今では定番スイーツとなった「ティラミス」。イタリア料理のデザートとして90年代に爆発的なブームとなったスイーツだ。
そんなティラミス・ブームを作ったのが、雑誌『Hanako』。同誌が1990年に組んだ「ティラミス特集」によってブームに火がついたと言われている。
数々のスイーツブームを作った雑誌『Hanako』のスゴさ
『Hanako』は、ティラミスを「イタリアンデザートの新しい女王」と銘打ち、「いま都会的な女性はおいしいティラミスを食べさせる店すべてを知らなければならない」という強烈な宣伝文句を掲げた

扇情的なコピーで女性の心をつかむ『Hanako』


同特集のなかで『Hanako』は、ティラミスを「イタリアンデザートの新しい女王」と銘打ち、「いま都会的な女性はおいしいティラミスを食べさせる店すべてを知らなければならない」という強烈な宣伝文句を掲げたのだ。

そんな『Hanako』が作り上げたブームはティラミスだけではない。翌年1991年には、「クレーム・ブリュレ」を一躍時代の寵児へと変貌させた。この時も『Hanako』は、「91年のデザートの女王はクレーム・ブリュレ」というキャッチコピーを用いて、「女王」の座を新たに作り上げることに成功した。

『Hanako』が狙った女性読者増とは?


ティラミス、クレーム・ブリュレに続き、その後も「ナタデココ」など、多くのスイーツブーム誕生に一役買ってきた『Hanako』だが、なぜ同誌は次々とブームを作ることができるのだろうか? 

そもそも『Hanako』は、1988年にマガジンハウスから創刊され、20代女性を主たる読者層として設定した情報雑誌だ。1988年12月18日の朝日新聞に掲載された椎根和編集長のインタビューによれば、対象とする読者像は「当時の首都圏の結婚平均年齢の27歳女性。年2回は海外旅行へ行き、ブランド物を思い切って買うけれども、お得情報にも敏感で貯蓄もする」といった女性をイメージしていたのだという。

さらに、彼女らは「東京近郊の大学を出て、一流会社に勤めて3~5年以上、今すぐ会社を辞めても、海外で3カ月は暮らせる資金があり。キャリアと結婚だけではイヤ」、という細かな設定まで作り上げられていた。

さすがはバブル期といったところ。『Hanako族』などと呼ばれた女性たちにとっては、海外からやってきたオシャレなデザートを食べることが、時代の先端をひた走る者の使命に感じられていたのだろう。

現在もトレンドのスイーツを追いかける『Hanako』


その後も「絶品スイーツ。」「スイーツ最前線!」「スイーツ速報2014」「絶品スイーツ2013」「スイーツ・マニア」「スイーツ大好き図鑑」、など、表紙に大々的なキャッチコピーを掲げてトレンドスイーツを追いかけてきた『Hanako』。
ここ最近でも、パンケーキやポップコーン、フランス伝統菓子や台湾スイーツなど、トレンドの最前線をいち早く捉え、読者に伝えてきた。
数々のスイーツブームを作った雑誌『Hanako』のスゴさ
左から「Hanako (ハナコ) 2015年 2月12日号」(マガジンハウス)/「Hanako特別編集 絶品スイーツ。」 (マガジンハウスムック)/Hanako特別編集 関西スイーツ図鑑 (マガジンハウスムック Hanako EXTRA ISSUE)

バブル全盛期のシンボルである『Hanako族』のような女子は、不況の煽りを受けてか、あまり見かけなくなった。バブリーさをひけらかすことが、どこか“ダサい”時代になったのかもしれない。しかし、自分へのご褒美として、あるいはライフスタイルを彩るものとして、トレンド・スイーツを追い求める女子は絶えない。

彼女たちにとって、「流行りのスイーツ」をキャッチし、消費し、ソーシャルでシェアすることは、自信がトレンドに敏感な人間であることの証明なのだろう。ティラミスから始まり、刺激的なキャッチコピーで女子を魅了した『Hanako』。今後はどんなスイーツブームを生み出していくのだろうか?
(野中すふれ)
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