〈公認取消〉“山尾切り”何があった? 山尾志桜里氏の「不倫は否定」「回答拒否」連発会見が大ブーイングで今後も国政への道は断たれたか
〈公認取消〉“山尾切り”何があった? 山尾志桜里氏の「不倫は否定」「回答拒否」連発会見が大ブーイングで今後も国政への道は断たれたか

国民民主の参院選比例代表の公認決定から約1ヶ月、ようやく記者会見を開いた山尾志桜里元衆院議員だったが、その翌日の11日、党が公認を取り消すと発表した。急転直下の方針転換の理由は、山尾氏が過去の不倫報道などについて「私がいま新たにお話すれば、さまざまなご迷惑をおかけする」と“回答拒否”を連発し、批判が収まるどころかさらに強まったことだ。

山尾氏を“切り”、党全体の厳しい局面を打開することを選んだ国民民主の行く末は……。 

会見で男女関係を否定 党には苦情が殺到

「2017年、指摘を受けた私的な件については、当時の自分の行動、ご指摘を受けた時の対応、極めて未熟だったと心から反省しております。8年前の自分には大変おごりがあったと思います」

6月10日、永田町の衆院第一議員会館で会見に臨んだ山尾氏は、冒頭、過去の不倫報道などをめぐって神妙な面持ちで謝罪した。口調はゆっくりで、立ったまま。かつて「むき出しの好奇心になど屈しない」「記者会見で私は『男女の関係はない』と答えたが、そうしたことを答える必要さえなかった」と不倫報道に反発していた頃からは一転、謙虚に自らの過去の行動を省み、謝罪する姿勢を見せた。

ただ、会見が始まって不倫報道に関する質問が集中すると、男女の関係にはなかったとの認識は改めて示したものの、「この場で、新しく言葉を紡ぐことをどうかご容赦いただければと思います。いろいろな思いの方がいらっしゃいます」として事実上の“回答拒否”を連発。

不倫相手とされた男性の元妻が自死したとの報道についても「事情を存じ上げません」として自身の思いを語ることはなく、2時間半の会見は終わった。

2017年当時、週刊文春で山尾氏を取材した担当記者は会見を見て呆れていた。

「この期に及んで男女関係(不倫)を認めないどころか、改めて否定するとは山尾さんは変わりませんでしたね……。当時、取材は長期にわたったのですが、山尾さんと弁護士の逢瀬は何度もありました。記事にも書きましたが不倫をしていたのは明らかでした。

さらに記者たちは訴訟対策もかねて山尾さんがホテルに“お泊りデート”をした際、表に出していない確固たる“男女関係の証拠”も持っている。

報道後、お相手の家庭が壊れ、元妻が自死しました。それでも今回の会見でウソをつき続けるとは……」

山尾氏の「後ろ盾」に玉木氏も逆らえずにいたが……

山尾氏の“回答拒否”連発に世論の批判は収まるどころか、さらに強まった。

「会見を受け、党の各地の総支部に苦情の電話が殺到。東京都議選の候補者も街頭で厳しい言葉をかけられました。党内でも『人が亡くなっているのだから、説明責任を果たすべきだ』と批判が渦巻き、執行部にも『山尾氏の公認を取り下げてくれ』との声が相次いで届きました」(国民民主関係者)

こうした党内外からの反応を受け、玉木氏は山尾氏の公認取り消しを決断。山尾氏に説明の機会を提供したものの、説明が十分でなく公認候補として不適切だと判断した形だ。

そもそもこの決断が遅れたのは、山尾氏には強力な“後ろ盾”があったからだという。

「山尾氏の政界復帰は、国民民主の支持母体である連合の芳野友子会長がプッシュしていました。玉木氏は、連合が国民民主の躍進を後押ししてくれたと思っているし、自民党とのパイプもある芳野氏の意向を無下にはできず、これまで党内外から批判を受けても山尾氏の擁立を取り下げてきませんでしたが、さすがにこのままでは党がもたないと判断したのでしょう」(野党関係者)

強力な“援軍”のプッシュもむなしく、公認を取り消されることとなった山尾氏。党内では「玉木代表にはもっと早く決断してほしかったが、取り消し自体は正解」と、公認取り消しに安堵する声も多く、山尾氏は今後の再起も難しくなっている。

「ここまで批判が強いと、国政再挑戦の道は、もう断たれただろう。ほとぼりが冷めたら国民民主は、山尾氏に民間有識者として関わってもらうなど、何らかのお世話はするかもしれないが、擁立しても党にマイナスでしかないことがわかった」(立憲議員)

都議選、参院選、「疲労困ぱい」の石破政権との協力は…国民民主の行方  

山尾氏を“切り”、擁立発表以来、続いていたピンチの局面の打開に舵を切った国民民主。今後、まずは6月22日投開票の東京都議選が参院選を占う試金石となる。

「都議選で、国民民主は小池百合子都知事が特別顧問を務める『都民ファーストの会』と協力。お互いに候補者をすみ分けて支援し合っているところもあり、小池氏の力も借りて、都議選で結果を残せるかに注目が集まっています。

山尾氏の擁立報道が出た直後には、国民民主の予想獲得議席数が減ったという情勢調査もありましたが、今回の公認取り消しが、当落線上ギリギリの争いでプラスに働くか、注目されます」(全国紙政治部記者)

永田町ではさっそく「参院選では『山尾氏が公認候補なら比例で国民民主に投票したくない』と言っていた有権者が国民民主に戻っていくだろう」(立憲議員)とささやかれる。仮にそうなれば参院選後は、ふたたび少数与党の石破政権が国民民主を頼る場面もありそうだ。

「立憲が内閣不信任案の提出を見送る方向のため、永田町には衆院解散への警戒感はほとんどありません。参院選で自公が過半数を確保できても、衆院で少数与党の状況、国民民主がキャスティングボートを握っていることには変わりないでしょう。引き続き石破政権は政策ごとに『頼みの綱』の国民民主に協力を求めることになりそうです」(同)

ただ、そんな政策ごとの連携にも限界が見えつつある。

「最近、石破首相が紙を読み上げてあいさつする会合があったのですが、同じ文を2回読んで、本人もそれに気づいていないという出来事がありました。少数与党のかじ取りに疲れ切っているのでは。

岸田文雄前首相も連立の枠組みの見直しに言及し始めています。国民民主が『山尾ショック』から回復して参院の議席数を伸ばせば、衆院で過半数を確保できていない石破政権がこれまで以上に国民民主を取り込もうとしていくことも考えられます」(自民関係者)

都議選と参院選に向け、山尾氏を“切って”党勢を回復させることに必死の国民民主。昨年の衆院選後の勢いを取り戻し、有権者からの信頼を獲得できるか。

そして、その後に歩む道は……。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ