今でも国民人気が高いプロ野球。現在のプロ野球スーパースターといえばイチローや田中将大、大谷翔平などが浮かぶが、ひと昔前のプロ野球のスーパースターといえばなんといっても長嶋茂雄・王貞治の二人。

巨人のV9時代を支えた「ミスタープロ野球」長嶋茂雄と「世界のホームラン王」王貞治は子供の憧れだった。

その二人が監督として相対したのが、2000年の日本シリーズ。長嶋は巨人の監督、王はダイエー(現:ソフトバンク)の監督であった。今回はこの日本シリーズを振り返ってみたい。

ダイエー・藤井将雄の死


この日本シリーズが開催される直前、訃報が届いていた。前年の99年にダイエーの日本一に貢献した藤井将雄投手が肺がんで死去したのだ。
そのため、ダイエーの選手は喪章を付けてシリーズを戦うこととなり、前年までダイエーに在籍していた巨人の工藤公康も藤井の遺骨をしのばせて登板したのだという。


2000年 巨人とダイエーの選手たち


この年の巨人は高橋由伸、松井秀喜、清原和博の強力クリーンアップに加え、投手陣も工藤公康に上原浩治、高橋尚成などと良い選手揃い。
一方のダイエーは松中信彦、城島健司、この年に2000本安打を達成した秋山幸二などの打撃陣に加え、渡辺正和や篠原貴行、ペトラザという安定したリリーフ陣が持ち味であった。

シリーズの序盤はダイエー優勢


東京ドームで行われたシリーズの序盤はダイエーが優勢であった。
第1戦は巨人が先制するも、城島や松中などのホームランでダイエーが見事な逆転勝ち。続く第2戦も巨人が先制したが、ダイエー打線が爆発してまたもや逆転で連勝した。

アウェーの地で連勝したダイエーが勢いに乗るかと思われたが、あるワンプレーがシリーズの流れを変えることとなる……。


シリーズの流れを変えた仁志敏久の守備


福岡ドームで行われた第3戦。2回裏、3ー3の同点に追いついたダイエーは、なおも2アウト2塁とチャンスを迎えた。この場面で打席に立ったダイエー・村松の打球は1、2塁間を襲うヒット性の当たり。
しかし、これを巨人の仁志敏久が好捕! ヒットと思い、3塁を回っていたランナーを刺してこのピンチを凌ぐ。

最大のピンチを凌いだ巨人はこの試合に勝利。完全にシリーズの流れは巨人に傾いたのだった。

連敗からの4連勝 巨人が日本一に


第3戦の勝利の後、なんと巨人が4連勝し、日本一に。
ダイエーの城島がシリーズタイ記録となる4本塁打を放つなど気を吐いたが、巨人はルーキーだった高橋尚成の好投や、4番の松井秀喜がシリーズ3本塁打を記録するなどの活躍し、有利に試合を運んだ。


長嶋茂雄と王貞治の後日談


さて、結果的に巨人の日本一で終わったのだが、戦前に注目されていた長嶋茂雄と王貞治はこのシリーズを戦い、どう感じたのだろう。

長嶋は現役時代にチームメイトだった金田正一に対して「二度とやりたくない。ONは戦友だからやりづらかった」と語っている。
そして一方の王は、長嶋と同様にやりにくさがあったことを語るとともに、「もう一度やって対戦成績を1勝1敗にしておきたい」話した。

選手として圧倒的な実績を残し、「職業野球」と揶揄されていた野球を国民的スポーツへと押し上げた長嶋茂雄と王貞治。
この二人がプロ野球が誕生した20世紀最後の年、監督として日本シリーズという最高の舞台で対決したのは、野球の神様がファンにくれた贈り物だったのかもしれない。

(篁五郎)