<小池都知事の“妹分”都ファ特別顧問が収支報告書不記載770万円超〉パーティー券キックバック疑惑も、本人は直撃に「亡くなった母が担当した」でも日付を確認すると…
<小池都知事の“妹分”都ファ特別顧問が収支報告書不記載770万円超〉パーティー券キックバック疑惑も、本人は直撃に「亡くなった母が担当した」でも日付を確認すると…

東京都議会の会派「都民ファーストの会」の荒木ちはる都議(43)が、2022年に政治団体などから受け取った寄付金計772万円を一定期間、政治資金収支報告書に記載していなかったことがわかった。報告書は提出された約6カ月後に、2回にわたり修正されている。

荒木都議は取材に対して、「亡くなった母が会計を担当しており、わからない」と述べている。ところが、その母は最後に修正した2 日後に、膵臓がんのため亡くなっていた。識者は「説明に無理がある」と批判する。

裏金疑惑が追及されていた23年11月に2回にわたり修正

不記載があったのは荒木氏が代表を務める後援会の政治資金収支報告書(2022年度)。

①2022年の参院選挙の際に、国民民主党から参院選挙推薦料として受け取った500万円と、②同年1月に都民ファーストの会から寄付として受け取った272万円、計2点を記載していなかった。

23年11月に2回にわたり修正をしているが、修正された当時は、自民党による派閥のパーティー券による裏金疑惑が追及されていた。派閥の議員らはパーティー券のキックバック分を政治資金収支報告書に記載していなかったことが違法にあたるとされていた。

総務省によると、政治資金規正法では、政治資金収支報告書に記載すべき情報を記入しないことは「不記載」として扱われる。その場合、政治家や政治団体は、刑事罰や公民権の停止などの罰則を受けることがある。

不記載が明らかになった荒木氏は小池百合子都知事の「愛弟子」「妹分」として知られている。

都民ファーストの会のホームページなどによれば、荒木氏は熊本県出身で、物心ついたときから、小池氏に憧れていたという。29歳のときに履歴書一枚を持ち議員会館へ飛び込み、そこから6年間小池氏の秘書として活動。その後、17年に都議会議員に初当選し、現在は2期目になる。

また、17~22年にかけて荒木氏は都民ファーストの会の代表を務めていた。

小池都知事の「愛弟子」「妹分」として知られる元秘書の荒木氏(荒木事務所)

今年1月に発覚した都議会自民党での1000万円を超える裏金問題をめぐって、都民ファーストの会は2月、政治倫理条例の制定をめざす委員会の設置案を自公とともに提出し、可決されている。裏金を批判する姿勢の都民ファーストだが、特別顧問を務める荒木氏の不記載だった金額は772万円と高額で、説明責任が問われる。

知事与党として活動する自公都民ファが合同で設置した「政治倫理条例検討委員会」では5月21日、立民の関口健太郎都議が「都民ファーストの会からの272万円の収入は政治資金パーティーのキックバック分なのではないか」と指摘した。

関口氏は集英社オンラインの取材に対して、「都民ファーストの会の支出を見ると同日に多数の都民ファーストの都議にキックバック分とされる支出があることからキックバックであることが推測される。政治資金収支報告書の修正をしたとはいえ、政治資金パーティーのキックバック不記載は自民党によるパーティーの不記載問題と全く同じ構図だ」と問題点を説明した。

また修正日が2023年11月で、当時は自民党のパーティー券をめぐる裏金問題が話題になっていた。関口氏は修正の時期について、「国会での自民党による派閥パーティーの裏金問題が明らかになったあと、荒木都議が政治資金収支報告書の訂正をした。時期を見れば悪質である」と主張する。

そのうえで、荒木氏が修正したことについて、「そもそも参院選候補としての政治資金収支報告書であることから監査人報告書が添付されている。にもかかわらず、772万円の不記載が放置されていたのは、より故意的な修正であると考える」と指摘した。

政治倫理条例検討委員会は今週の委員会で、荒木氏に対する文書質問を求める方針だ。

都民ファでは「政治資金収支報告書は厳しく」と指導されていた

都民ファーストの内情をよく知る関係者は、荒木氏が不記載だった272万円について、「パーティー券のキックバックによるお金と言って間違いない」と証言する。

関係者によると、都民ファーストは少なくとも2024年まで、政治資金パーティーを行なう際にパーティー券のノルマを超えた分についてはその売上を各々に還元できるキックバックの制度があったという。

パーティー券は1枚2万円で売られており、役職によってノルマの枚数は異なるという。「多くの党員が50枚をノルマとして課せられていた」と明かした。

以前、都民ファーストの会に所属し、現在は小池都知事追及の急先鋒として知られる「自由を守る会」の代表の上田令子都議もキックバック制度に疑問を投げかけている。

「私が都民ファにいたときから、パーティー券のノルマとそれに伴うキックバックもあったと認識してました。党内出世のためや政治資金確保のために売るなど様々な都議がいました。もちろんパーティー券を売っても記載すれば違法性はないので、お金で尻尾をつかまれたくない都民ファでは政治資金収支報告書は厳正に記載する方針でした。

ですが、私はそもそもパーティー券のシステム自体に懐疑的です。当時、私にも50枚まとめて買い取ると言ってくれた企業の方もいましたが、買い取ってもらうことで便宜を図らなきゃいけない空気になるでしょうし、やりたい政治ができなくなるのは明らかでした。なので結局私はパーティー券を売りませんでしたし、それも党を離党した理由のひとつですね」

前出の関係者は「政調会から、法律に基づいて(政治資金収支報告書に)載せるよう口酸っぱく言われていた。でないと自民党と同じになるからと指導があった」と話す。

上田氏によると、荒木氏は「政治活動は熱心にしていて、いろいろな会合に顔を出していたから、政治活動の資金はかかっていたと思う」と話す。

ただ、荒木氏の不記載額について、「そもそもこの金額を書き忘れることなんてないし、ありえない。都民ファも自民党の不記載問題について指摘していたのだからきちんと説明すべきだ」と厳しく言及した。

かつて荒木氏は都議会自民党の運営側について、自身のXで以下のように投稿している。

〈政治不信を招いている事に対し説明責任と然るべき対応を求めています(25年2月10日)〉

〈都民の政治不信を払拭するべく議会としても取り組んでいく(25年2月13日)〉

荒木氏を直撃すると…

問題の渦中にいる荒木氏に見解を問うため、5月27日の朝、西武新宿線野方駅前で街頭演説後の荒木氏を直撃した。

――23年11月に前年度分の政治資金収支報告書を2回にわたり修正したのはなぜか?

母がパソコンと会計が得意だったんで、母に任せていた。母が一昨年死去している。で、たぶん気づいてすぐ修正している。

はっきり言って、(修正した部分は)裏金として、最後までちゃんと突き通しているわけじゃない。気づいた時点でちゃんと修正している。
 

――間違いに気づかれたキッカケは?

たぶん、事務手続き。母も亡くなっているので、今はわからない。ただ、急ぎで気づいたから修正するというのは(母から)聞きました。事務的ミスだからすぐに修正している。

そうでなかったらたぶん、修正もしない。

 ――なぜ2回にわたって?

ごめんなさい。ちょっと。

――政治資金収支報告書に荒木都議は目を通さなかった?

あの時は、母と一緒に見たか…。ちょっとごめんなさい。記憶があんまりないんだけれども。

――監査報告書が提出されていて、税理士がチェックしているはず。なぜ修正が起きてしまったのか?

母も亡くなっているから確認のしようがないですし。税理士と母とのやりとりは知らない。

――税理士さんとのやりとりは荒木さんもされているはずでは?

ごめんなさい。これっていつまで続くんですかね。そろそろいいですか。

――不記載の部分で都民ファから寄付された272万円は、パーティー券のキックバックではない?

党としてはそういうふう(キックバックではない)に答えていますよね。

――荒木都議自身としては?

そうです。はい、キックバックではありません。違います。違います。違います。ありがとうございました。

「母親が訂正願いを出したとは考えにくいですね」

「修正はすでに亡くなっている母がやったからわからない」と主張する荒木氏だが、荒木氏の出身地の地元紙によると母親は23年11月29日の午後、膵臓がんのため亡くなったことが報じられている。2回目の修正が受領された27日のわずか二日後だ。

荒木氏の主張について、政治家の裏金問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は、「十分な説明になっていない。説明責任から逃げている」と批判する。

「単純なミスだったということを説得力のある形で証明できるのであれば、罪に問うことは難しいです。

ただ、一連のやりとりで、説得力がある説明とは言えない。

772万円は一般感覚では非常に高額で、ひとり分の年収でもある。こんな金額の不記載がなぜ起きてしまったのか。そしてなぜ、2回にわたって修正したのか。本人は忙しい姿勢を見せてますが、30分でも1時間でも時間をとって、客観的資料を示してきちんと説明すべきです」

また、母が修正をしたという答弁についても疑義を投げかけた。

「がんで亡くなるということは、闘病中だったのでは。常識で考えれば、2日前に修正などできないのではないでしょうか。急に容態が急変したならわかりますが、普通は、母親が訂正願いを出したとは考えにくいです。

また、母はパソコンと会計が得意と話していましたね。荒木都議の収入は国会議員と比べて収入の数が少なく、なぜ漏れが生じたのでしょうか。もっと金額が多い政治家はわんさかといます。会計帳簿の付け方に問題があるのでは」

荒木都議が出した政治資金収支報告書には、税理士などの監査人が収支報告書をチェックした証明である“政治資金監査報告書”がセットで提出されている。

荒木都議の政治資金収支報告書で監査を担当した税理士は、集英社オンラインの取材に対してしばらく沈黙したあと、「まあ、このことは本人に聞いてください。政治の手前はいろいろと守秘義務があるので私からは答えられない」と述べた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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