〈広陵・もう一つのイジメ疑惑〉被害を告発した生徒の親が告白「息子は寮でされたことが怖くて風呂も一人で入れなくなった」「息子が“このクソ野郎”って急に涙を流し…」
〈広陵・もう一つのイジメ疑惑〉被害を告発した生徒の親が告白「息子は寮でされたことが怖くて風呂も一人で入れなくなった」「息子が“このクソ野郎”って急に涙を流し…」

第107回全国高校野球選手権大会に出場していた広陵(広島)が、初戦に勝利した後、8月10日に出場を辞退した。1月に起きた部員間の暴力行為を巡り、SNSで中傷が相次いだことなどが理由だという。

これとは別に、元部員が監督や部員らから暴力を受けたと訴え、6月に第三者委員会が設置された問題も表面化したが、広陵の堀正和校長は「確認したがそういう事実はなかった」と語った。この被害を訴える生徒の保護者が集英社オンラインの取材に対し胸中を語った。 

「もう一つの被害告発」をした生徒Aさんと保護者を訪ねると…

♯1、♯2で報じたように、一連の問題は今年1月22日、同校野球部員が全寮生活をする「清風寮」内で、1年生部員(当時)が禁止されているカップラーメンを食べたことに2年生部員(同)複数が立腹、暴行したことが発端だ。

学校側は聞き取りの結果として、2年生4人が個別に被害者の部屋を訪れ、胸を小突いたり頬を叩いたなどと高野連に報告し、3月上旬に高野連から「厳重注意処分」を受けた。

「加害者」の4人は1ヶ月間公式戦出場停止という高野連の「指導」を受け、被害者は3月末、県外の高校に転校した。

広陵は7月の県予選を勝ち抜き、夏の甲子園に広島代表として選ばれたが、これに対し被害者の保護者が「息子は正座させられて10人以上に囲まれて死ぬほど蹴られ、顔も殴られた。それを中井哲之監督に相談したら『お前嘘はつくなよ』『2年生の対外試合なくなってもいいんか?』と逆に追い詰められた」と“別角度”からの経緯を投稿していた。

これらの食い違いを大会初日の8月5日、産経新聞が報道し、SNSを中心に議論が過熱。出場辞退も懸念されたが、広陵は7日の初戦で旭川志峯(北北海道)を相手に勝利した。

しかし同日、新たに別の生徒(Aさん)から1年以上前の暴力事件の告発が出され、広陵が第三者委員会を設けて調査中であることも判明し、SNSやネットでの「炎上」が拡大していた。

2回戦の棄権を発表した堀校長によると、9日の理事会で出場辞退を決め、中井監督が当面指導から外れることなどが保護者らにも伝えられたという。

 集英社オンラインは「もう一つの被害」を告発した生徒Aさんと保護者を訪ねた。事実としたら刑事処分になりかねない性加害事件をAさんの保護者は訴える。

急に目を見開いて泣きながら叫び出して

SNSでAさんは「広陵高校の硬式野球部で在籍時に性被害に遭いました。<中略>寮の風呂では水の中にしずめられたり熱湯や冷水をかけられたりする殺人行為にも遭いました。<中略>今は広島県の安佐南警察署に被害届を出し捜査中です。またこの前第三者委員会が開かれ第三者委員会にも調べてもらっています」という投稿をしている。(投稿は保護者が代理で行なった)

被害に遭ったとされる時期はAさんが1年生の頃だ。Aさんは度重なるイジメに耐えかねて2年生になる前に退部、退寮して自宅から通学しているという。両親が経緯を証言してくれた。

「加害生徒からのイジメや監督、コーチの暴行や暴言についてこれまで学校側から誠実な回答というのはいただけていません。学校からは『聞き取りをしたが、そういった事実はない。やっていない』としか伝えられていません。

帰寮した日に息子は、最初はただ『具合が悪い』としか言わないので、病院に連れていきました。それで私が薬剤師から薬を受け取って待合室に戻ると、息子がわんわん人目をはばからずに涙を流して『寮に戻りたくない』と泣くので、ただごとではないなと感じました。

それで寮に電話をしてそれを伝え、野球部も辞めて退寮することになりました」(Aさんの母親)

 自宅に戻ってからも、Aさんの異変は続いた。

1年生も終わろうかという昨年3月のことだった。

「制服を着て家を出ようという時に、息子が急に泣きながら『このクソ野郎』って叫び出して、直後に過呼吸みたいになりました。素直で何事にも前向きに取り組むわが子は寮から戻ってきて別の人間になってしまったようでした。

また、幻聴や幻覚があるように見えたので、昨年11月ごろに精神科に相談に行くと『性的なイジメで同一性乖離症状が出ていた可能性がある』と言われました。すぐに学校側に伝えました」(同)

「校長はどういうつもりなのか」と連絡を入れると

広陵高校は今年1月までの間に当該の生徒を含めて聞き取りを行なった。そして教員2人が保護者のもとを訪れ、「やっていません」という「調査結果」の報告があったという。

「息子の様子からも何かがあったのは明らかだったので、今年2月に安佐南警察署に部員3人による性的暴行と、中井監督とコーチ陣からの暴行に関する被害届を出しました。その後に広島県の教育委員会に連絡し、第三者委員会を立ち上げるということになりました。

その頃になっても広陵高校の校長からは一度も連絡がなかったので、ある教員に『校長はどういうつもりなのか』と連絡を入れると、2、3日後に校長から『A君のことは一生懸命やらせてもらいます』と電話がかかってきました。遅すぎると思いました」(Aさんの父親)

すでに第1回目の第三者委員会は終わっており、A君の両親は中井監督やコーチの暴言や暴行について約2時間にわたって証言したという。

「前回は時間切れみたいな形で終わりました。8月26日に2回目の第三者委員会があり、そこで性的暴行などについて話をすると思います。

学校側が認めない真実が、第三者委員会の調査で明らかになるといいんですが。

卒業に関してはオンライン対応でどうにかできるようなのですが、本人が『こんなひどいことをしたヤツらと同じ今の学年で卒業なんか絶対にしたくない。100年広陵にいてやる』と言っておりまして、親としても困り果てています。

帰ってきてから寮のお風呂でされたことのトラウマなのか、怖くて1人でお風呂に入ることもできなくなって父親と入っています。私たちはそんな息子の様子を見ています。(加害者たちが)息子へ行なったことに、きちんとした処分もないということも到底納得できていません」(両親)

こうした被害者側の主張と、学校側の調査結果とは大きく食い違っている。

Aさんの保護者の取材の後、改めて学校側の見解を聞くべく広陵高校の理事長に話を聞きにいったが「申し訳ない、明日、学校が開いているから学校を通してほしい」と繰り返すのみだった。翌日、改めて広陵高校を訪れたが、学校は閉鎖されており対応をしてくれる者はいなかった。

寮という閉ざされた空間で、いったい何があったのか。第三者委員会の検証が待たれる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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