今年の大みそか、久しぶりに格闘技イベントがテレビ中継される。大みそかの格闘技イベントを盛り上げた日本人選手は過去に数多くいたが、その中でも桜庭和志の活躍は印象的だ。

桜庭和志は1998年にPRIDEに参戦し、全戦全勝。そんな中で桜庭は最強と噂されていたグレイシー一族と対戦することになる。

桜庭和志、ホイラー・グレイシーに完勝


桜庭は1999年、PRIDEでグレイシー一族と初めての対戦。相手はホイスの弟ホイラー・グレイシーであった。
試合では、体格差を活かした桜庭がホイラーを圧倒。猪木・アリ状態から桜庭はローキックを放ち続け、寝技に誘うホイラーの誘いに乗らず最後はアームロックを決める。ホイラーもギブアップせずに腕を決められ続けたが、最後はレフリーストップで桜庭が見事に勝利。

試合後、桜庭は「次はお兄さん!ボクと勝負してください!」とマイクアピールをしてヒクソン・グレイシーとの対決を訴えたのだった。

グレイシー一族の無茶な要求


そして翌2000年、PRIDEグランプリにて桜庭とホイス・グレイシーの対戦が決まる。桜庭はホイスを意識したコメントは残さなかったが、ホイスは前年の桜庭vsホイラー戦を踏まえて「グレイシー一族は負けない」というコメントを残したのだった。

完全決着を望むグレイシー一族は、PRIDEグランプリのルール変更を要求する。その内容は、無制限ラウンド・レフリーストップなしの完全決着ルールであった。主催者は不可能と回答するも、ルール変更しなければグレイシーはボイコットをすると断言し、事態は紛糾した。
しかし最終的には主催者側が折れ、グレイシーの無法要求を全面的に飲む形に。
桜庭vsホイス戦は1ラウンド15分の無制限ラウンド・レフリーストップなしの完全決着ルールになったのだ。

伝説の一戦 桜庭和志vsホイス・グレイシー


2000年5月1日、遂に激闘の幕が上がる。ホイスはグレイシー一族のお決まりの入場である、一族が一体となる"グレイシートレイン"で入場。一方の桜庭の入場スタイルは3人のマスクマン姿。誰が桜庭かマスクまで脱ぐまで分からない形だったので、桜庭がマスクを脱いだ瞬間に会場は大きく湧いた。

1ラウンド、桜庭は立った状態からホイスの腕をつかんだまま、ロープから身体を半分乗り出した格好でアームロックを決める。
この時、桜庭のニヤっと笑った表情が大型ビジョンで映されると会場は大歓声に。しかし、ホイスは決められていない腕を使ってアームロックを脱出。終了間際に桜庭がホイスに足関節を決めようとしたところで1ラウンドは終了した。
2ラウンド以降も桜庭は優勢に試合を進める。総合格闘技ではあり得ないモンゴリアンチョップを決めたり、寝技に誘うホイスにジャンプして踏みつけしたりと自由自在にリングで戦った。
そして5ラウンドを過ぎたころにはホイスのスタミナ消費が目立ち始め、ガードポジションの体勢が増えてくる。
ここぞとばかりに、桜庭は攻め続けて優勢に試合を運んだ。
試合の決着が着いたのは、7ラウンドに入ろうとしたとき。ホイスのセコンドがタオルを投入したことで、桜庭の勝利が決まる。無敗を誇るグレイシー一族が自ら負けを認めた瞬間だった。

その後、桜庭はヘンゾ・グレイシー、ハイアン・グレイシーにも勝利。「グレイシーハンター」の称号を手にし総合格闘技のレジェンドとして、今でもその名を刻んでいる。

桜庭がホイスに勝利したこの一戦は、日本に総合格闘技を定着させ、PRIDEブームの火付け役となったのだった。
今年の大みそかに行われる格闘技イベント「RIZIN」では、どんな新スターが誕生するのだろうか。桜庭nのような新スターの誕生を楽しみにしたい。
(篁五郎)