数千本の突起(スパイク)が並び、寝転がるだけで背中や首を強く刺激するセルフケア用品「シャクティマット」。その刺激の強さから、“拷問マット”と呼ばれることもある。
中には、100円ショップの商品を並べて「シャクティマット代わり」にするケースもあるという。身体に直接触れるセルフケア用品を、安価な類似品や用途の異なる商品で代用しても問題はないのか。専門家とメーカーに話を聞いた。
正規品は1万8000円から…広がる模倣品の実態
古代インドの修行者が修行の一環として、無数の釘を並べた板の上に横たわる「釘のベッド」。これをヒントに開発された現代のセルフケア用健康器具が「シャクティマット」だ。
数千本のプラスチック製スパイクが並んだマットの上に寝転がり、背中や首を刺激する仕組みで、メーカー側は、血行促進や深い睡眠などのメリットをうたっている。しかし、指圧マットを使った研究は少なく、マット固有の効果が科学的に立証されているとはいえない。2023年に公表された比較研究では、指圧マットを使ったグループと、突起のないマットで休息したグループの間に明確な差は確認されなかった。
日本では2023年に本格展開が始まり、2025年ごろから美容愛好家や著名人、インフルエンサーの口コミをきっかけにSNS上で注目を集めた。2026年にはテレビやネットメディアでも“拷問マット”として紹介される機会が増えている。
そんなシャクティマットだが、公式サイトでは、クラシックマットが1万8000円、プレミアムマットが2万5000円で販売されており(2026年7月時点)、決して安い商品ではない。一方、大手ECサイトやホームセンターなどでは、3000~5000円ほどで見た目のよく似た類似品も出回っている。
日本国内の正規販売店であるシャクティジャパンは公式サイトで、「模倣品や正規品の商品識別コード(JANコード)を偽った商品が確認されている」として注意を呼びかけている。
「品質や性能が正規品と異なるだけでなく、安全性に影響を及ぼす場合がある」と説明し、「正規販売店以外で購入した商品による事故や不具合については保証できない」としている。
しかし、SNSでは、安価な模倣品が“ジェネリック・シャクティマット”と呼ばれ、手頃な代用品として定着しつつある。さらに、本来は園芸用品である猫よけマットをシャクティマット代わりにする“猫シャク”と称する投稿も複数見られる。
「100円ショップの商品を2枚並べれば200円台で作れる」「痛気持ちいい」などと紹介する投稿には、数万回以上閲覧されたものもあり、安さと手軽さから関心を集めている。
専門家が警鐘「知識のない人が自己流でやると危険」
気になるのが、身体に直接触れるシャクティマットを、安価な類似の指圧マットで代用した場合の安全性だ。自身もシャクティマットを愛用し、5万症例以上の施術に携わってきた鍼灸整骨院院長のHさん(48)が、匿名を条件に取材に応じた。
正規品との違いや、猫よけマットを代用するリスクについて尋ねると、「冷ややかな目で見ています」と切り出した。
「猫よけマットを代用品にしようという気持ちは分からなくもないですが、やはり餅は餅屋です。100円ショップの商品と、本来その目的のために作られた製品の品質を同じように考えるべきではありません。
類似品についても、使うこと自体がすべて危険だとは思いませんが、本家の商品は、ある程度、安全性や性能を考えて作られています。安価な類似品だと、どこまで検証されているのか分かりませんよね。
100円の時計でも動くことは動きますが、正確さや耐久性まで保証されているとは限らないのと同じです。
Hさんが特に懸念するのは、より強い刺激を求めて、自己流の代用品がエスカレートしていくことだ。
「不特定多数に代用品として勧めるのは怖いですね。普通の猫よけマットで済めばまだいいですが、さらに刺激を求めて剣山(生け花で使う針状の道具)のようなものを使う人が出てくるかもしれません。知識のない人が自己流でやると、何をするか分からない危険があります」
突起が折れる、身体に刺さる危険も…
本来の用途とは異なる使われ方について、猫よけマットを取り扱う業者はどう見ているのか。40年以上にわたり鳥害・獣害対策用品を製造する国内メーカーの担当者は、想定していない使われ方だとしたうえで、その危険性について説明した。
「猫よけマットは、あくまで猫の侵入を防ぐことを目的とした商品なので、猫の体重に合わせて作られています。特に100円ショップの商品などは、製品自体の強度が十分ではない可能性があり、人間が寝そべると突起が折れたり、マットが破損したりすることも考えられます。
突起の先端を丸く加工し、動物や人がけがをしないように配慮して作られたマットもありますが、現在SNS上で代用品として使われているものの中には、先端が鋭く、突起が長い商品もあります。人間が身体の下に敷いて使えば、身体に刺さる危険もあると思います」(猫よけマットメーカー担当者)
手頃な代用品として広がる“ジェネリック・シャクティマット”や“猫シャク”だが、SNS上の体験談だけでは、商品の材質や構造、安全性までは判断できない。とりわけ、人体への使用を想定して作られていない猫よけマットを代用する行為は、絶対にマネするべきではないだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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