91年にリリースされた『それが大事』は、大事MANブラザーズバンドの3枚目のシングルだ。リリース当初はさほどヒットしたと言えるほどではなかったが、フジテレビ系「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」のテーマソングに使用されたことをきっかけに、5週連続でオリコンシングルチャート1位を獲得し、累計180万枚を売り上げるなど代表的な1曲となった。


一人歩きする名曲に対する立川が出した25年後の答え


大事MANブラザーズ立川「どれも大事じゃなかった」という結論に至った理由
大事MANブラザーズバンド「それが大事」 画像はAmazonより

『それが大事』は爆発的なヒットを記録したが、その後の大事MANブラザーズバンドはヒット曲に恵まれることなく96年に解散してしまうこととなった。世間からは今で言うところの一発屋だと思われてしまっているだろう。

しかし『それが大事』は、大事MANブラザーズバンドの解散以降もプロ野球選手の登場曲やキャンペーンソングなどでたびたび使用されるなど、今日まで多くの支持を得ている。日本経済に陰りが見え始めた90年代初頭に誕生した同曲は、その後も疲弊してゆく日本を励まし続けてきたように思える。

大ヒットから25年が経った2016年4月、大事MANブラザーズの立川俊之は、一人歩きを続けてきた『それが大事』に対するアンサーソングとして『神様は手を抜かない』を発表した。アルバム『喜怒哀楽』に収録された同曲で彼が出した答えは、大事だとしてきたものをすべて否定するかのような内容だった。

「しくじり先生」への出演で答えを出していた


実は、アルバム『喜怒哀楽』のリリースよりおよそ1年半ほど前となる2015年1月、立川はテレビ朝日系の人気番組「しくじり先生 俺みたいになるな!!」に出演している。


同番組で立川が語ったのは、それまでの24年間『それが大事』を歌い続けてきた結果、何が大事かわからなくなってしまったということだった。その結果導き出したのが、“どれも大事じゃない”という身も蓋もないような結論だったのだ。

しかし、これもまさに真理のような答えではないだろうか。例えるなら、高学歴で新卒入社した人が、四半世紀を過ぎて結局学歴にはほとんど意味がなかったと感じるようなものか。違うか。とにかく立川は「自分にとって何が一番大事か“考えていくこと自体が大事”」だと語っていた。



アンサーソング『神様は手を抜かない』では、『それが大事』の呪縛を見事に解放したかのように、清々しいほどに負けること、逃げ出すこと、信じられないことを「それでもいい、自分を護れ」と肯定している。

25年前の小学生だった筆者が想像した25年後と、今の筆者ではずいぶんと乖離している。これからさらに25年後にも、立川のような心境の変化があるだろうか。

(空閑叉京/HEW)