「『ザ・ノンフィクション』の婚活編はまだ救いのある世界ですよ」。これはある婚活男性の言葉だ。
「結婚しない」のではなく「結婚できない」時代。日本社会で進む未婚化・晩婚化の問題点は多い。現役世代の賃金の伸び悩み、正規・非正規の格差、住居費の上昇、出会いの希薄化、地方と都市の機会差…。
それだけでなく、育児コストの不透明さやケア負担の偏りなど、当事者が直面するのは日々の生活設計の苦境そのものだ。何が現役世代を結婚から遠ざけているのか、現場の声を聞いた。
希少な出会いの場にさえ“落とし穴”
3年前、内閣府が発表した『こども未来戦略』では、少子化を「我が国が直面する、最大の危機」と位置づけ、「2030年までがラストチャンス」という強い危機感が明記されていた。
そして、今年2月26日に厚生労働省「人口動態統計」が発表した2025年の出生数は70万人を割り込み、前年を下回り10年連続で過去最少を更新している。一方で婚姻数はおよそ50万5656組という結果で、前年から微増となった。
婚姻数の微増は一見、明るい兆しに見える。
しかし、これはコロナ禍の影響での結婚の後ろ倒しやコロナ禍以降に出会った男女による結婚などの影響があり、根本的な未婚化の問題が改善されているわけではない。
なぜ日本の男女は結婚できなくなったのか。
冒頭で挙げたようにその問題点は多岐にわたるが、マッチングアプリのようなネットを介した出会いが増えるなど、「男女の出会い方」が変化したことで思わぬ弊害ができたことも一因としてあるという。
昨年、第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞し、集英社オンラインで「独身偽装」の取材を精力的に行なう河合桃子氏が分析する。
「私が取材した女性は、みなさん外見はすごく綺麗な方が多く、仕事もバリキャリで年収の高い女性が多かった。そんな才女なのに独身偽装する既婚男性に引っかかってしまう。せっかく『いい人に出会えた』と思っても騙されていたとなると、次の出会いも躊躇してしまいますよね。
弁護士の話では、こうした事例は20年以上前からあったそうですが、やはりマッチングアプリの台頭以降さらに増えているといいます。ただでさえ男女の出会いの場が少なく親密な関係性を築くことが難しくなっている現代で、こうした犯罪まで横行すると『結婚』に対して萎縮するのは当然の流れのように思います」
東京都は2024年9月より東京都マッチングアプリ「TOKYO縁結び」を運用開始するなど、出会いが希薄化する社会に行政も対処しようとしている。しかし、そんなマッチングアプリで、幸せな出会いばかりであふれているわけではないことも事実だ。
年収制限で結婚相談所に入れず…
『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞し、『ルポ 国際ロマンス詐欺』の著者・水谷竹秀氏は、こうした事態に法整備化の必要性を説く。
「SNSやマッチングアプリで恋愛感情を抱かせ、金銭を騙し取る国際ロマンス詐欺について、被害者も加害者も取材をしてきました。被害者の中には『年老いた母を安心させるためにも結婚したい』という心理的な弱みに漬け込まれた男性もいますし、『40代の女性というだけでマッチングは難しく、かといって1人でいるのは寂しい』という現実に悩まされていた女性もいます。
よく『どうしてあったこともない人に大金を騙されるのか?」という人もいますが、年齢への焦りや老後への不安が高まる状況では、冷静な判断が難しくなるということは誰にでも起こり得ることではないでしょうか。最近では犯人もAIを駆使するなど、手口が巧妙化しています。
未婚化が深刻な問題になるなかで、マッチングアプリやSNSは解消するための有効な手段だとは思いますが、それに伴うユーザーのリテラシー教育や詐欺被害者の救済に向けた法整備は必要だと思います」
警察庁の発表では、2025年の全国での国際ロマンス詐欺の被害総額は計3241億円(暫定)と、過去最悪の数字となっている。しかし、こうしたリスクを承知の上で、未婚者がネット上に出会いを求めるのは理由がある。
「本当は結婚相談所に入りたかったんですが、年収制限で条件を満たせずに入会できず仕方なくマッチングアプリを始めました」
そう吐露するのは、自身の婚活経験を漫画『独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記』として発表した中川学さんだ。
「SNSなどで漫画のネタのために婚活しているのでは、などと揶揄されましたが、本当に真剣に婚活に取り組んできました。『そんなに真剣なら結婚相談所に入れば」と言われたこともありましたが、年収200万円だと結婚相談所にも入れません。結婚相談所に入れるのは“婚活優等生”なんです。
なので、マッチングアプリ、婚活パーティ、お見合い、知り合いの女性と思いつくかぎりの婚活に取り組みました。先日、テレビで放送のあった『ザ・ノンフィクション』の婚活編がとても話題になっていましたが、私から見るとまだ救いのある世界だと思います。
とはいえ、私が日々不幸かというとそういうわけではなく、年収200万円でも、独身でも人生はちゃんと笑えることを漫画で描いています」
中川さんのように就職氷河期世代で、その意志があっても結婚できない人は少なくない。結婚だけが人生のすべてではないが、真剣に「婚活」と向き合う誰もが、よりパートナーを見つけやすい世の中を作るにはどうすればいいのだろうか。
「独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記」
中川学
累計5000万PV突破!(2025年12月現在)
「集英社オンライン」の大人気コミックエッセイ連載が単行本化!
デビュー作『僕にはまだ友だちがいない』がNHKで実写ドラマ化。自身のくも膜下出血体験を描いた壮絶実録漫画『くも漫。』が実写映画化するなど、常に話題を呼ぶ漫画家・中川学。
コロナ禍のある経験がきっかけとなり、年収200万円、48歳の独身漫画家が婚活に目覚めた! 「友人や知人」「マッチングアプリ」「婚活パーティー」「お見合い」……いろんな形で本気の婚活に挑む実録コミックエッセイ! その結末は?
マンガのほか、各婚活で学んだコラムや誌上お見合いのレポートなど読み物も充実。
取材・文/集英社オンライン編集部

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