきゃいけないと思っていて、憑依っていうんですか、役に自分が乗っ取られることをよしとしていた時期があったんですけど、いまは役と自分をちゃんと分けています。
「アクション!」の声で役になって、カットの声で自分に戻る。号泣するなど暗いシーンの後はオフになっても引きずりがちなんですけど、それでもちゃんとオンとオフを切り替えて、アクセルの踏み方を少しずつ学んでいるところです。
――今回の映画『ゴーストキラー』では殺された殺し屋の霊が取り憑いて、2人が入れ替わるさまを瞬時に演じていて、すごいなと思いました。
あれは大変でした(笑)。脚本を読んで、これを私1人でやるんだろうかと信じられず、もう一度脚本を読んだら、やっぱり私1人でやるんだと、びっくりで。でも俳優として、こんな楽しい役もなかなかないなと。すごく難しかったけど、結果めちゃめちゃ楽しかったです。
――壁が高いほどやる気が出るタイプですか?
燃えます。
――以前のインタビューでは役に入り込むと自分がなくなると言ってました。
100%感情に身を任せる瞬間は多々ありますし、99%が役だけど、1%自分を残すときもあります。
100%のゾーン状態って楽しいんですよ。コントロールができないので、めちゃめちゃ楽しいんです。「どういうこと?」ってぐらい、勝手に感情が出てくる。ただ、今は少し自分が残っている方が心地いいです。
「苦しいとか辛いっていう感情はすごい贅沢なもの」
――『ベイビーわるきゅーれ』でも突然殺し屋モードになるのが印象的です。あの切り替えがすごいですよね。
自分にもそういう二面性があるんです。自由に大はしゃぎしているときもあれば、物事を俯瞰で見ているときもある。だから、演じやすいのかもしれないです。
あと、普段あまり怒らないんです。怒りの感情が少なめなので、逆に演技だとスッと入っていけるのかもしれないです。
先日、激しく泣くシーンがあって、まわりの人から「重いね辛いね」って言われたんですけど、あたしは全然辛くないんです(笑)。演じてる役と自分はそれくらい違うので。
――気持ちの切り替えはもともと得意なんですか?
めちゃめちゃ得意です。けっこうポジティブなので、嫌なことがあっても、その嫌なことにも絶対意味があると思うし、忘れ物をしても、そのおかげで何かいいことあるかもしれないって思います。
苦しいとか辛いっていう感情はすごい贅沢なもので、喜怒哀楽の全部が大切だと思ってるんです。お芝居しているから、よりそういうふうに感じるんでしょうけど。
――じゃあ、悲しいことがあってもすぐに立ち直るんですね。
逆により自分を追い詰めたりもします。悲しいときに、より悲しくなるように自分を持っていったりして。大きい悲しみって、なかなか生まれないじゃないですか? 年に1回あるかないかなので、貴重ですよね。
わざと辛くなる曲を聞いてみたり、写真を見返したりして、この悲しみはどうなってしまうんだろう? って思いながら。
“朝ドラヒロイン”にときめいた
――ところで、朝ドラは子供の頃からの夢で、小学校の先生とも朝ドラのヒロインになることを約束していたそうですが。
保育園児のときから俳優になりたいって言っていたんです。それを知った小学校の担任の先生が「朝ドラヒロインになったあなたをみたい」って言ってくれて。そのとき、「朝ドラ♡ヒロイン」って自分でときめいて(笑)。それからずっとその言葉が私の中に残っているんです。
実際に撮影が始まっても、朝ドラヒロインっていうキラキラした夢はずっと持っていたいなと思っています。夢が消えちゃうと、苦しくなったときに後悔しそうだから。朝ドラヒロインの夢は持ちながら、俳優として挑むところは挑む、その二つが両立した状態で撮影に臨みたいと思っています。
取材・文/高田秀之 撮影/杉山慶伍