しかし、実はドラゴンボールを題材にした実写化計画はハリウッドが最初ではなかった。日本のお隣韓国では、ハリウッド版ドラゴンボール『DRAGONBALL EVOLUTION』(2009年)が公開される19年も前、1990年にすでに実写化されていたのだ。

原作の再現具合はハリウッド版より忠実
ハリウッド版は、ピッコロ大魔王との戦いをハリウッド式に味付けしたうえで思いきり原作とは違う形で表現した、言うなれば原作とはまったく異なるドラゴンボールだった。
その点、韓国版ドラゴンボールでは、ブルマとの出会いからドラゴンボールを集め、神龍を呼び出すところまでをある程度原作に忠実に再現していた。ハリウッド版に比べてクオリティ的にはかなり低く、低予算だっただろうことは容易に想像がつくが、原作のリスペクト度合いは韓国版に分があると筆者は感じた。
頑張って再現したであろうキャラクター
登場キャラクターも、原作のイメージを損なわないよう細心の注意が払われていた印象が強い。主人公の孫悟空は、髪の毛こそなんだかベッタベタに見えるが地毛でツンツン頭を表現しようとした努力が見える。なぜか鼻の穴を無意味に黒塗りして大きく見せている意味はわからなかったが個性的だ。
悟空のほかにも道中に登場するブルマやヤムチャ、亀仙人などいわゆる人間は頑張って原作に似せようという気概は感じられる。お世辞にも似ているとは言えないが…。問題は人間以外のキャラクターにあった。
人間キャラクター以外の手抜き感
ウーロンという初期のドラゴンボール探しで悟空たちと道中をともにしたブタを覚えているだろうか。人間キャラクターの再現度から考えると、ウーロンは本物のブタが用意されそうな予感さえしたが、そこは人間のように二足歩行し会話もできるキャラクター。
実際に登場したウーロンは、「ウーロン」の被り物をした人間だった。頭だけブタであるため妙に背が高く、見た目も不自然極まりない。
加えて、プーアルという生物を覚えているだろうか。ヤムチャを慕う猫のような見た目がかわいい生物だ。さらに厳しい指摘をさせてもらえると、プーアルにいたっては原作そっくりのただの人形だった。
ハリウッド版のようにシリアスな展開の物語ではなく、(一応)ちゃんとした冒険物語だったことが幸いしたのか、話自体は全体的にほのぼのとした展開で悪くない。むしろ好感度は高いと言ってもいいだろう。
おそらく、というより絶対無許可で作られていたであろう韓国版ドラゴンボールだったが、実写映画というのは案外テキトウに作ってみたほうが面白いものが生まれるのではなかろうか。こういうノリは意外と悪くない。
(空閑叉京/HEW)