〈神戸・24歳女性刺殺〉事件3日前と5年前にも別の女性にストーカー行為をした金髪メッシュ男の“谷やん”…SNSではエレベーターの誤情報が拡散、本当に身を守れる方法を解説
〈神戸・24歳女性刺殺〉事件3日前と5年前にも別の女性にストーカー行為をした金髪メッシュ男の“谷やん”…SNSではエレベーターの誤情報が拡散、本当に身を守れる方法を解説

神戸市中央区で20日、帰宅途中の会社員・片山恵さん(24)が男性に後をつけられ、自宅マンションのエレベーター内で刺殺された事件。殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者(35)は、5年前、3年前、そして事件の3日前にも同様のストーカー行為を繰り返していた。

無作為に襲う女性を選んでいた疑いがある谷本容疑者だが、不審者に襲われた際に自身を守る術はないのだろうか――。 

3日前にもオートロックを…

片山恵さんの殺人容疑で逮捕された谷本容疑者は、面識のない女性をストーカーし、マンションに侵入後に首を絞めたことで、3年前にも県警に殺人未遂容疑で逮捕、起訴されている。

そして27日、5年前にも別の女性へつきまとったとして県警に逮捕されていたことが明らかになった。

その当時と今回の片山さんが刺殺された事件の手口は類似しているという。社会部記者が解説する。

「5年前の事件では、谷本容疑者は神戸市内に住む女性につきまとい、女性の自宅マンション付近をうろついたりなどしていた。ストーカー規制法違反容疑などで県警に逮捕され、罰金の略式命令を受けています。この事件も谷本容疑者と被害女性は面識がなかったそうです。

3年前の事件はすでに報道されているように、神戸市内に住む当時23歳の女性に4カ月間つきまとったのち、マンションに押し入り、首を絞めるなどして県警に逮捕されました。執行猶予付きの有罪判決を受けています」

さらには、今回の事件当日の3日前、谷本容疑者は宿泊しているホテルの近くで、別のマンションに住む女性の後をつけオートロックをすり抜ける行為を行なった疑いが浮上している。谷本容疑者はターゲットを決めたりせず、無作為に女性を物色していたという。

SNSでは誤情報も…エレベーターでの対策にも限界  

今月20日に起きた事件の手口も似ている。片山さんは勤務先からスーパーなどを経由し自宅に帰っているものの、谷本容疑者は片山さんが会社を出たところから50分にわたって後をつけ、オートロックを突破し、エレベーター内で片山さんを襲った。

事件をめぐって、Xでは「エレベーター内の閉まるボタンは長押しすると、外のエレベーターホールのボタンより優先される」といった投稿が拡散されているが、これは誤情報の可能性があるという。

国内で4台に1台のシェアを誇るエレベーターメーカーの最大手「株式会社日立ビルシステム」の担当者が解説する。

「会社様の種類によっては異なりますが、ウチの製品では基本的にエレベーター内のボタンが、外より優先されることはほとんどありません。エレベーターの扉には駆け込み事故防止のため物理センサーが取りつけられていることが多いためです」

また業界関係者は、エレベーターに対して防犯を求めることが難しいと明かす。

「エレベーターには防犯カメラが取りつけられていることが多いものの、防犯カメラに犯罪抑止能力はありません。何かことが起きたとき、その証拠に結びつける機能しかなく、起きてしまうこと自体は防げない。防犯機能がない以上は、利用者の方に気をつけていただくことしかできない。夜道を歩くのと同じ理屈です」

前出の日立ビルシステムの担当者は、子ども向けに啓発活動を行なっているという。

「エレベーターに乗る前に周りに不審な人がいないか。不審な人が周りにいたら、いったん乗るのは見合わせるとか。そういったことを、小さい子がエレベーターに乗るときに気をつけてくださいね、と学校に出向き紙芝居などを使って、注意喚起を行なっています。

もちろんこれらは女性にも当てはまることではありますが、女性向けには現在行なっていません」

一般社団法人日本エレベーター協会は、「個別の事案についてのコメントは控えさせていただきたいこと、ご了承願います」とするものの、

「一般論にはなりますが、エレベーター製品としての確実な対策は難しいと考えます。防犯意識の高まりもあり、有償付加仕様で①防犯カメラの設置、乗り場への(かご内を映す)モニター設置、②大型窓により外部からかご内が見えるようにする、③セキュリティカードによる利用者認識、④防犯警報ボタン、モーションサーチ機能、などが設備されたりはします。

ですが、あくまで犯罪行為への『抑止力』(発生時の証拠も含む)と考えます。

いずれにしても建物及び設備での対策には限度があり、最終的には、『人的』対策が最後のとりでです。『不審者とエレベーター内で落ち合いそうになったとき』は、自身の背中を見せない、電話を受けるふりをして(乗らない)降りる、人が多くいるエリアに一時退避する。『エレベーターに乗る際に気をつけること』は、知らない人物がいないかを意識いただくことと考えます」

と文面で回答を寄せた。

想像を超えるストーカーの実態

防犯アドバイザーの京師美佳氏は「ストーカーは私たちの想像以上に、細かなところを監視して、一人暮らしかどうかを判断したうえで犯行に及ぶ」と指摘する。

「女性が狙われるのは、①駅、②オートロックまたはエレベーターの入り口付近、③玄関前、の計3ポイントが多いです。

特に注意してほしいのは、夜道に歩きスマホなどをしていると、後ろから近づく足音に気づきづらいことです。できれば、音楽を聴きながらや、LINEをしながら歩かないでください。

また、ストーカーはコンビニやスーパーで買い物をしているときに割り箸が1膳だったり、アイスクリームを1個だけ買っていたりすることを見ています。1膳ということは一人暮らしの可能性が高いですし、(溶けやすい)アイスクリームを買うということはここから近所に住んでいるということを、知らずに教えてしまうのです。割り箸を多くもらったり、買い物した商品を見えないようにするなど、そういった工夫が求められます」

また、オートロックやエレベーター内でも気をつけるべきことがあるという。

「オートロック前で後ろに人が立っていて、この人なんだろうと不審に思ったときは、『お先にどうぞ』と先に相手の鍵でロックを開けさせて入らせてください。

それでも入ってきてしまった場合はポストの前に立たないこと。名前や部屋番号がバレる可能性があります。

エレベーターでも不審に思ったら、先に譲るべきですし、夜間は知らない男性とエレベーターに同乗しないことです。もし、無理にでも乗り込んできた場合、降りてくださいとは言えないので、電話がかかってきたふりでエレベーターを出るほか、エレベーターの操作ボタン付近で非常ボタンのところに手をかけ何かあったらボタンをすぐ押せるよう準備しつつ、背中が壁になるように立ち、羽交い締めされないようなポジショニングが推奨されます」

ストーカーによる無差別的な犯行はいつ誰が狙われてもおかしくない。今回の痛ましい事件も、遠い世界の出来事ではなく、ひとりひとりが身近な問題という意識を持つことが重要になってくるのではないだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ