【消費税減税】「中身は若者いじめだよ」得するのは高齢者と外国人観光客だけ? “現役世代が損する”との指摘が相次ぐ”優しい減税”の正体
【消費税減税】「中身は若者いじめだよ」得するのは高齢者と外国人観光客だけ? “現役世代が損する”との指摘が相次ぐ”優しい減税”の正体

昨今の物価高騰への対策として、「消費税減税」を掲げる政党が増えてきた。立憲民主党は、今夏予定される参院選の公約に1年間限定で食料品の消費税をゼロにする案を盛り込み、日本維新の会や国民民主党も時限的な減税政策を打ち出している。

“優しい減税”の落とし穴 

家計の負担を軽くすることで、消費活動を促す効果が期待される「消費税減税案」。一見すると、国民全体に恩恵がある“優しい政策”に思えるが、実は「世代間の公平性」という観点から、強い批判の声も上がっている。

実際、現役世代は消費税に加えて、給与から厚生年金保険料や健康保険料など、毎月かなりの額を社会保険料として支払っている。一方、定年後の高齢者は年金収入が主で、保険料負担もないわけではないが、現役世代に比べるとかなり小さい。

つまり、消費税を減税すれば、高齢者や外国人の観光客など「他の税や保険料をあまり負担していない層」が相対的に得をしやすく、結果的に社会保障を支える現役世代が、その分を別の形で補うことになりかねないのではないかと指摘されている。

SNS上でも、この点を問題視する投稿が相次いでいる。

〈消費税減税とか論外だろ、あり得んよ 最強の公平性ある財源だぞ〉

〈見た目は全国民に優しいけど、中身は若者いじめだよ〉

〈消費税減税とか高齢者優遇の最たるものだよな〉

〈今の物価高で消費税減税とか消費税廃止なんてしたら観光地はほぼ全て消し飛ぶぞ。爆買い観光客外国人から合法的に税金吸える手段も減るしどう見ても悪手〉

こうした懸念について、目白大学経営学部の髙辻成彦准教授は「減税によって将来世代への負担が増えるリスクがある」と話す。

「仮に2025年時点で消費税減税を実施した場合、先ず、減税した国の財源をどのように確保するのかが問題になります。国債で賄うなどの対応でその場はしのげたとしても、日本は中高年世代が増えている状況にあるため、社会保障費の負担が今後も増大することが見込まれています。

また、財政運営上、社会保障費等の増大する費用の財源を確保するために、結局は消費税を引き上げる必要性が生じてくるため、将来的に現役世代となる若者世代の方々の税負担が増えてしまう恐れがあります」(髙辻准教授、以下同)

若者が損をしてしまう可能性 

一方、中高年世代は年金等の給付を受けることになるため、相対的には、やはり若者世代ほどの負担にはならない可能性が高いという。

「消費税減税は、このような税負担の先送りにより、税負担の世代間格差が生まれる可能性があります。将来的な増税を避けるためには、継続的に費用を抑える行財政改革を実施していかなければなりません」

さらに消費税減税には、制度運営や事業者側の混乱といった実務的な問題もつきまとうと髙辻准教授は指摘する。

さまざま問題のうち、とくに「事務負担の問題」「飲食店で実質税負担が重くなるリスク」「景気の反動減リスク」の3つをあげた。

「仮に2025年時点で消費税減税を実施する場合、野党などの提案をみると、1年限定で食料品のみ消費税をゼロにすべき、との内容があります。実施すれば、一時的には景気浮揚策としては効果があるかもしれません。一方で、1年間で0%にして、その後に税率を戻すとなると、関連の事務負担が増えてしまいます」

さらにたとえば、食料品のみ消費税をゼロにすると、飲食店の場合は、野菜や魚などの仕入れ時には消費税を払っているものの、お客から取る売上の消費税はゼロになる。それゆえに、仕入れ控除でその分を相殺できず、結果的に税負担が増えるリスクがあるという。

「1年限定では、実施後の景気の反動減のリスクも増すことになります。消費税減税を実施する場合には、『財源をどうするのか』『減税後の対応をどうするのか』『行財政改革をどう進めるのか』の3つの視点でのリスク対応が必要でしょう」

一見するとわかりやすく優しい政策に思える消費税減税。けれど、そのツケが誰に回るのかを考えないと、本当の「公平さ」は見えてこない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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