〈デニムグミ事件の真相〉メルカリで8万円のデニムを買ったら果汁グミが届いた…その予想外の結末と「評価制度の落とし穴」
〈デニムグミ事件の真相〉メルカリで8万円のデニムを買ったら果汁グミが届いた…その予想外の結末と「評価制度の落とし穴」

4月13日の深夜、X(旧Twitter)にあるポストが投稿された。「メルカリで8万のデニムを買ったら果汁グミが届いた件」。

投稿されるや瞬く間に約8200万のインプレッションを叩き出すなど大きな話題になっている。多くのユーザーが利用するメルカリで起きた、“デニムグミ事件”はなぜ起きたのか。被害者を直撃した。

「ずっと探していたアイテムだった」

届いたのは購入したはずのデニムではなく、果汁グミ……。いったいどういうことなのか。その真相を知るため、被害者のsoshiさん本人を直撃した。

soshiさんは現役の大学生。将来は服飾関係の仕事に就くことを夢見ている。そんなsoshiさんにとって、気に入った古着アイテムを見つけるのに重宝していたのが、フリマアプリ「メルカリ」だ。もちろん利用はこれが初めてではない。当時のやり取りについて、こう振り返る。

「4月8日に、レアでなかなか出回らないデニムの出品を見つけました。およそ8万円という値段はもちろん安くはないものの、ずっと探していたアイテムだったので『これは買うしかない』と購入に迷いはありませんでした。

2000年代の中期に発売されたモデルで、デニム好きにはたまらない一品なんです」(soshiさん、以下同)

だが、すかさず購入ボタンを押したあと、soshiさんは違和感に気付いた。

「購入後に念のためにデニムの型番で検索をかけてみたら、別の出品者からの無断転載画像であることがわかったのです。そこで、私は出品者に対して、今回表示されている写真とは別のシチュエーションで撮影した商品写真を提示するよう求めました」

だが出品者から送られてきた写真は、疑念を深めるものだったという。

「明らかに先ほどの無断転載画像のデニムを切り取り、背景だけを加工処理したものでした。この出品者は信用してはならないと感じました」 

メルカリには、出品者との取引が正しく成されたかどうかを取引終了時に示す受取評価がある。だがこの評価制度こそ、soshiさんの目を曇らせた。

「実は件の出品者は、評価の高い出品者でした。私が購入を即決したのも、他の取引相手からたくさん評価されていたからです」

多くの取引を成立させてきた評価のいい出品者による詐欺行為。なぜこのようなことが起こるのか。soshiさんはこう考察する。

「出品者から商品が届いたとき、取引をスムーズに成立させようとして、中身をよく確認しないで相手に高評価をつけてしまう人が多いと思うんです。

そうなると、中に何が入っているかわからないのに、出品者を評価してしまうことになります。

これは自分が損をするだけでなく、将来的に被害者を生み出すことにもなってしまうんです」

冒頭で述べたように、デニムだとされた郵送物の中身が果汁グミということが十分にあり得るのだ。

「まったくふざけていますよね。郵送されてきた袋の形状などからして、明らかにデニムではないことがわかっていたので、何かの証拠となるように、開封の際には動画を撮影していました。しかし果汁グミが入っているとは夢にも思いませんでしたが」

メルカリに対する不信感…

また、詐欺の被害者となったsoshiさんは運営元のメルカリとのやり取りをこう振り返る。

「当然、私はメルカリに対して、事件のあらましを説明して速やかな返金などを求めました。しかし残念ながら、なかなか事態は進展しませんでした。

そうこうしているうちに、運営からのリアクションよりも先に出品者のほうから取引のキャンセルが行われて、結果として返金はされました。

これはあくまで推測ですが、私の投稿が思わぬ大きな反響を呼んでいて、それを見た出品者が慌てて取引をキャンセルしたのではないでしょうか」

およそ8万円もの金額が騙し取られずに済んだことは不幸中の幸いだった。だがもしもそれがSNSでの偶然の“大バズ”によるものだとすれば、釈然としない。

また、返金後もなお懸念も残るとsoshiさんは言う。

「取引キャンセルの場合、相手を評価することができないので、今回の出品者の評価を下げることができないんです。つまり今回の取引によって相手方が低評価をされることはなく、アプリ上では無傷なんです。

そうとなると、事態が収まればまた似たような被害者を出すかもしれません」

今回の件について、SNSではさまざまなコメントが寄せられた。そのなかには自分も似たような被害体験があると語る人も少なくない。また、「すり替えられたと言われないよう、ちゃんと開封から動画撮ってたのは素晴らしい」とsoshiさんの対応を称賛する声も複数あった。

soshiさんのリアルな友人たちは、身近で起きた事件について戦々恐々とする人は多いという。

「やはり私の友人には洋服が好きな人が多いのですが、今回のことは『まったく他人事とは思えない』と恐れています。本当に、誰の身に起きても不思議ではないと思います」

趣味を楽しみ、安心して取引ができるためにも、欺罔(ぎもう)によって他人を絡め取る悪辣を許さない対応策が求められる。

取材・文/黒島暁生 写真/本人提供

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