
意識的な集中に頼らず、自然と本の世界に引き込まれていく状態を作り出す読書法である「没入読書」。そのメリットは単に本の内容を理解するだけにとどまらない。
まるでカウンセラーと話ししているように
(4)心の整理ができ、ストレスが軽減できる
本を読むと、心の整理ができ、ストレス軽減ができます。
アメリカのミネソタ大学やイェール大学の研究では、本を読むことでストレス軽減になり、本を読んでいない人に対してストレス耐性が68%も高く、約2年長生きをしたという事例もあります。
没入読書を実践した人からは、「没入することで気分がスッキリした」「読み終わった後の多幸感がすごい」とのご意見をよくいただきます。
理由としては、先に挙げた一般的な読書のストレス軽減効果に加え、実践中のより深い呼吸にもあるでしょうし、没入することでその世界に入ってリラックスするからともいえます。
さらに、本と共鳴し、その本から得た言葉で癒されることも挙げられます。
いままでの読書の常識では、「著者の意見を理解しないといけない」「著者は偉いもので著者は自分より上の存在だ」と思い込んでいる節があります。
けれども、没入読書の前提は「著者と読者は対等」です。
そして、本に共鳴し没入していくと、まるで長年の友人のようにアドバイスをしてくれる感覚になります。
著者が「最近、どんなことに困っている? 私だったらこう考えるけど、アドバイスになるかな」というような、本に書かれている以上のカスタマイズされた答えを、語りかけてくるのが、没入読書の特徴なのです。
まるでカウンセラーと話しているようになり、セラピーにつながります。
人の気持ちがわかるように
(5)コミュニケーション能力が向上する
没入読書を実践することで、人の気持ちがわかるようになってきます。
「人の気持ちが全然わからなかったのに、わかるようになってきて、人間関係がすごくよくなってきた」という声を多くいただきます。
アメリカのスタンフォード大学の准教授ジャミール・ザキは、物語が書かれた本を読むことで、他者に対して思いやりをもつことや共感、共鳴をすることができるようになり、本を読む前よりも、コミュニケーション・スキルがアップしているといいます。
また、アメリカのオハイオ州立大学の心理学者フィリップ・J・マゾッコらの研究によると、LGBTや移民が主人公となる物語を読ませると、LGBTや移民のコミュニティに対する偏見が改善されたといいます。
さらにこのような研究もあります。アメリカのワシントン・アンド・リー大学の認知行動科学教授のダン・ジョンソンによる実験です。
人種差別主義者から攻撃を受けそうになったアラブ系アメリカ人女性に関するフィクションのストーリーを用意しました。
全体の半分のグループAには、「完全なストーリー」を読ませます。
残りの半分のグループBには、「要約版」を読ませます。
要約版は、内容のニュアンスや雰囲気は一緒のものの、感情を揺さぶるシーンや会話などが一切含まれていません。
結果、完全なストーリーを読んだグループAの方が、要約版を読んだグループBよりも、イスラム教徒に対して思いやりをもっていました。偏見の意識も読む前よりも低くなっていました。
完全なストーリーの方が、感情を動かされたことで没入できたと考えられます。
私自身、高校生までずっとひとりよがりの考え方でした。
しかし、大学受験で浪人し、ちょっとした人生の挫折を味わいました。
心からの友だちといえる人がいなかったのです。
人に相談することも苦手でした。
そこで頼ったのが本でした。
「生き方」を学び、仕事に活かす
本を読むと不思議です。
わからなかった人の気持ちが、なんとなく伝わってくるようになりました。
自分のその感覚を確かめようと、「それってこうですか?」と聞いていきました。すると、不思議と私の周りに人が集まる場所ができ、さらにいろいろな人の考えを知ることができる機会が増えていったのです。
苦手だった人間関係も、徐々に改善されていったのでした。
(6)生産性が向上し、仕事力と収入が上がる
本を読むことで、生産力が高まり、仕事力や収入が上がります。
いつの時代も、本を通じて「生き方」を学び、仕事に活かす習慣がありました。
江戸時代であれば、『葉隠』や『経典余師』が読まれました。
昭和には、カッパ・ブックス(光文社の新書レーベル)のような一般向け教養書がありました。
平成以降は、いわゆるビジネス書や専門書がベストセラーになっていきました。
特にビジネス書は、再現性があるスキルやノウハウを学ぶことができます。その再現性があるものを通じて、収入をアップさせることができます。
実際に、年収が高い人ほど、読書をしているという調査結果があります。
2021年、株式会社マイナビが「読書量が多いと年収は高い」説を実証しました。月平均3冊以上の本を読むのは、年収1500万円以上で30・8%と、年収が高い人ほど読書をしているという結果を発表しています。
実際、私が主催するオンラインサロンのメンバーには、年収が何倍にもなった人が大勢います。
ブログコンサルタント、資産ブログマーケッターの北村志麻さんは、究極の没入読書法であるレゾナンスリーディングを学びました。
そこで、『「週4時間」だけ働く。』や『1万円起業』『スーツケース起業家』などの起業系の本を読みまくったそうです。
次第に、会社員としてのマインドだったのが独立マインドに切り替わりました。すると、1年で独立することになり、年収が2割増しに。
このような話は多く寄せられています。
アイデアの創出や物事の理解の助けに
(7)アイデアが湧き、言語化ができるようになる
没入読書をしていると、自然と本と「共鳴関係」になります。
これが通常の読書と大きく違う点です。
共鳴とは、辞書で調べてみるとこう出てきます。
「振動数の等しい発音体を並べて、一方を鳴らすと、他の一方も音を発する現象」
「他の人の考え方や行動に自分も心から同感すること」
では、本とあなたが共鳴状態になるとどうなるでしょう。
著者のアイデアや物語の内容が、あなたの考えていることや悩んでいることと響き合います。
その結果、新たなアイデアを生み出すことができたり、モヤモヤして言葉にならなかったことが言語化できたりするようになります。
さらに、これまでご紹介した「コミュニケーション能力が向上する」や「生産性が向上し、仕事力と収入が上がる」につながってくるのです。
私が主催するオンラインサロンメンバーの実例をご紹介しましょう。
出版社勤務の山川祐樹さんは、「まるでこれまで読んだ本の著者たちと一緒に考えているかのように、アイデアや企画も多様なものが出せるようになりました」と言います。
また、外資系企業勤務の浅見ゆきこさんは、「日本人にはなかなか難しいアメリカの監査基準のルールの意図をくみ取れて、さらに自然に行動に移すことができて、上司に驚かれました」と言います。
このように、アイデアの創出や物事の理解の助けになるのです。
没入読書
渡邊康弘
忙しくても本を読める人がやっていること。
やる気に頼らず、自動的に集中できる本の読み方。
「本の内容が頭の中に入ってこない」
「働きはじめてから、読書に時間が取れなくなった」
近年、本を読みたくても読めなくなった人が多いといいます。
しかし、その理由は“忙しいから”だけではありません。
それは、スマホが身近になったから。
反射的に起こる通知に身を委ねてしまうと、
私たちはその刺激から抜け出せなくなるのです。
スマホの通知音などの刺激から脱し、本に集中できる方法、
それが「没入読書」です。
没入読書の特徴は3つ。
◉やる気や意志力を使わない
◉意識的に集中しようとしない
◉本を読むことに価値があると体に思い込ませる
没入であるフロー状態とは、「目標を設定」したり、
「呼吸を整えたり」するといった具体的な方法で導くことが可能です。
さらに、本の難易度が自分にとってやさしすぎても、
難しすぎても集中が切れてしまいます。
こういった具体的な方法で、
科学的に集中力を自動的に高める方法をお伝えします。
さらに、本書を読みながらすぐに実践できる
「47秒間読書」や「10分間指速読」から、
究極の没入読書である1冊20分で読める
「レゾナンスリーディング」も公開します。
没入する体験は、本を速く、たくさん読めて内容を忘れないことはもちろん、
ストレス軽減やアイデアが湧くといった副次的な効果もあります。
これで、忙しくても、スマホが手元にあっても
本に没入できるようになります。
【目次より】
◎まずは毎日の「47秒読書」で本と付き合いはじめる
◎スマホがあっても集中できる「10分間指速読」
◎読書前に「呼吸を整える」だけでも集中できる
◎【没入読書1】集中力の第一歩は「目標設定」にある
◎【没入読書2】「即時フィードバック」が集中状態を生み出す
◎【没入読書3】「チャレンジ」と「スキルのバランス」で集中が途切れない
◎めんどうだけど没入を生むのに効果的! 読書メモ
◎自己コントロール感を生み出す「読書ノート」
◎書店には「目的」をもって入店すれば失敗しない
◎生成AI時代だからわかった! 天才たちが大事にしていた「問い」