「一個入れると、どんどん増やしたくなるんです」28才インフルエンサーはなぜ全身にタトゥーを入れたのか?
「一個入れると、どんどん増やしたくなるんです」28才インフルエンサーはなぜ全身にタトゥーを入れたのか?

全身に施された色鮮やかなタトゥーは、一目見てかなりのインパクトがあるが、「一つ一つのタトゥーには特に意味はありません」と語るインフルエンサーのにせぽよ。どうやら、タトゥーを入れること自体が、自分が生きる理由になっているという。

彼女がタトゥーにハマったきっかけや生い立ちを聞いた。 

初めて刺青を入れた時

タトゥーを入れようと思ったきっかけは、京都に住んでいたころに働いていたSMバーの影響があったという。

「一度興味本位で友達に連れて行ってもらって、飲んでる間に半分冗談でここで働きたいなーって店のママに言ってみたんです。そしたら、『働きなよ』って簡単な面接だけで働くことになりました。

業務内容は基本的にはバーテンダーで、たまにM女としてショーに出て縛られたり、叩かれたりするのをお客さんに見てもらうことでした。

そこに来てたお客さんの中に、身体改造をしている人がたくさんいて、ベロ(舌)を二つに裂くスプリットタンや体にシリコンなどを埋め込むインプラントをやってる人がいて、なんかすごいなーと思ってたんですが、その中でも一番映えて可愛かったのが刺青でした。

そこからどんどん興味が出てきて自分でも入れてみようと思いました」

最初に入れたタトゥーは右腕の流血を模したタトゥーで、お気に入りは二つ顔があるフリークスの絵だ。

「タトゥーって一個入れると、どんどん増やしたくなるんですよ。空いてるスペースが気持ち悪くなってくるというか。

入れる時も特に深い意味はなく、可愛いから、デザインが気に入ったからという理由で入れてます。

完成形も特に決めてないのでごちゃごちゃになっちゃってますね。でもこういう雑多な感じのほうが好きなんです」

一番痛かったタトゥーは足の脛に入れたゼブラ柄だ。

「練習用のモニターで無料で彫ってくれたんです。

ゼブラ柄がいいなと思ったから入れてもらおうとタトゥースタジオに行ったら、この大きさを1日かけて彫ることになり、10時間以上拘束されました。

脛だから骨が近くてめちゃくちゃ痛くて、終わってラップを巻いて家に帰ろうとしたんですが、痛すぎて歩けないんですよ。

片足を引きずりながらなんとか帰って寝たんですけど、私の寝相が悪かったせいか、ラップが取れちゃってて。履いてたジャージに体液がべっとりついて足にジャージが張りついちゃいました…。

剥がす時にベリベリと音がして皮膚が剥がれて痛すぎて悲鳴がでましたね。色もちょっと落ちちゃったし。

『色の入れ直しをしないか?』ってよく言われるんですが、あの痛みをもう一度味わうのがいやで躊躇してます」

『どっちとヤル?』友達との荒んだ生活 

SMバーで働くまではパパ活などで生計を立てていたという。

「高校の時に仲良くなった子が、出会い系サイトを使ってパパ活してたんです。そこで私もやってみたいとなってお小遣いを稼ぎ始めました。

結局、高校も半年くらいで辞めちゃって、親にも勘当されてホームレス生活をしていました。基本的に生活拠点は出会い系サイトで会った人の家やホテル。

携帯電話も親の同意がないと契約ができなかったので、出会い系サイトで知り合った人に契約してもらってました」

しかし、パパ活をする中でトラブルはたくさんあったという。

「携帯を契約してくれていたおじさんとの約束で週に3回はセックスするとか、指示通りにいやらしい動画を撮らせろとかいろいろ約束をかわしてたんです。

でも、できない時もあって、そしたら『今まで撮った動画をネットに晒す』と言われた挙句、携帯を解約されました。

Wi-Fiがあるところじゃないと誰とも連絡が取れないみたいな。なので、友達と2人でWi-Fiが通ってるホテルにずっと滞在して、出会い系サイトで知り合った人をホテルまで呼んでセックスしてお金をもらうという生活をしていました。

『どっちとヤル? 3P?』みたいな感じで生活はかなり荒れてましたね」

そんな生活を変えてくれたのがSMバーの勤務だった。

「SMバーは唯一きちんと働いた職場で、東京に出てくるまで3年くらい働いてました。親とも仲は悪いけど軽く和解ができ、また一緒に住むようになったり。いろいろ生活の変化がありましたね。そこから縁があって東京で仕事をしてみようと思い上京してきました」

しかし、東京に出てきたタイミングで今まで適度に感じていた希死念慮というものがどんどん強くなっていったと彼女は語る。

「タトゥーって未来との約束」 

「定期的に、『死にたい』といった気持ちが強く芽生えるようになってしまって、何度か自殺未遂とか起こしてしまって。でも誰かが助けにきてくれて一命を取り留めたことは何度かありました。

睡眠薬をオーバードーズしたときも友達とかに変なメッセージを送っちゃってるんですよね。それをみた友達が駆けつけてきてくれて助かったり…」

しかし、そんな状況から救ってくれたのがタトゥーだった。

「タトゥーって未来との約束なんですよ。彫師とどういうデザインにするかって相談して、デザインを作ってもらって、予定してた日に彫ってもらう。来月タトゥーを入れる予定があるからそれまで生きなきゃ、みたいな。私の人生はその繰り返しです」

にせぽよはいま、イベントに出ることで生計を立てている。

「そんなにタトゥー入れてて、何の仕事してるんですか? とよく聞かれるんです。バーで働いたり、トークイベントにでたり、モデル業をやったりと、いろいろな方に支えられて生きています」

刺青は自傷行為の一環ととらえられがちだが、人が生き続けるための大事な糧になる場合もある。生き辛い世界の中で彼女にとっては唯一の生きる希望なのだ。

取材・文/山崎尚哉  

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