
政府・与党が考えていたトランプ関税や物価高騰など経済対策のための現金給付が見送りとなることがわかった。代わりに電気・ガス代の補助金やガソリン価格の引き下げを行なう方針となったようだが、こちらも国民からの支持はあまりよくない。
「バラまいても票が取れなさそうならやめますはヒドすぎる」
高関税や物価高対策の一環として、当初は所得制限なく全国民を対象に一律3万~5万円程度の給付という案があがっていたが、これに対する国民の反発は強かった。
毎日新聞が行なった世論調査では、この政策を「評価しない」という声が半数以上で、「評価する」を大きく上回っていた。
評価しない理由としては、給付金ではなく消費税の減税を求める根強い声や、仮に給付金をバラまいたとしても、後からそれを理由にまた税金が上がることを懸念する声が多かったからだ。
また、昨年から国民民主党が掲げて多くの支持を集めていた「“年収103万円の壁”を178万円まで引き上げる」という案は、財源がないことを理由に与党が却下していた。しかし、そんな中でお金のバラマキという政策は矛盾のようにも感じられる。
さらに、内閣支持率が低下したことで、選挙前に票を集めたいためだけの苦肉の策ではないかとの批判も上がっていた。
減税と手取り給与アップを望む国民と、減税にはかじを取らない与党。両者の間に大きな溝があり、給付金という案は消えることになった。
しかしそのあとに発表された電気・ガス代の補助金やガソリン価格の引き下げという案も、決して支持が高いものではない。
ネット上ではむしろ、批判の声のほうが多く散見される。
〈意地でも消費税減税はしたくないっていう固い意志を感じるな。国民を助けない政府なんて要らないぞ〉
〈増税するときは国民の評判なんて一切気にしないくせに、バラまいても票が取れなさそうならやめますはヒドすぎる〉
〈一度やるって言ったものを引っ込めるのは最悪手だぞ。給付金と比べてしょぼすぎる補助をしても意味がない〉
〈選挙対策にならないなら大したことやりません…ってか。
新たに浮上した政策について、環境・エネルギーの専門家・江田健二氏は「現金給付に関する報道が出たあとで、結局は実施されないという方向になったため、期待していた方々の落胆も大きかったのではないかと思います」と、批判が大きくなった理由を指摘する。
これから政府がしなければいけないこととは
そのうえで、国民の混乱を防ぐためには、国としての方針が定まってから情報を発信するべきだったという。
ただ今回の政策転換を支持する声がないわけでもない。バラマキのような現金給付よりも、より生活に密接な電気、ガス、ガソリンなどエネルギーに対しての補助金のほうが所得やライフステージに関係なく多くの庶民にとってメリットがあるとの意見もある。
「エネルギー分野への補助金のメリットは、生活の中で“実際に安くなった”と実感しやすい点にあります。特に冬場や夏場の光熱費がかさむ時期には、家計への直接的な支援として意味があります。
一方でデメリットとしては、一度導入すると“恒常的な支援”として定着してしまい、財政面での負担が大きくなりやすいことです。終了のタイミングが難しくなるという側面もあります」(江田氏、以下同)
とはいえ、国民の多くが求めているのは「その場しのぎ」ではなく、持続的かつ安定した政策だ。光熱費の補助は一時的に家計を助けるかもしれないが、補助が終わってしまえば厳しい生活に逆戻りするだけだ。
では、庶民の生活への打撃を根本的に改善する策はないだろうか。
「中長期的には、エネルギー自給率を少しずつでも高めていくことが、安定した生活基盤の確保につながると思います。併せて、電力やガスはすでに自由化されていますので、利用者が自分に合った料金プランを選ぶことで、家計の負担が減る可能性があります。
そうした“選ぶことで得られるメリット”について、もっと広くわかりやすく周知していくことも、今後の重要な施策のひとつだと思います」
「今さえよければいい」という姿勢では、国民の不安は拭えない。その解決策のひとつとしての減税が求められている。うわべだけの対策ではなく、本当に生活が向上する方法を考えてほしい。
取材・文/集英社オンライン編集部 写真/共同通信社